
寝る前にスマホで指示を出したら、朝には3つの案ができていた
夜11時。私はベッドサイドでスマホを手に取り、三行だけ指示を打ち込んで、そのまま寝ました。
朝6時半。食卓でコーヒーを飲みながら同じ画面を開くと、方向性の違う三つの案がきれいに並んでいました。堅実に攻める案、大胆に振り切った案、いちばんお金をかけない案。私は一文字も書いていません。ただ、そこから一つを選んだだけです。
この記事は「経営者のためのCodex活用(応用編)」の二本目です。テーマは一つ。朝を「作る時間」から「選ぶ時間」に変えること。経営者の本当の仕事は、資料や企画を自分の手で作ることではなく、揃った選択肢の中から選んで決めることです。その一点に、夜と朝の使い方を丸ごと寄せていく話をします。
もう少し正確に言うと、これは時間術の話ではありません。時間管理のテクニックをいくら磨いても、社長が自分の手で資料を作っている限り、朝の消耗は変わらない。変えるべきは、時間の使い方ではなく、誰が作るかです。作る人を自分から夜のAIに移し、自分は選ぶ人に回る。この配置換えができると、同じ24時間の中身がまるごと入れ替わります。あなたが眠っている数時間が、実は一日でいちばん生産的な時間帯になる——そういう逆転が起きます。

経営者の朝は、たいてい「作る」で潰れている
私はいろいろな会社の社長と朝の使い方について話します。すると、驚くほど多くの人が同じことを言います。「朝いちばんの二時間が、資料づくりで消える」と。
午前の商談に持っていく提案書。午後の会議で配る企画書のたたき台。前日に「明日までに整えておこう」と思っていた一枚。それを朝、出社してから、あるいは家を出る前に、パソコンに向かって作り始める。気づけば二時間が飛んでいる。頭がいちばん冴えているはずの時間帯を、手を動かす作業で使い切ってしまう。
夜はどうかというと、疲れていて何もできません。一日中、商談と現場で立ちっぱなし。帰宅すればもう頭が回らない。「考える時間がない」と社長はよく言いますが、その正体は多くの場合、考える時間が作る時間に食われていることです。時間そのものが足りないのではなく、いちばん価値の高い時間帯に、いちばん人に任せやすい作業を入れてしまっている。
ある顧問先の社長は、こんな朝を過ごしていました。5時に起きて、コーヒーを淹れて、パソコンを開く。午前の商談用の提案書がまだ白紙。過去の似た案件のファイルを探し出し、コピーして、日付と社名を書き換え、数字を入れ替える。図を一つ動かすたびに崩れるレイアウトを直す。気づけば7時半。子どもが起きてくる音がして、慌てて画面を閉じる。「頭を使ったつもりが、実際は書式いじりで午前が終わっている」と、その社長は苦笑いしていました。
この消耗は、じわじわ効いてきます。朝に力を使い果たすと、午後の商談で頭が回らない。夜は前日の疲れが抜けないまま、また明日の資料が積み上がる。一日単位では小さな損失でも、一年続けば膨大な時間が「作る」に吸い込まれていく。しかもその大半は、社長でなくてもできる作業です。判断も交渉も入っていない、ただの手仕事。それを、会社でいちばん時間単価の高い人間がやっている。
ここには構造の問題があります。作る作業は前に進めないと終わりません。だから朝いちばんの、体力も判断力も満タンの時間を、そこに充てざるを得ない。そうやって毎朝、社長の一日は「作る」で始まり、肝心の「決める」「人と会う」は、疲れが溜まった午後以降に押しやられていく。

順番が逆なのです。作るのは、本来いちばん人に任せやすい仕事。決めるのは、社長にしかできない仕事。それなのに、任せられる方を自分の最良の時間に置いている。この配置をひっくり返せないか——ずっとそう思っていました。
ある社長が、疲れ果てた夜にダメ元でやったこと
