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調べ物はGemini、社内資料はNotebookLM、考える相棒はClaude。生成AIを"使い分けた"瞬間、残業が消えた。

    結論から書きます。生成AIで成果が出ない会社の多くは、AIの性能が足りないのではありません。「どの仕事を、どのAIに頼むか」を決めていないだけです。私はこの一年、たくさんの中小企業の現場に入ってきました。そこで一番効いた変化は、新しいツールを増やすことではなく、手元にある数種類のAIを"適材適所"で振り分けたこと。ある会社では、それだけで社長の帰宅時間がまるごと変わりました。

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    なぜ今、この話をするのか

    ここ一年で、経営者が名前を聞くAIは一気に増えました。ChatGPT、Gemini、NotebookLM、Claude、Claude Code、そしてMicrosoft 365 Copilot。数えてみれば、もう6つです。展示会に行けば新顔がまた増えている。社長からいちばん多く受ける相談は、実はこれなんです。「鈴木さん、結局どれを使えばいいんですか」。

    気持ちはよく分かります。全部を評価しているヒマはない。かといって放っておくと、若い社員が勝手にバラバラのAIを使い始めて、社内で会話が噛み合わなくなる。焦りだけが募っていく。

    そうして多くの社長は、二択のどちらかに落ち着きます。ひとつは「とりあえずChatGPTだけでいい」と決め打ちして、他は見ないことにするパターン。もうひとつは、全部のアカウントを作ったものの、どれも中途半端にしか触らず、結局いちばん最初に開いたものだけを惰性で使い続けるパターン。前者は取りこぼしが出て、後者はコストだけ払って成果が出ない。

    私が現場でよく見るのは、後者のほうがもったいない、という現実です。決め打ちなら、少なくとも一人のスタッフは戦力になる。でも「全部そこそこ」の会社は、どのAIも本来の力の三割も引き出せていない。有能な人が6人いるのに、全員に同じような雑用を少しずつ振って、誰の得意も活かせていない状態です。これ、AIに限らず、組織でいちばんもったいない失敗の形ですよね。原因はただ一つ、「誰に何を任せるか」を決めていないこと。ここで大事なのは、数を減らそうという話ではまったくない、ということです。同じ6人のまま、得意な仕事を割り当て直す。それだけで、眠っていた戦力が一気に立ち上がります。適材適所とは、引き算ではなく、配置換えなんです。

    でも、現場で何十社と見てきて、私はもう答えを持っています。6つのAIは、優劣を競う横一列のライバルではありません。それぞれ得意分野が違う、6人の専門スタッフです。調べ物が抜群にうまい人、社内の資料を隅々まで覚えている人、文章の温度感が絶妙な人。会社に人を雇うとき、経理の求人に営業のエースは呼ばないですよね。AIも同じです。

    そして、ここがいちばん大事なところなのですが——社長の仕事は、6人全員を自分で使いこなすことではありません。「この案件は、誰に振るか」を決めることです。それだけでいい。振り分けの地図さえ頭に入れば、AIは急に頼れる部下の集団に変わります。今日はその地図を、一枚まるごとお渡しします。

    「何でもChatGPT」で深夜まで働いていた社長の話

    ここからは、実際にあった出来事をお話しします。ただし特定の一社をそのまま書くわけにはいかないので、複数の支援先で実際にあった出来事を、1社のモデルケースとして再構成しています。数字も、あくまで一例として読んでください。断定できる普遍の効果ではなく、その現場で起きたことの記録です。

    舞台は、地方の食品メーカー「M社」。従業員は35名ほど。製造ラインがあり、営業がいて、事務が数名。社長は58歳で、現場叩き上げのたたき上げ。パソコンは得意ではないけれど、新しいものへの好奇心はある方でした。

    社長は半年前からChatGPTを使い始めていました。使い始めそのものは、大正解です。何でも聞ける万能秘書として、まず入口に触れる。これ以上ないスタートです。商品のキャッチコピーを考えてもらったり、朝礼のネタを相談したり、社長は面白がって毎日いじっていました。

    ところが、業務の真ん中で使い始めると、じわじわ詰まりが出てきます。

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    ひとつめ。調べ物です。社長は原材料の市況——たとえば小麦や食用油の相場、競合の新商品——をChatGPTに聞いていました。ところが返ってくる数字が、どうも古い。「去年の話じゃないか」というズレが混じる。社長は最初、AIってこの程度かと落胆していました。でもこれは、道具の使いどころを間違えていただけなんです。

