
「ちょっと確認します」と言いながら、裏で調べるAIが出た。──Gemini 3.8 Live を読んだ社長が測り直した、うちの電話の「無音の秒数」
「少々お待ちください」。この一言のあと、お客様が受話器の向こうで何秒黙って待っているか、数えたことはありますか。2026年9月15日(米国時間)、Google が音声対話モデル Gemini 3.8 Live を発表しました。報道によれば、姉妹モデルの Extended Thinking 版は「ちょっと確認します」と話しながら、裏で調べ物を続けられるそうです。この記事を朝に読んで、私が真っ先に思い出したのは技術の話ではなく、ある会社の電話でした。うちの保留音は、いったい何秒鳴っているんだろう、と。

「待たずに話しながら考える」が製品になった日
2026年9月15日(米国時間)、Google が音声対話モデル Gemini 3.8 Live を発表しました。日本では9月16日(水)の朝に報道として流れてきたので、今朝見出しだけ見た経営者も多いはずです。会話をしながらツールを呼び、視覚も扱う。姉妹モデルの Extended Thinking 版は、話しながら多段階の推論を進められる。公式の投稿は数十万表示の規模で広がっています。
技術の肝は一つです。これまでの音声AIは、聞いた音声を文字に書き起こし、読んで考え、答えを作り、読み上げる、という四段の構成でした。カスケード構成と呼ばれます。段と段のあいだに受け渡しが挟まりますから、その継ぎ目で待ちが生まれる。Gemini 3.8 Live はネイティブ音声対話モデルで、音声の入力と出力を一つのモデルが扱います。四段を一段にした、という言い方がいちばん近い。モデルIDは gemini-3.8-live、前世代の gemini-3.1-flash-live-preview を置き換える Gemini 3 Pro 系のネイティブオーディオ派生で、狙いは低遅延のリアルタイム対話です。
会話を止めないための仕掛けも並んでいます。挟み込み推論(interleaved reasoning)は、思考が入っているのに深さを指定する設定が使えず、セットアップから外す必要がある。遅延のプロファイルを固定し、会話を途切れさせないための割り切りです。非同期の Function Calling は、ツール呼び出しを裏で走らせたまま音声を出し続ける仕組みで、既定は NON_BLOCKING、互換のため BLOCKING も残る。長い待ちで無音になる問題を避ける機能だそうです。割り込み(barge-in)、感情に合わせた話し方、必要なときだけ話す設定、入出力の文字起こし、文脈の差し込みも使える。会話中にカメラ映像を見ながら応答するデモも紹介されました。多言語は97言語。
今回の発表では、Live と Extended Thinking の違いも書き分けられています。Live はレイテンシ固定寄りで、ツールの完了を待ちがち。turnComplete でアイドルに戻る。Extended Thinking 版は裏の推論に深さの指定があり、ツール呼び出しは非同期のみで、「ちょっと確認します」と話しながら処理を続け、turnComplete のあとも対話を継続できる。Live は「会話を止めない音声OS」、Extended Thinking は「同じセッション内で考える音声エージェント」。ベンチマークでは Live 本体が Speech Agent Arena で2位、Extended Thinking 側は Speech-to-Speech の品質指標で1位とされています。なお今回の発表は、バッチ処理やコード実行の道具ではなく、長時間セッションのリアルタイム対話に特化したものだとされています。

「うちの受付は、1本の電話で保留音を3回鳴らしていますよ」
ここから先は、私が支援してきた複数の会社の事例を1社のモデルケースとして再構成したものです。社名も人物も特定できないように変えてあり、数字はあくまで一例として読んでください。