ここで一つのモデルケースを紹介します。断っておくと、これは特定の一社の話をそのまま書いたものではありません。私がいくつもの顧問先で見てきた光景を、一社の物語として再構成したものです。数字もすべて一例で、そのまま同じ結果が出ると約束するものではありません。
建設資材を扱う、社員33名の商社。社長は現場たたき上げで、パソコン作業は得意ではありません。その会社が大きな展示会に出た、その翌日が、ある大口見込み客への提案書の締切でした。
展示会当日、社長は朝から晩まで立ちっぱなし。名刺を配り、頭を下げ、夜には会食まで入っていました。帰宅したのは夜11時過ぎ。提案書には一文字も手をつけていない。普通なら、そこから深夜まで机に向かうか、翌朝4時に起きて仕上げるかの二択です。
その夜、社長はダメ元で、スマホからAIに指示を出しました。「明日の朝までに、この客への提案の方向性を三つ、それぞれ別の切り口で作っておいてほしい」。そんな内容の、ごく短い文章です。込み入った操作は何もしていません。気がかりを三行にして送り、そのまま寝た。
翌朝、社長がスマホを開くと、三つの案が揃っていました。堅実に既存商品で固めた案、思い切って新規サービスを前面に出した案、価格を抑えて数量で勝負する案。どれも完璧ではありません。文章の細かいところや、数字の詰めは甘い。でも、たたき台としては十分でした。ゼロから作るのと、方向性の決まった三案から選んで直すのとでは、必要な労力がまるで違います。社長は堅実案を選び、気になる箇所だけ社員に指示して直させて、その日の午後、無事に提案へ持っていきました。
「作れなかったはずの朝に、選ぶだけで済んだ」。この体験が、その社長の朝を変えていきました。最初は半信半疑で「たまたまうまくいっただけかもしれない」と思っていたそうです。でも、翌週も、その次の週も、同じことをやってみて、同じように朝には案が揃っている。三回、四回と続くうちに、寝る前にスマホを手に取るのが習慣になっていきました。歯を磨くのと同じ感覚で、明日の気がかりを三行にして投げてから、布団に入る。朝いちばんに机に向かって呻いていた日々が、いつの間にか遠くなっていた——本人はそう振り返っていたといいます。

なぜ、自分が寝ている間に仕事が進むのか
「寝ている間にAIが働く」と聞くと、魔法のように感じるかもしれません。でも仕組みはシンプルです。ここは経営者向けに、専門用語を避けて説明します。
いま私が使っているCodexというAIには、いくつかの形があります。パソコンのターミナル(黒い画面で文字を打つやつ)で動くもの、開発ソフトに組み込んで使うもの、そしてクラウド版です。クラウド版というのは、手元のパソコンではなく、ネット上に用意された作業場でAIが動く形だと思ってください。
このクラウド版が肝心です。仕事を頼むと、その仕事ごとに専用の作業場がネット上に立ち上がり、そこでAIが作業を進めます。しかも複数の仕事を同時に、並べて進められる。そして、その間あなたのパソコンは一切占有されません。パソコンを閉じてしまっても、電源を落として寝てしまっても、頼んだ仕事はネット上で進み、結果が残る。翌朝、Webの画面を開けば、できあがったものを確認できます。
ここが、多くの人がつまずくポイントです。「AIに頼む」と聞くと、画面の前に座って、AIとやりとりしながら少しずつ仕上げていく姿を思い浮かべます。チャットで質問して、返ってきた答えを見て、また質問する。あれだと、結局あなたは画面に張り付いていなければなりません。夜、疲れて帰ってきた社長に、そんな余力はない。でもクラウド版は違います。最初に「これをやっておいて」と投げてしまえば、あとはあなたが見ていなくても進む。やりとりの相手をし続ける必要がないのです。頼んで、離れて、寝る。これができるかどうかが、夜を味方につけられるかどうかの分かれ目です。