    ふたつめ。社内の細かい質問です。M社には長年積み上げた品質管理マニュアルや、衛生基準の規程、過去の会議議事録があります。社長が「うちの◯◯の基準、どうだったかな」と聞いても、ChatGPTは当然、M社の資料を持っていませんから、それっぽい一般論を返す。ときには、もっともらしいのに事実と違う答え——いわゆる思いつきの嘘——まで返ってくる。これで一度、現場が混乱しかけたそうです。

    みっつめ。地味だけど効いていたのが、Excelです。事務担当が毎月、受注データを集計して社長に報告していました。その途中で「この表を要約して」とChatGPTに投げるために、Excelからコピーして、ChatGPTの画面に貼って、返ってきた結果をまたExcelに戻す。この往復を、毎回、手で。一回一回は数分でも、積み重なれば相当な時間です。

    気づけば社長も事務も、AIを使っているのに、なぜか前より遅くまで会社に残っている。「便利になるはずだったのに」と社長がこぼしたのが、私が呼ばれたきっかけでした。

    私が最初にやったのは、社長に説教することでも、新しいツールを勧めることでもありません。ホワイトボードを一枚借りて、「この一週間で、ChatGPTに投げた仕事を全部書き出してみましょう」とお願いしただけです。出てきたのは二十いくつの仕事。それを社長と二人で、付箋に色分けしていきました。青は「社外の調べ物」、緑は「社内の資料に聞くこと」、黄色は「文章を書くこと」、赤は「Excelの中の作業」。貼り終えたホワイトボードを見て、社長が最初に言った言葉を、私は今でも覚えています。「これ、全部同じ人にやらせてたのか」。そう、まさにそこなんです。

    私がやったことは、拍子抜けするほど単純です。新しいAIを買い足したわけでも、難しいシステムを組んだわけでもない。色分けした付箋の一枚一枚に、「この色は、この人に振る」と担当を割り当てただけ。「どの仕事を、どのAIに振るか」を、一緒に紙に書き出しただけです。

    最新の原材料市況や競合の調べ物は、Geminiへ。Google検索と地続きで、今の一次情報に強い。しかも出典のURLを出させれば、社長自身が裏取りできる。

    自社の品質マニュアルや過去議事録への質問は、NotebookLMへ。M社の資料そのものを読み込ませて、「その資料に書いてあることだけ」を根拠に答えさせる。どのページが根拠かまで出るので、あの思いつきの嘘が起きにくい。

    取引先への丁寧なメールや、新商品の紹介文は、Claudeへ。長い文章の読み書きと、言葉の温度感が自然で、社長の人柄がにじむ文面になる。

    そして日々のExcel集計や会議メモの整形は、Microsoft 365 Copilotへ。もともとM社はExcelもOutlookも使っていましたから、その画面の中でそのままAIが動く。コピペの往復が、まるごと消えました。

    この最後の一手が、実は社内でいちばん喜ばれました。パソコンが苦手な事務のベテランさんが、「新しい画面を覚えなくていいなら、私にもできる」と言ってくれたんです。彼女はChatGPTの画面には最後まで馴染めませんでした。でもいつものExcelとOutlookの中でAIが手伝ってくれるなら、話は別。得意な道具の延長線上だから、身構えずに使える。AIを"新しく覚えるもの"ではなく、"いつもの道具が賢くなっただけ"にしてあげる。この心理的なハードルの低さは、導入の成否を分けるほど大きいと、私は現場で痛感しています。

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    振り分けを決めて数週間。社長がぽつりと言いました。「AIを増やしてないのに、なんでこんなに楽になったんだろう」。事務の残業が目に見えて減り、社長自身も、あの深夜のパソコンから解放されました。もちろん、これは一例です。でも私は、この「増やしてないのに」という一言に、この記事のすべてが詰まっていると思っています。勝負を決めたのは、AIの数ではなく、振り分けの地図だったんです。

    6人の専門スタッフに、仕事を振り分ける

    では、その地図を具体的にお見せします。まず、6つのAIを「6人の専門スタッフ」として紹介させてください。経営者の言葉に噛み砕きます。

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    ChatGPT——何でも相談できる万能秘書。まず触る入口です。アイデアの壁打ち、文章のたたき台、雑談まじりの相談。困ったらここに投げる、という総合窓口。全社員がまず慣れるべき最初の一人です。

    Gemini——最新情報の調査と要約が得意な記者。Googleの検索と地続きなので、"今の一次情報"に強い。市況、競合の動き、法改正、最新のニュース。必ず出典のURLを出させて、鵜呑みにせず裏を取る。ここを外すと、古い情報に振り回されます。

