
通勤が変われば、日本が変わる ─ 満員電車から始める社会変革
- 割引あり
はじめに
日本の鉄道の歴史は長く、1872年に日本で初めて新橋(現在の汐留)から横浜(現在の桜木町)間を結ぶ鉄道が開通、その17年後には東海道本線が新橋~神戸間をつなぎ、1899年には蒸気機関車に代わり電気鉄道が開業、1927年には地下鉄が開業と、日本の近代化とともに著しい勢いで発展を続けてきました。その後も、高度経済成長に合わせ、1964年には東海道新幹線が開業、ビジネス・観光の両面で大きな影響を与えるとともに、人の移動手段として、物資の輸送手段の一つとして、いわば経済成長のエンジンとして牽引し、輝かしい軌跡を辿ってきました。
日本における鉄道の起源は、西欧が蒸気機関車の模型を持ち込み日本人がその技術に触れたことから始まっており、明治時代の文明開化の流れの中で西洋文明の影響を受け発展したものの一つです。南満州鉄道が戦前の物流に重要な役割を果たしたように、列強諸国が国力を高めていく中で、その時代の流れに沿って日本にとって大切な機能を担ってきたのです。
自動車は道路を整備すればどこでも走れ、急な目的地変更や車種によっては荒れた道であっても進むことができるという利便性がある一方、大量輸送という観点では船や鉄道が有効な手段と考えられています。
現在の日本では、鉄道網が都市部を中心に非常に発達しており、特に東京23区では地下鉄も含めて複数の路線が何層にも重なって駅が点在し、同じ駅なのに地下深くから地上まで長いエスカレーターに幾度も乗る必要があるなど、都心への人口集中は数十年も大きな課題となっています。
外国人の目から見ると、東京の朝の通勤風景は一種の文化的衝撃として映るそうです。「人間の尊厳」と「効率」がこれほど鮮やかに対立した光景は、世界のどこを探してもなかなか見つからないのかもしれません。観光名所として紹介されることすらある、というのは皮肉な話ですが、その「異文化体験」こそ、私たちが慣れすぎて見えなくなっているものを、外側から教えてくれているとも考えられます。
日本の高度な技術力により構築された鉄道網のその利便性ゆえに、多くの労働者や学生が、毎朝満員電車に揺られながら会社や学校へ向かうという、外国では非日常でしかない歪な日常が深く根付き、長い間解決できない課題となっています。この本では、労働者の人権を疎かにしてまで経済成長を優先した日本人と日本経済、日本全体が抱える歪みと、それによって生じた満員電車、そしてそれに乗車して通勤するという「影」、そしてその社会問題について様々な角度から考察し、日本が日本の人権に向き合う自省の日々を過ごし、日本の労働者それぞれが一人の人間として活力のある生き方をできるよう希望を持つことができないか、思い当たる方策を述べていきたいと思います。