さらに、スマホからも指示や確認ができるようになっています。だから冒頭のように、ベッドの中でスマホに三行打って寝る、という使い方が成り立つわけです。細かい機種の話や日付は本題ではないので置いておきますが、要は「手元の道具に張り付いていなくても、外から仕事を投げて、外から受け取れる」ということです。
ここで、以前の記事との違いをはっきりさせておきます。私は前に、深夜2時にAIの出力を自分で書き直していた、という失敗談を書きました。あれは、夜中に働いていたのは結局「私」でした。今回はまったく逆で、私は寝ます。夜に働くのはAIだけ。この一点が、応用編のいちばんの肝です。
道具の話に戻すと、Codexはもともとプログラムを書くのが得意なAIです。ただ、できるのはそれだけではありません。手順にできるパソコン作業——資料のたたき台づくり、データの集計、文書の整理といった仕事も頼めます。過度な期待は禁物ですが、「一度手順を言葉にできる仕事なら、夜のうちに任せておける」と考えると、使い道がぐっと広がります。ちなみに、社内のチャットのやりとりから、同僚に頼むような感覚で仕事を任せることもできますが、それは別の機会に。
私はこれを、社長たちに「AIの夜勤チーム」と説明しています。あなたが眠っている間、夜のシフトで働いてくれるチーム。朝、あなたは夜勤明けの報告を受け取り、それを見て一日の意思決定を始める。工場に夜勤があるのと同じで、頭脳労働にも夜勤を置けるようになった、という話です。
この比喩が腑に落ちると、社長の頭の使い方が変わります。夜勤チームがいる工場長は、夜中に自分で機械を回しません。日中のうちに「今夜はこれとこれを仕上げておいてくれ」と段取りを渡し、朝、できあがったものを検品して、次の指示を出す。あなたがやるのも同じことです。夜勤チームに渡す「段取り」が、寝る前のスマホ三行。朝の「検品」が、届いた案を見て選ぶ10分。自分が現場で汗をかくのではなく、チームに動いてもらって、その成果を見て判断する。これは、社員を持つ経営者なら、もともと日中にやっていることです。それを、これまで人に任せづらかった「作る作業」にまで広げられるようになった、と考えてください。
夜勤チームのいいところは、文句を言わないことでも、疲れないことでもありません。あなたの時間帯とずれて働いてくれることです。社長がいちばん動けない夜と、いちばん頭を使いたい朝。その谷間を、チームが埋めてくれる。夜に仕込み、朝に受け取る。この時間差こそが、一人で全部背負っていた社長の一日に、はじめて余白を作ります。

一案ではなく、三案を作らせる理由
夜勤チームの使い方で、私がいちばん強く勧めているのが「三案」です。一つの課題を、方向性を変えて三本の仕事として同時に投げる。たとえば「堅実に攻める案」「大胆に振り切る案」「いちばんお金をかけない案」の三つです。
なぜ一案ではだめなのか。一案だけ朝に届いても、社長にできるのは「これでいいか、悪いか」の判断だけです。良し悪しの判断は、比べる相手がいないと難しい。目の前の一案がそこそこの出来だと、「まあ、これでいくか」と流してしまう。それは選んだのではなく、ただ受け入れただけです。
ところが三案あると、話が変わります。「この客には堅実案が合う。大胆案は面白いが、今回の相手には早すぎる。コスト案は価格勝負になった時の予備に取っておく」——こういう比較と判断ができる。選択肢が並んで初めて、人は「選ぶ」ことができるのです。意思決定というのは、選択肢を用意するところまでが下ごしらえで、社長の仕事はその先にある。その下ごしらえを、夜勤チームに丸ごと任せてしまう。