    NotebookLM——自社資料だけを覚えている、社内の物知り博士。規程、マニュアル、過去の議事録を読み込ませると、"その資料に書いてあることだけ"を根拠に答えます。しかも、どのページが出典かを示してくれる。だから、思いつきの嘘(ハルシネーション)が起きにくい。社内の「あれ、どこに書いてあったっけ」を全部引き受けてくれる存在です。

    Claude——長文とニュアンスに強い、考える相棒。長いメールや契約書の読み込み、機微な文面、じっくり練りたい企画。文章の温度感が自然で、人が書いたような角の取れた表現になる。急がず深く付き合いたい仕事は、この人に。

    Claude Code——ここは大事なので誤解のないように。これは経営者が直接毎日使う道具ではありません。定型作業そのものを自動化・仕組み化する、技術担当・自動化担当のためのツールです。たとえば「毎朝の集計を自動で回す」「複数の作業を一本のボタンにまとめる」といった、業務の裏側を組み上げる職人。経営者は、これを"技術がわかる社員に持たせる武器"として位置づけてください。社長自身が使いこなす必要はありません。

    Microsoft 365 Copilot——既存の道具の中に住み込むアシスタント。すでに使っているExcel、Word、Outlook、Teamsの中でそのまま動きます。新しい画面を覚えなくていい。これが最大の利点です。ITが苦手な社員ほど、この「いつもの画面のまま」が効きます。

    さて、6人を紹介したところで、肝心の振り分けです。案件が来たとき、社長が頭の中で通す関門は、たった一つの問いです。「この仕事は、次のどれか」。

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    一、調べる仕事か(社外の最新情報を知りたい)→ Gemini。

    二、書く・考える仕事か(文章を練る、企画を深める)→ Claude、軽いものはChatGPT。

    三、社内資料に聞く仕事か(うちの規程・過去の記録に答えがある)→ NotebookLM。

    四、既存の書類の中でやる仕事か(Excel・Word・Outlookの作業)→ Microsoft 365 Copilot。

    五、そもそも自動化したい定型作業か(毎回同じ手順の繰り返し)→ 技術担当にClaude Codeを。

    ひとつだけ、振り分けでよくある勘違いを先に潰しておきます。「調べ物」を万能秘書のChatGPTに聞いてしまう、これがいちばん多い事故です。ChatGPTは相談相手としては優秀ですが、最新の一次情報を取りに行くのは本来の役目ではありません。ここを外すと、M社の社長のように「AIって古い情報を返すな」と誤解して、AIそのものを見限ってしまう。逆に、社内資料の質問を外の調べ物係に投げるのも同じ事故です。「うちの規程どうだったか」を、社内資料を持っていないAIに聞けば、それっぽい嘘が返ってくるのは当たり前。振り分けの地図とは、要するに「その仕事の答えは、社外にあるのか、社内にあるのか、それとも自分の頭の中を整理したいだけなのか」を見極める地図でもあるんです。

    この五つの入口さえ覚えれば、たいていの仕事は迷わず振り分けられます。では、実際に明日から使える具体的な指示文(プロンプト)を、五つお渡しします。どれもコピーして、【 】の部分を自分の会社の言葉に差し替えるだけです。

    まず一本目。社長ご自身が「最初の一歩」で使うものです。自分の一日の業務を棚卸しして、どれをどのAIに振ればいいか、AIの方からインタビューさせる形式です。スマホの音声入力でしゃべりながらでも構いません。

    あなたは、私の業務をAIに振り分けるコンサルタントです。私は中小企業の経営者です。
    これから私が一日の仕事を思いつくまま話すので、一度に全部聞かず、
    一つずつ質問しながら整理してください。
    最終的に、私の業務を「調べる/書く・考える/社内資料に聞く/既存書類の中でやる/自動化したい」の
    5つに分類し、それぞれ ChatGPT・Gemini・NotebookLM・Claude・M365 Copilot・Claude Code の
    どれに振るべきかを表にしてください。
    質問は1回につき1つだけ。私が「棚卸し終わり」と言うまで、深掘りを続けてください。
    では、最初の質問からお願いします。
    【ここで、朝出社してから退社までにやっている仕事を、思いつくまま話す】

