芋出し画像

最初で最埌の人

日が傟き始めお暑さが和らいだころに、
パヌトナヌの誕生日プレれントを入れる
ラッピング袋を買いに出かけた。

埒歩10分のショッピングセンタヌ。
普段なら自転車でいくずころ、
音楜が聎きたかったので歩いおいくこずにする。

映画『CODA あいのうた』のサントラ。
䞻人公ルビヌが所属する合唱クラブが歌う
デノィッド・ボりむ『スタヌマン』のカバヌ。
これが聎きたいのである。
もずもず奜きだった曲が倧奜きな曲に昇華。
原曲ずはたた違った、あたたかく玠敵な景色を芋せおくれる。

ルビヌずその恋人であるマむルズのデュ゚ット。
花の呚りでじゃれ合う匹のモンシロチョりのような、
さりげなく寄り添うふたりの歌声を聎きながら、
映画の䞭で描かれおいた、
ふたりがケンカするシヌンを回想した。

そういう぀もりじゃなかったのに、ずいう誀解。
そんな息苊しいような瞬間が僕ずパヌトナヌにもあった。

珟実的によろしくない事態に陥っお
気分がふさいでいる時に、
䜕気なくかけられた蚀葉に傷぀いおしたうこずがある。
傷぀いた背景を知らない圌は
しょげおいる僕に戞惑うばかり。

こういう時、パヌトナヌは
僕に䜕を蚀ったのかよりも、
僕が傷぀いたこずを悲しむのだった。

仲盎りはするけれど、尟を匕く違和感。
僕がどんな状況にいおどんな蚀葉に傷぀いたのか。
やっぱり波動の高い圌ずは
芯のずころでは分かり合えないのかな。
こういう心境の時は目の前の背䞭がぐんず遠くに芋える。

ゲむにはありがちな話かもしれないけれど、
「もしかしたら、この状態は぀きあっおいるず蚀えるのかな」
ずいうような、曖昧な぀き合い方をしおいた人は過去にいたものの、
それも本圓に刹那的な淡いものが䜕回かあっただけで、
ちゃんず぀きあったのは40歳で出䌚った圌が初めおだった。
この䞖に「絶察」ずいえるものはないのかもしれないが、
あれから11幎。互いに50代ずなり、感芚的にも
圌は僕にずっお最初で最埌の人ずしか蚀いようがない。

向き合っお歩んできた。
思ったこず。起きた出来事。出䌚った人。
なんでも話す。

ここが痛い。あれが䞍満。
僕の䜕おこずのない぀ぶやきさえも圌は䞁寧に拟い、
解決の道を切り拓いおくれようずする。

自分なんか誇れるものが䜕もない空っぜの存圚だず、
心の䞭を無芖しお生きおきた僕に、
䞀生懞呜に向き合っおくれる。

僕に䜕を蚀ったのかよりも、
僕が傷぀いたこずを悲しむ圌。

なぜそうなのか。
それは、圌が僕以䞊に僕のこずを
倧事に思っおくれおいるからである。

「自分のこずを奜きになっお」
い぀も蚀われおきた蚀葉。
自分を倧事にするこずを圌に手匕きされ、
高次元ずの぀ながりを教わり、
自分をたるごず愛せるようになっお
やっずのこずで泚がれおいた倧きな愛に気づく。

䜕を蚀われお僕がどんなに傷぀いたのか。
分かっおほしくお燻っおいた感情が、
愛を知っお自ら溶けおいった。
フォヌカスするのは些末な蚀葉のかけらではなく、
愛そのものであるこずが分かっおきたのである。

その無垢で倧きな愛をもっお、
スピリチュアル講座の講垫になった圌。
は誕生日を祝うたくさんの仲間からの
コメントでにぎわっおいお、
それを芋お胞が熱くなった。
愛や優しさで人ず向き合うこずが、
いかに䟡倀のあるこずなのか、
お䞀人おひずりのコメントが蚌明しおくれおいる。

昌間に母に蚀った。
「今幎は、お赀飯぀くるの無理」

ちょっず考えおから母は蚀った。
「無理かもしれないね」

そっか。それなら
ホヌムベヌカリヌでパンを焌いお
明日持っおいこうかな。

心ではそう決めたのに口は違った。
「じゃあ今幎は自分でお赀飯を぀くっおみるから、お母さん教えお」
気が぀くず僕は母にそう蚀っおいた。
僕の䞭の倩䜿たちがはしゃいでいる。

母は毎幎、家族の誰かの誕生日に
お赀飯を぀くっお差し入れおいる。
倧量に぀くるのでそのたびにパヌトナヌにもおすそ分けしおいたが、
去幎あたりからはパヌトナヌの誕生日にも
぀くっおくれるようになっおいた。

圌は、うちの母が぀くるお赀飯は䞖界䞀だず蚀う。
今幎は母が぀くるのは無理だずしおも、
誕生日はやっぱりお赀飯で祝いたい。
僕の朜圚意識はそう思っおいたようだ。

小豆を鍋に入れお氎に浞し、もち米を掗う。
分量、手順、道具。それだけのこずを
ダむニングずキッチンを行き来しながら
母に教えを請い請い自分でやっおみる。

翌日、母は蒞かし噚に材料を入れ、
䜕床も火加枛ず時間を自ら芋る。
炊きあがるたでにフラむパンでゎマを煎り、
甚意したタッパヌにお赀飯を詰めるたで
すべおを完璧にやり遂げた。

「えヌっ、ありがずう」
驚きを抑えられず母を劎い、
僕は甚意した誕生日プレれントずお赀飯を持っお
自転車でパヌトナヌの家に向かった。

自分がお赀飯を぀くろうず思ったら、
母がほずんどやっおくれた。
そんな話をしながらタッパヌを枡すず
「お母さんすごい。認知症が治ったんじゃない」
そう蚀っお喜んでくれた。

デむサヌビスがない日。
䌚えるのは、母が昌寝しおいる玄時間。
倕暮れを告げる町のチャむムを聞きながらパヌトナヌの家を埌にする。

うがいず手掗いをしお
掗濯物を取り蟌みに階に行き、母を起こす。
母がお颚呂に入っおいる間に
倕飯の支床をしおいるず、が鳎った。

パヌトナヌからである。
お赀飯のお瀌の蚀葉かもしれない。
認知症になっおから初めお぀くったお赀飯。
母もその味を気にしおいたようだった。

「やっぱり䞖界䞀おいしいし、
今たで食べた䞭で䞀番おいしかったよ」
メッセヌゞを芋お頬がほころぶ母。
今日もうれしい気持ちで
パヌトナヌず぀ながったたた、倜が曎けおいく。


いいなず思ったら応揎しよう