なぜ三つなのか、と聞かれることがあります。二つだと、しばしば「良い方」と「そうでもない方」の二択になり、実質的に選ぶ余地がありません。四つ、五つと増やすと、今度は朝の10分で見きれない。三つは、方向性の違いがくっきり出て、しかも短時間で比べられる、ちょうどいい数です。堅実・大胆・最小コストの三本柱でなくてもかまいません。「今の顧客向け」と「新規開拓向け」と「既存の焼き直しで最速」でもいい。大事なのは、三つが明らかに違う方向を向いていることです。似た三案が並んでも、選ぶ楽しみも意味もありません。
面白いのは、選ばなかった二案が無駄にならないことです。あの建設資材商社の社長は、その日は堅実案で提案に行きましたが、後日その客が価格に渋り始めた時、朝に捨てたはずのコスト案をすぐ引っ張り出して切り返したそうです。三案を作らせておくと、選ばなかった案が「次の一手の在庫」になる。一案しか作らなければ、こういう備えは持てません。
三案の作らせ方にはコツがあります。方向性の軸を、自分で決めきらなくていい、ということです。「堅実・大胆・最小コスト」で分けてもいいし、その軸自体をAIに提案させてもいい。ここで使える発注文の型を一つ渡します。
この「3案発注文」は、締切前夜に疲れて帰ってきた社長が、細かいことを考えたくない時に使う道具です。課題を貼り付けるだけで、三本の別々の依頼文にばらしてくれます。
あなたは、経営者の右腕として仕事を段取りするディレクターです。
これから私が抱えている一つの課題を渡します。この課題を、
方向性の違う三つの案として並行して作らせるための「依頼文」を、
三本にばらして書いてください。
【ここに課題を貼る/音声で話す:例「大口客A社への提案。予算感は不明。先方は慎重な社風」】
進め方:
1. まず、この課題にふさわしい「三つの方向性の軸」をあなたが提案する
(例:堅実/大胆/最小コスト、など。課題に合わせて変えてよい)
2. 次に、その三方向それぞれについて、夜のうちにたたき台を作らせるための
依頼文を一本ずつ、合計三本書く
3. 各依頼文には「何を・どんな形式で・どの長さで出してほしいか」を必ず入れる
出力形式:
- 提案する三つの軸(各1行の理由つき)
- 依頼文①(軸名つき・そのままコピーして投げられる完成文)
- 依頼文②
- 依頼文③一案を磨き込むより、三案をざっと作らせて朝に選ぶ。この切り替えが、朝の二時間を十分に縮めていきます。

朝10分でまわる、意思決定のルーティン
夜勤チームが動くようになると、朝の過ごし方そのものを設計し直せます。私が社長たちに勧めているのは、朝の10分で「見る→選ぶ→理由を言葉にする→次を仕込む」を一周する型です。
まず見る。届いた三案にざっと目を通す。細部は読み込みません。方向性の違いだけを掴めば十分です。次に選ぶ。どれでいくかを決める。ここが社長の本番で、ここだけは他人に渡せません。
そして意外と大事なのが、選んだあとに理由を言葉にすることです。「なぜこの案にしたか」を、社員に一分で説明できる形にしておく。これをやると、決定が組織に伝わる速さがまるで違います。社長の頭の中だけで決まった話は、現場に下りるまでに必ず歪む。決めた瞬間に理由を一緒に固めておけば、そのまま指示になります。
多くの社長は、ここを飛ばします。自分の中では選んだ理由がはっきりしているから、わざわざ言葉にする必要を感じない。ところが社員からすると、「なぜかは分からないが、社長が急にこの方向でと言い出した」に見える。理由が共有されないと、現場は迷いながら動くことになり、細部の判断が全部社長に戻ってきます。逆に、選んだ理由さえ渡しておけば、社員は自分でその方向に沿った判断ができる。理由を言葉にするのは、社長のためではなく、任せるための投資です。
届いた三案を前にした時、比較を助けてくれる道具を渡します。朝、コーヒーを飲みながら、三案をまとめて貼り付けて使うイメージです。