業務用空調と給排水設備の保守点検を手がける会社です。社員41名、受付は2名。緊急の修理依頼の電話が多く、受付が用件を聞き、現場担当に確認し、折り返す。この流れが常態になっています。AIは見積書の下書きと議事録の整理に使っている程度。社長はY社長、50代です。
9月16日(水)の午前、定例の顧問ミーティング。会議室に入った私が資料を広げる前に、Y社長がこう言いました。
「今朝のニュース、AIが裏で調べながら話し続けるんですって。うちの受付は、1本の電話で保留音を3回鳴らしていますよ」
笑いながら言ったのですが、目は笑っていませんでした。ところが「1本の電話で保留音が3回鳴る」は、数字ではなく体感でした。何秒なのかは誰も知らない。
私はホワイトボードのペンを取って、「電話が鳴ってから答えるまで」を左から順に書いてもらいました。まず段数を数える。段数が見えるまで、どこが悪いかは誰にも分かりません。
Y社長が話し、受付の動きを知っている総務の担当者が補足しながら、白板が埋まっていきました。電話が鳴る。受付が取る。用件を聞く。ここで一度目の保留。現場担当の携帯に電話をかけ、つかまるかどうかを試す。二度目の保留。過去の作業履歴を紙のファイルから探す。三度目の保留。最後に金額の目安を伝えるため、担当の見積の控えを確認する。それでも分からなければ、折り返しの約束をして電話を切る。
余談ですが、このとき総務の担当者が「あっ、伝票を探す時間も入ります」と言い出して、白板の矢印が一本増えました。
書き終えた白板を、Y社長が腕を組んで見ていました。矢印の下に、私は「無音」と書いた小さな丸を打っていきました。相手が黙って待っている箇所です。一度目の保留、二度目の保留、履歴を探すあいだ、最後の金額確認。丸は四つ並びました。
「四つですね」と私が言うと、Y社長は白板から目を離さずに答えました。
「先生、ニュースの音声AIは四段を一段にしたんでしょう。うちは4段どころか5段だ。受付が聞いて、担当に確認して、履歴を探して、金額を見て、それから折り返す。しかも段と段のあいだで、お客さんが黙って待っている」
その通りでした。私が朝の記事を読んで書き留めた「段の継ぎ目に待ちが生まれる」は、モデルの構造の話であると同時に、この会社の受付の話でもあったわけです。

無音は四か所ではなく、七か所ありました
白板の四つの丸を、一つずつ見ていきました。何を待っているのか、その待ちは誰のものなのか、そして待っているあいだ相手には何が聞こえているのか。三つ目の問いを口にした瞬間、Y社長が「保留音しか聞こえていませんね」とつぶやきました。
一つ目の保留は「現場担当がつかまるかどうか」を待つ時間です。相手がいる話ですから、受付にはどうにもできない。二つ目は、担当が電話に出たあと、担当が状況を思い出すまでの時間。三つ目は、過去の作業履歴を紙のファイルから探す時間。四つ目は、金額の目安を確認する時間です。
ここでY社長が「電話だけじゃないな」と言いました。問い合わせフォームから来るメールも同じ構造だと。フォームの内容を受付が読み、現場担当に転送し、返事を待ってから返信する。その転送から返信までの空白と、返信を書く人が社内の誰かの確認を待つ空白。丸が二つ増えました。さらに、社内で若手が先輩に判断を仰ぐときの空白がもう一つ。電話に四つ、問い合わせに二つ、社内の依頼に一つ。合わせて七つです。
七つ書き出したところで、Y社長の表情が変わりました。これまで「受付が忙しい」「担当がつかまらない」という言い方でぼんやり語られていたものが、七つの具体的な空白として白板に並んだからです。忙しさが人の問題から段の問題に変わった瞬間でした。
ここが山場でした。改善の議論はここから必ず散らかります。七つ全部に手を打とうとして七つの施策を並べ、どれも実行されないまま次の月次を迎えるのを何度も見てきましたし、七つ並べて満足するのは経営者ではなく支援する側で、施策の数が多いほど仕事をした気になる悪癖が私たちにはあるのです。
なので、その場で七つを三つに束ねました。順番も決めました。