    二本目。「ChatGPTとClaude、うちにはどっちが向くの?」という、よくある迷いに終止符を打つプロンプトです。同じ依頼を両方に投げて、出力を並べ、自社の用途にはどちらが向くかを判定させます。まず一方に貼り、次にもう一方に同じものを貼って、最後の判定文だけ自分で見比べてください。

    次の依頼に、あなたなりのベストな回答をしてください。回答のあとに、
    「この回答は、どんな用途・どんな会社に向いているか」を3行で自己評価してください。
    私はその自己評価を、他のAIの回答と見比べて、自社にどちらを使うか決めます。
    ─ 依頼 ─
    【例:主要取引先へ送る、値上げのお願いメールを作ってください。相手は10年以上の付き合いで、
    角を立てたくない。値上げ幅は8%、理由は原材料高騰。300字程度で】

    三本目。NotebookLM用です。自社の規程・マニュアル・過去議事録を読み込ませたうえで、社内の「あれどうだった?」に、出典ページ付きで答えるQ&A係を作る指示文です。社内問い合わせが多い会社ほど効きます。

    これから読み込ませる資料は、当社の社内規程・業務マニュアル・過去の議事録です。
    あなたは、この資料に書かれている内容"だけ"を根拠に答える社内アシスタントです。
    守ってほしいルール:
    1. 回答の最後に、必ず根拠となった資料名とページ(または見出し)を明記する
    2. 資料のどこにも書かれていないことは「資料に記載がありません」と正直に答える
    3. 推測で補わない。曖昧な場合は、確認すべき担当部署を提案する
    準備ができたら「質問をどうぞ」とだけ返してください。
    【ここに、規程・マニュアル・議事録のファイルを読み込ませる】

    四本目。Gemini用の、出典付き調査プロンプトです。業界の最新動向を、必ず一次情報のURL付きで要約させます。数字を経営判断に使う前の、裏取りの相棒です。

    【自社の業界・調べたいテーマ、例:国内の業務用小麦粉の直近の価格動向と、今後半年の見通し】
    について、最新の情報を調べて要約してください。
    条件:
    ・各要点には、必ず出典のURLを添えること(できれば一次情報や公的統計を優先)
    ・情報の「いつ時点のものか」を明記すること
    ・確度の低い噂や古い情報は、その旨をはっきり区別すること
    最後に、私がこの情報を経営判断に使う際、特に自分で再確認すべき点を3つ挙げてください。

    五本目。Microsoft 365 Copilot用です。会議の文字起こしやメールのやり取りから、議事録と"次にやること"を、いつものWordやOutlookの流れの中で作らせます。新しい画面を覚える必要はありません。

    このTeams会議の文字起こし(またはこのメールスレッド)をもとに、次の2つを作成してください。
    1. 議事録:決まったこと・保留になったこと・その理由を、見出し付きで簡潔に
    2. 次にやること一覧:「誰が・何を・いつまでに」を必ずセットにした表
    そのままWordに貼れる形で出力し、担当者ごとのタスクは
    Outlookのフォローアップとしても使える箇条書きにしてください。
    【会議の文字起こし、または対象のメールスレッドを指定する】

    五本とも、特別な準備は要りません。今日の午後、いつもの一つの仕事で試せます。

    全部ChatGPTだった頃と、今と

    振り分けを決める前と後で、現場の何が変わったか。M社の例に、他社で見た共通パターンも重ねて、整理します。

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    まず、精度です。以前は「AIって、たまに嘘つくよね」が社内の共通認識でした。でもよく見ると、嘘が出ていたのは、調べ物をChatGPTにさせたときと、社内資料の質問を根拠なしにさせたとき。つまり、道具の使いどころを外していた場面に集中していたんです。GeminiとNotebookLMに振り分けてからは、「出典が出る」から社員がAIを信用するようになった。信用できると、使う回数が増える。使う回数が増えると、うまくなる。良い循環が回り始めました。AIへの不信は、たいてい性能ではなく、使いどころのズレから生まれます。適材適所は、精度そのものを上げる打ち手でもあるんです。

    次に、時間です。いちばん効いたのは、実は派手な仕事ではなく、Excelのコピペ往復や議事録の清書といった地味な繰り返しでした。Copilotが既存の画面の中で片づけてくれるようになって、事務の残業が減った。社長は「うちのAIは、賢くなったんじゃなくて、配置が変わっただけ」と笑っていました。まさにその通りです。

    そして、現場の納得感です。以前は「社長がまた新しいの入れてきた」と、どこか冷めていた社員が、「この仕事はこのAI」という地図を共有した途端、自分事になった。人にはそれぞれ得意分野がある、という考え方は、そもそも組織で働く人にとって馴染み深い発想です。だから腹に落ちるのが早い。AIを"人"として捉えた瞬間、拒否感が薄れていくのを、私は何度も見てきました。