あなたは、経営者の意思決定を助ける参謀です。
これから、夜のうちに用意された三つの案を貼ります。
私が10分で選べるように、比較表にまとめてください。
【ここに三案を貼る】
比較の軸:
- コスト(お金・手間)
- スピード(どれくらいで動き出せるか)
- リスク(外した時に何が起きるか)
- 自社らしさ(うちの強み・社風に合っているか)
出力形式:
- 上記4軸 × 三案の比較表(各マスは一言で)
- 各案について「もしこれを選んだ場合の、最初の一手」を1行
- 最後に、あなたの推し案とその理由を2〜3行(決めるのは私です)選んだあとは、その決定を言葉にする番です。捨てた案にもきちんと敬意を払う——これは組織のためです。「あの案も良かったが、今回はこちらを選んだ」と言えるかどうかで、提案してくれた社員のやる気が変わります。
あなたは、社長の決定を社員に伝わる言葉に翻訳する広報担当です。
私が選んだ案と、捨てた案を貼ります。
これを、社員に1分で説明できる文章にしてください。
【選んだ案:ここに貼る】
【捨てた案:ここに貼る】
構成:
1. 決定事項(何を選んだか。一文で言い切る)
2. 理由(なぜこれにしたか。3つまで)
3. 捨てた案への敬意(どこが良かったか、なぜ今回は見送ったか)
トーン:現場の社員がすっと納得できる、飾らない言葉で。最後が次を仕込むです。今日の朝に選んだら、その勢いで、明日の朝ぶんの仕事を夜勤チームに投げておく。この「差し戻し」も同じ理屈で回ります。届いた案に「ここをこう直して」と朝のうちに返しておけば、夕方にはもう直ったものが揃っている。朝に投げて、夕方に受け取る。あなたが商談で外を回っている間に、仕事は勝手に進んでいます。
この四ステップの肝は、選ぶ以外を全部AIに寄せるという割り切りです。見るための資料はAIが揃える。選んだ理由の文章もAIが下書きする。次の仕込みの依頼文もAIが整える。社長がやるのは、真ん中の「選ぶ」だけ。人間にしかできない一点に力を集めて、その前後の手作業は徹底して夜勤チームに渡す。10分で回るのは、社長が引き受ける部分をそこまで絞っているからです。
慣れてくると、この10分は朝のリズムの一部になります。コーヒーを淹れる、届いた案に目を通す、一つ選ぶ、理由を一言添える、明日ぶんを投げる、パソコンを閉じる。ここまでで、まだ7時前。以前なら資料と格闘していた時間に、もう今日の一手が決まっている。しかも、決めたのは全部自分です。AIは選択肢を並べただけで、選んだのは社長。だから納得感がある。人に丸投げした時のような「本当にこれでいいのか」という不安が残らない。
社長の朝は、こう変わる
この型が回り始めた社長の朝は、時間の構造が変わります。
以前は、朝いちばんの二時間が資料づくりで消えていました。頭が冴えている時間を、手を動かす作業に明け渡していた。それがある顧問先の一例では、朝の資料づくりが「三案を見て一つ選ぶ10分」に置き換わりました。差し引き、朝に一時間半以上が空く。その時間で、社長は社員と話し、客に電話をかけ、次の一手を考える。

数字はあくまで一例です。全員がこうなると保証するものではありません。でも、方向は同じです。作る時間が減り、選ぶ時間と人と会う時間が増える。社長の一日の重心が、「手を動かす」から「決めて、人を動かす」へ移っていく。
面白いのは、社長本人の疲れ方も変わることです。深夜に机に向かって資料と格闘する夜がなくなる。朝、できあがったものを見て選ぶだけ。作業の重さから解放されると、判断そのものが冴えてくる。「決めるのが、前より速くなった」と、あの33名の商社の社長は言っていたそうです。当然です。決めることだけに集中できる状態を、朝いちばんに用意したのですから。