一つ目は、測ること。七つの空白のうち、どれが何秒なのかを誰も知らない。まずは秒で記録する。二つ目は、つなぎの一言。保留音の代わりに人が言う一言を、場面別に決める。無音を消せないなら、無音でなくす。三つ目は、受話器を置かずに済む調べ物の切り出しです。七つのうち三つ目と四つ目は、調べる先が決まっている調べ物でした。決まっているなら、話しながら並行して進められるはずです。
Y社長は三つを白板の右端に書き写して言いました。「一つ目は今日から測れますね」。その通りです。測るだけなら、稟議も設備投資も要りません。

まず、無音の秒数を測る
ここからは、その日の昼過ぎまでに私がY社長へ渡した手順をそのまま書きます。電話と問い合わせがある会社なら、どこでも同じように使えます。
測るときの原則は一つだけ。相手が黙って待った時間だけを数えます。通話時間全体を測っても意味がありません。挨拶も用件の聞き取りも、相手が話している時間は価値のある時間です。縮めるべきは、「少々お待ちください」と言ってから再び声を出すまでの空白。ストップウォッチはスマートフォンで十分、保留を押すと同時に押すだけです。
ただ、いきなり「測ってください」と受付に言っても続きません。何を測るかが決まっていないからです。そこで社長自身が先に「待たせている場面」を洗い出します。移動中の車内で話しかけ、会社に着くまでに表ができている、という使い方を想定したプロンプトです。
あなたは中小企業の業務改善コンサルタントです。私は【業種を書く。例: 業務用空調と給排水設備の保守点検】の会社の経営者で、社員は【人数】名、受付は【人数】名です。
これから私が質問に答えていきますので、社内で「相手を待たせている場面」をすべて洗い出してください。
進め方:
1. 「電話」「問い合わせフォーム・メール」「社内の依頼」の3つについて、1問ずつ質問してください。まとめて聞かないこと。
2. 私の答えが曖昧なときは、具体例を1つ挙げさせる追加質問をしてください。
3. 質問は合計12問までとします。
最後に、次の列の表にまとめて出力してください。
| 場面 | 待つのは誰か | 待たせる原因 | その場で答えられない理由 | 秒数を測る担当 |
表のあとに「まず測るべき場面」を3つ、理由つきで挙げてください。場面が決まったら、記録する紙を用意します。ここで凝った仕組みを作らないことが大事で、紙1枚に収まる形にしておくと続きます。Y社長の会社では、受付の机に印刷したものを置き、1日の終わりに社長の机へ回す運用にしました。
保留音の代わりに置く、つなぎの一言
記録表は次の形です。A4に印刷して1週間で1枚。欄が多いと埋まらないので六列で止めました。
# 無音の秒数 記録表( 年 月 第 週)
記入ルール: 相手が黙って待った時間だけを書く。挨拶や聞き取りは含めない。
測り方: 保留を押した瞬間にストップウォッチを押し、再び話し始めた瞬間に止める。
| 日付 | 場面(電話/問い合わせ/社内の依頼) | 誰が待ったか | 無音の秒数 | 原因(確認待ち・折り返し・調べ物) | その場で答えられたか(はい/いいえ) |
|---|---|---|---|---|---|
| / | | | 秒 | | |
| / | | | 秒 | | |
| / | | | 秒 | | |
| / | | | 秒 | | |
| / | | | 秒 | | |
今週いちばん長かった無音: 秒(場面: )
その無音の原因を一行で: さて、秒数が見えてくると次に効くのが「つなぎの一言」です。無音の多くは、調べる行為そのものより、調べているあいだ何も伝わっていないことで長く感じられています。保留音は「待て」としか言いません。人が言う一言なら、何を調べていて、どのくらいかかるかを伝えられる。
今回の発表で私が唸ったのは、この当たり前を機械が仕様として持ったことでした。裏で調べながら話し続ける、割り込みを受ける、必要なときだけ話す、感情に合わせて話し方を変える。良い受付の人が経験でやっていたことが、設定項目として並んでいる。だったら人間の側も、文字にしておけばいい。アドリブに任せると、つなぎの一言は必ず「確認します」で終わります。
あなたは電話応対の教育を担当する研修講師です。
