「いただきます」
私の勤務先の中で、社食があるありがたい職場があります。
そこには、数人で座れるテーブルと、窓側に並んだカウンター席があります。
そのカウンター席は、コロナ禍の名残りで、今も1席ごとにアクリル板が設置されています。
今日、私は、そのカウンター席に座りました。
思い思いの料理を選んで、ひとつのトレーに入れて席に着きます。
私が食べ始めた頃、隣に男性が座りました。
アクリル板が設置されている席ですし、私はすでに食べ始めていたので、視界に入る範囲の情報しかありません。
でも、ひとつだけ、明らかにわかりました。
彼はトレーを置いて、席に座りました。
そして、お箸を持つ前に、手を合わせて軽く礼をしました。
声は聞こえませんでした。
でも、
「いただきます」
って、口か心で、彼は言ったのだと感じました。
そして、彼は食べ始めました。
私は、
「いただきます」「ごちそうさま」
と言える人が大好きです。
ここまで育ってくれた食材たち。
食材に関わってくださった方々。
食事を作ってくださった方々。
そして、食べ物を食べられる私の状態。
あげればキリがないほどの重なりがあって、一食の食事があります。
その食事に「いただきます」という思いを持って向き合う。
私は、そういうのが大好きなんですよねぇ。
以前、ネットのどこかで、
「『いただきます』って手を合わせて言ってから食べる人って、子どもっぽいよね」
と言われた……という記事を見たことがありました。
そんな感覚の人もいるんだな。
そのときは、それくらいの思いでした。
でも、気にしてみると、確かに少ないですね。
手を合わせて「いただきます」をしている方。
というか、手を合わせるどころか、言ってもいない……。
私は、隣りに座った彼が、どんな人なのか気になりました。
なので、少し視界に入るくらいまで、首を向けてみました。
若い、20代くらいの男性でした。
そして、気がつきました。
カウンセリングに来たことがある男性でした。
カウンセラーには守秘義務があります。
なので、私と顔見知りだと周りに知られないように、他の人もいるときは、私からの挨拶を控えています。
だから、声はかけませんでした。
もう何年か前のことですが、ご相談内容の概要は覚えています。
奥様が病気で休職している。
夫として、どうしたらいいのか。
そんなご相談でした。
そうでした。
彼は、思いやりのある、優しい人でした。
もちろん、一概には言えません。
でも、「食事をする」という、日に何度も繰り返すあたりまえのことに対しても、丁寧に向き合う人なんだなと感じました。
お昼休み。
お腹が空いたから社食に行っただけなのに、
なんだか、ほんわかした気持ちも一緒にいただけました。
ステキなランチタイムを。