もう一つ、周りの見え方も変わります。以前のこの社長は、朝から不機嫌でした。資料が終わらない苛立ちを抱えたまま出社するので、社員も声をかけづらい。それが、朝の余白ができてからは、出社した時点で今日の方針が決まっている。社員に「今日はこの方向でいく、理由はこう」と最初に共有できる。現場が迷わなくなり、社長への細かい確認も減った。社長が「作る」から降りたことで、実は組織全体の回り方まで軽くなった——これは、時間が空いたこと以上に大きな変化でした。
誤解のないように言うと、AIが賢い提案をしてくれたから業績が上がった、という単純な話ではありません。変わったのは、社長が自分の一日をどう使うかです。いちばん貴重な朝の時間を、手作業から意思決定に振り替えた。その結果として、決めるスピードが上がり、組織が動きやすくなった。道具はきっかけにすぎず、効いているのは時間の配置換えそのものです。
今夜、寝る前に一件だけ仕込んでみる
大がかりな準備は要りません。まずは今夜、寝る前に一件だけ、夜勤チームに仕事を投げてみてください。明日の朝いちばんに控えている「作る仕事」を、一つでいい、夜のうちに任せてみる。
最初は、うまくいかなくて当たり前です。指示がざっくりしすぎて、的外れなものが返ってくるかもしれない。三案どころか、一案も使い物にならない朝があるかもしれません。でも、それでいいのです。大事なのは、完璧な成果物を一発で受け取ることではなく、「自分が寝ている間にも仕事は進められる」という感覚を一度つかむこと。一回でもその手応えがあれば、あとは指示の出し方を少しずつ調整していくだけです。三行の投げ方が上手くなるほど、朝に届くものの質は上がっていきます。
いきなり全部の資料を任せようとしなくていい。まずは、いちばん気の重い一件から。明日の朝、その一件が仕上がって待っていたら、それだけで朝の景色は変わります。
何を仕込めばいいか分からなければ、まずこれを使ってください。ベッドの中で、明日の予定と気がかりを声で話しかけるだけで使えます。
あなたは、経営者の一日の段取りを組む秘書です。
これから私が、明日の予定と、いま気がかりなことを話します
(音声入力でかまいません。箇条書きでなくても大丈夫です)。
【ここに明日の予定と気がかりを話す/貼る】
やってほしいこと:
1. この中から「今夜のうちにAIに仕込んでおける作業」だけを選び出す
(人に会う・その場で決める仕事は除く)
2. 選んだ作業に、明日の朝までに片づいていると助かる順で優先順位をつける
3. 最優先の1件について、今夜そのまま投げられる依頼文の下書きを添える
出力形式:
- 今夜仕込める作業リスト(優先順位つき・各1行)
- 最優先1件の依頼文(そのままコピーして送れる完成文)慣れてきたら、朝の10分を自分の会社用の手順書にしておくと、毎朝迷わなくなります。
あなたは、経営者の朝の習慣を設計するコンサルタントです。
私の会社の業務内容を伝えます。これをもとに、
朝、AIが夜のうちに用意した成果物を開いてから、
次の仕込みを出すまでの「10分ルーティン」の手順書を、
私の会社用に作ってください。
【ここに自社の業務内容を伝える:業種・主な商材・朝によく作る資料など】
条件:
- 全体で10分に収まること
- 「見る→選ぶ→理由を言葉にする→次を仕込む」の4ステップを軸にする
- 各ステップに、うちの業務に合った具体的な作業を1〜2個入れる
出力形式:
- 10分ルーティン手順書(ステップごとに所要時間の目安つき)
- 続けるためのコツを最後に3つ明日の朝、あなたはきっと、作る人ではなく選ぶ人になっています。夜勤チームが用意したものの中から、一つを選び、理由を言葉にして、社員に手渡す。それが本来の、社長の朝の姿だと私は思います。

鈴木章裕
株式会社コミクス 代表取締役