私の会社は【業種】で、受付が【人数】名、緊急の依頼が多い電話環境です。
下に貼る「待たせている場面」から、保留音の代わりに人が言う「つなぎの一言」を作ってください。
【ここに待たせている場面を3つ貼る。例: 見積金額を担当に確認する/過去の作業履歴を探す/担当者の在席を確認する】
条件:
- 場面ごとに2案(丁寧め/手短め)、合計6案を出す
- 各案に「何を調べるか」と「どのくらいかかるか」を必ず入れる
- 「確認します」だけで終わる文は不可とする
- 1案は40字以内、そのまま声に出せる話し言葉にする
出力形式:
| 場面 | 案A(丁寧め) | 案B(手短め) | 想定の無音を何秒縮められるか |
表のあとに、使ってはいけない言い回しを3つ挙げてください。出てきた案は、そのまま使わず一度声に出してもらいます。文字で読むと自然でも、口にすると不自然な言い回しが必ず混ざるからです。Y社長の会社では木曜の朝礼で受付の2名に声に出して選んでもらい、各場面1案に絞る予定です。紙1枚に収まります。
受話器を置かずに済む調べ物を切り出す

三つ目の手当てがいちばん効きます。無音を短く感じさせるのではなく、無音そのものを減らすからです。白板の七つの空白を見直すと、性質が三つに分かれていました。受付が手元の情報だけで即答できるもの。調べる先が決まっていて、話しながら並行して進められるもの。現場の判断や見積の責任が必要で、担当に回すしかないもの。
Gemini 3.8 Live の非同期のツール呼び出しも発想は同じです。裏で走らせられる処理と、結果を待たないと次に進めない処理を分けている。会社の受付は分けていないから、全部が「保留」になる。仕分けは実際の記録から機械的に行います。
あなたは業務プロセスの整理を専門とする分析担当です。
下に貼るのは、当社の問い合わせ記録です。1件ずつ読み、対応内容を3つに仕分けてください。
【ここに問い合わせ記録を貼る。日付・相手・用件・実際の対応・かかった時間が分かる形で20件程度】
仕分けの定義:
- その場で答えてよい範囲: 受付が手元の情報だけで即答できる。判断を伴わない
- 裏で調べれば済む範囲: 調べる先が決まっていて、話しながら並行して進められる
- 担当に回すしかない範囲: 現場の判断や見積の責任が必要
出力形式:
| 用件 | 仕分け | 根拠(1行) | その場で答えるために必要な情報 |
表のあとに、「裏で調べれば済む範囲」を受付の手元に置くための資料を5つ挙げてください。この仕分けを一度やると、「その場で答えてよい範囲」が思ったより広いと気づきます。Y社長の会社では、直近の作業日と担当者名、定期点検の次回予定、標準的な出動の目安が受付の手元になかっただけ。紙のファイルを探しに行く無音は、一覧が手元にあれば消えます。
音声AIを入れる判断は、ここまでやってからに。測っていない無音に高い道具を当てても効きません。導入時の確認事項を、発表で分かった範囲だけで並べました。
音声AIを電話・受付に入れる前のチェックリスト(着手前に全項目を確認する)
- [ ] 無音の秒数を、導入を決める前に2週間ぶん測った
- [ ] 保留音の代わりに人が言う「つなぎの一言」を、場面ごとに文字にした
- [ ] 会話の途中でお客様が話し始めたとき、割り込みを受けられる仕様か確認した
- [ ] 必要なときだけ話す設定(黙っていてよい場面)があるか確認した
- [ ] 裏で調べているあいだも話し続けられる仕組みか確認した
- [ ] 会話の入出力の文字起こしが記録として残るか確認した
- [ ] 会話の途中で必要な情報を差し込めるか確認した
- [ ] 言語の切り替えが必要な場面が自社にあるかを棚卸しした
- [ ] 長時間の対話に特化した道具であって、バッチ処理やコード実行の道具ではないと理解した
- [ ] うまくいかなかったときに人へ戻す手順を、紙1枚に書いた仕分けができたら、最後に文章へ落とします。表のままでは受付が迷うからです。折り返しを減らす鍵は、「答えてよい」と社内の紙に書いてあることです。