    もうひとつ、見逃せない変化がありました。社長の頭の中に「地図」ができたことで、新しいAIが世に出ても、慌てなくなったんです。以前の社長なら、展示会で新しいツールを見るたびに「これも入れなきゃ」と焦っていた。でも今は違う。「これは調べ物係か、それとも書く係か」と、まず自分の地図のどこに当てはまるかを考える。当てはまる枠にすでに戦力がいれば、無理に乗り換えない。空いている枠なら、試してみる。振り回される側から、選ぶ側に回ったんです。これは、ツールが一つ増えた以上の、経営者としての大きな変化だと私は思います。

    数字の大小より、私が価値だと思うのはここです。振り分けの地図は、一度作れば会社の共通言語になる。社長が全部を使いこなせなくても、「この案件はNotebookLMね」の一言で、現場が動く。属人的だったAI活用が、組織の仕組みに変わるんです。

    経営者のあなたへ——1つに絞らなくていい

    ここまで読んで、「6つも覚えるのは大変だ」と感じたかもしれません。安心してください。全部を一度に導入する必要はありません。かといって、無理に1つに絞る必要もない。おすすめは、3つの系統から始めることです。

    一つめは、万能の入口としてのChatGPT。まずは社員全員が、これに慣れる。困ったら投げる窓口を、一つ持つ。

    二つめは、調べ物の系統。GeminiとNotebookLMです。社外の最新情報はGemini、社内の資料はNotebookLM。この「外と内、両方に出典付きで聞ける」体制ができると、AIの答えを信用できるようになります。信用が、活用の土台です。

    三つめは、既存書類の系統としてのMicrosoft 365 Copilot。すでにExcelやOutlookを使っているなら、いちばん抵抗なく入れられます。新しい画面を覚えなくていいぶん、ITが苦手な社員にも届きます。

    Claudeは、じっくり文章を練りたくなったときに足せばいい。Claude Codeは、技術がわかる社員が出てきたら、その人に武器として持たせればいい。順番は、この3系統が先です。

    進め方も、あえて具体的に書いておきます。最初の一週間は、ChatGPTを全員が触ることだけに集中する。二週目に、調べ物の担当者だけがGeminiを、社内問い合わせの多い部署だけがNotebookLMを試す。三週目に、事務や経理がCopilotで一つだけ定型作業を置き換えてみる。この「一度に一系統ずつ、担当を絞って」というやり方が、いちばん失敗しません。全社員に全部を一斉配布すると、必ず「結局どれ使えばいいの」の迷子が生まれて、最初の二択の失敗に逆戻りします。小さく始めて、うまくいった系統から横に広げる。焦らないことが、いちばんの近道です。

    大事なのは、「どれが一番強いか」を延々と比べることではなく、「うちのこの仕事は、この一人に任せる」と決めること。決めた瞬間から、AIはあなたの部下になります。比較検討で止まっている限り、AIはいつまでも他人のままです。

    締め——今日、いつもの1つを別のAIに振ってみる

    たいそうな決断は要りません。今日、あなたがいつもChatGPTに投げている仕事を、一つだけ思い浮かべてください。

    もしそれが「調べ物」なら、今日はGeminiに振ってみる。出典のURLを出させて、その一次情報を自分の目で確かめてみる。もしそれが「社内資料への質問」なら、NotebookLMに規程を読み込ませて聞いてみる。たった一つ、振り先を変えるだけです。

    その一回で、あなたはきっと気づきます。AIは、増やして強くなるものではなく、振り分けて強くなるものだと。6人の相棒は、もうあなたの会社の中にいます。あとは、誰に何を頼むかを決めるだけ。その地図さえ手にすれば、経営者の仕事は「使いこなす」から「采配する」に変わります。

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    ——ここまで、6つのAIを"使い分けて勝つ"地図をお渡ししました。次回は「では、この6つを全社員全員に配るべきなのか」という、もう一歩踏み込んだ問いを書くつもりです。

    鈴木章裕

    株式会社コミクス 代表取締役

     
     
    AI活用のご相談→ https://www.comix.co.jp/contact/ 株式会社コミクス代表取締役。生成AI活用支援実績304社(2026年9月末現在)。営業・資料作成の効率化、AIエージェント導入を支援。何から始めるか迷っている段階でもご相談ください。

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