あなたは中小企業の業務マニュアルを作る編集者です。
下に貼る問い合わせ記録から、受付が折り返し電話をせずに済ませる社内ルール文を書いてください。読むのは入社1か月の社員です。
【ここに問い合わせ記録を貼る。用件と実際の対応が分かる形で20件程度】
出力形式(見出しのまま各3行):
■ 自分の判断で答えてよいこと
(3行。「〜は、確認せずにその場でお答えします」の形で書く)
■ 確認してから答えること
(3行。「〜は◯◯に確認してからお答えします」の形で確認先を明記)
■ その場で答えてはいけないこと
(3行。理由を各行の末尾に括弧書きで添える)
条件:
- 1行は60字以内。専門用語を使わない
- 「臨機応変に」「状況に応じて」のような判断を丸投げする表現は使わない割り込まれたとき、話さなくていいとき

発表を読んで社内に持ち帰る価値があると思ったのが、割り込みと沈黙の扱いです。
割り込み(barge-in)は、こちらが話している途中で相手が話し始める場面です。電話では日常的に起きます。手順の説明中に「それより急ぎで来てほしい」と言われる。金額の話の最中に日程の話へ移られる。説明を最後まで続ける応対と、すっと止めて相手の用件に乗り換える応対とでは、印象がまるで違います。
上手な受付は、止める・聞く・戻す、の三拍子を無意識にやっています。文字にしておくと、新人が最初の一週間で使えます。
# 割り込まれたときの返し方(記入式・場面ごとに3行)
書き方:「止める」=自分の説明をやめる一言/「聞く」=相手の用件を確かめる一言/「戻す」=元の話に戻す一言。3行とも、そのまま声に出せる話し言葉で書く。
場面1: 説明の途中で「それより急ぎで来てほしい」と言われた
- 止める:
- 聞く:
- 戻す:
場面2: 調べている最中に、別の質問が重なった
- 止める:
- 聞く:
- 戻す:
場面3: 金額の話の途中で、日程の話に移られた
- 止める:
- 聞く:
- 戻す:
書き終えたら声に出して読み合わせ、言いにくい行を書き直す。もう一方の沈黙も設計できます。発表にあった「必要なときだけ話す」は、裏返せば「黙っていてよい場面がある」という宣言です。相手が考えているとき、メモを取っているとき、そばの誰かと相談しているとき。気を利かせて声をかけると、かえって邪魔になる。どの沈黙が良くて、どの沈黙が悪いか。これも自社の記録から作ります。
あなたは接客品質の設計を担当するアドバイザーです。
下に貼る問い合わせ記録から、受付や音声AIが「黙っていてよい場面」と「声をかける場面」を切り分け、ルール表にしてください。
【ここに問い合わせ記録を貼る。相手の発言と応対者の発言が交互に分かる形で10件程度】
条件:
- 黙ってよい場面は、相手が考えている・書き写している等、沈黙に意味がある場面に限る
- 声をかける場面は、何秒の沈黙で声をかけるかを必ず数字で書く
- 判断に迷う場面は「迷う」列に分けて残す。無理に二択にしない
出力形式:
| 場面 | 黙る/声をかける/迷う | 判断の目安(秒数や合図) | かける言葉の例 |
表のあとに、最も間違えやすい判断を2つ挙げてください。割り込みと沈黙を文字にしておくと、後で音声AIを入れる段でも効きます。仕上げは、三つの手当てを1本の通話で回してみることです。
あなたは電話応対を分析する品質管理の担当者です。
下に貼るのは当社の通話1本の流れです。無音が生まれた箇所をすべて特定してください。
【ここに通話の流れを貼る。発言を時系列で並べ、保留した箇所には「(保留)」と書き、分かる範囲で秒数を添える】
出力形式:
| 無音の箇所 | 何秒か | 原因(確認待ち・折り返し・調べ物) | つなぎの一言の案(40字以内) | 裏で並行して進められたか |
表のあとに、次の2つを書いてください。
1. この通話でいちばん惜しかった無音を1つと、その理由
2. 受付が手元に持っていれば消えた無音と、必要だった情報の名前
推測で秒数を埋めず、分からない箇所は「不明」と書いてください。保留音が鳴る会社から、つなぎの一言がある会社へ
ここまでが、9月16日(水)の午前から昼に会議室で起きたことです。
朝の時点でのY社長の会社はこうでした。受付が用件を聞き、現場担当に確認し、履歴を探し、金額を見て、折り返す。段は五つ、相手が黙って待つ空白は七か所。そのどれもが何秒なのか誰も知らない。改善の議論は毎回「受付が忙しい」で終わっていました。
昼過ぎの時点では、段数は変わっていません。人も増えていません。変わったのは、七つの空白が紙の上に並んだことと、そのうち三つに手を打つと決まったことだけです。……と書くと大げさですが、この「だけ」が実は大きい。原因を人ではなく段数として書けるようになると、会議の空気が変わるからです。誰かが責められる会議は続きませんが、段数を数える会議は続きます。
読み合わせの型も決めました。長い会議は要りません。週に1回、15分です。
# 「無音の秒数」読み合わせ(週に1回・15分・毎週◯曜◯時)
進行:
1. 先週いちばん長かった無音を1件だけ読み上げる(3分)
2. その無音が「つなぎの一言」で縮むか、調べ物の切り出しで消えるかを決める(7分)
3. 来週ためす言い回しを1つだけ決めて、全員で声に出す(5分)
決めないこと: 誰が悪かったか。原因は人ではなく段数として書く。
持ち込むのは先週の記録表1枚だけ。
| 週 | 今週の最長の無音(秒・場面) | 減った場面 | 来週ためすつなぎの一言 | 決めた人 |
|---|---|---|---|---|
| 第1週 | 秒・ | | | |
| 第2週 | 秒・ | | | |
| 第3週 | 秒・ | | | |
| 第4週 | 秒・ | | | |
4週たったら、最長の無音が縮んだかどうかだけを見る。同じ水曜の昼過ぎ、Y社長の机には紙が3枚置かれています。無音の秒数の記録表、つなぎの一言の台本、受話器を置かずに済む調べ物の一覧。木曜の朝礼で受付の2名と読み合わせる予定です。結果はこれから。まだ1秒も測っていません。

経営者の皆さんへ、段数の話をもう一度
私はこれまで277社の生成AI活用を支援してきました。繰り返し見てきたのは、新しい道具のニュースを読んだ経営者が、自社の何を測ればいいか分からないまま道具の検討に入る場面です。
今回の発表は、技術の話としては「四段を一段にした」という一行に尽きます。けれど経営の話に翻訳すると、もう少し使えるものになる。段の継ぎ目に待ちが生まれるのは、モデルの中だけの現象ではないからです。受付から現場担当へ、担当から見積へ、見積から社長へ。段を一つ増やすたびに、誰かが黙って待つ時間が生まれます。測られていない時間は、改善の議題に上がりません。
だから順番はいつも同じです。測る。つなぐ。切り出す。この三段を踏んだ会社は、音声AIを入れるときも何を設定すればいいか自分の言葉で言えます。測らないまま道具を入れた会社は、前より良くなった気がする、で終わってしまう。
もう一つ。今回の発表で機械が持った機能の多くは、良い受付の人が経験で身につけてきたものです。相手が話し始めたら説明を止める。黙っていていい場面では黙る。調べているあいだも、何を調べているかを伝え続ける。機械が仕様として持ったということは、経験に埋もれていた技術を私たちも文字にして引き継げるということです。
段数を数えるのに稟議は要りません。ストップウォッチとA4が1枚あれば、明日の朝から始められます。
無音の秒数は、明日の朝から数えられます
Gemini 3.8 Live のニュースを読んで、自社に音声AIを入れるべきかを考えた経営者は多いと思います。私からのお願いは一つだけです。その判断の前に、自社の無音を秒で知ってください。
保留音が3回鳴っていることに気づいた社長は、もう戻れません。気づいたその日のうちに、記録表を机に置けます。道具を買う決断より先に、数える決断ができる。順番さえ間違えなければ、今回のニュースは、良い問いを置いていってくれたことになります。
受話器の向こうの沈黙は、いま何秒ですか。
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鈴木章裕
株式会社コミクス 代表取締役