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【ショート】 明日も、はじめまして

―― short story ――

妻は呪いにかかっている。
俺を愛している限り、毎朝、俺だけを忘れるという呪い。

「あなたは、だれ?」

もう、何度聞いたか分からない言葉なのに、
そのたびに俺の胸を抉った。
引きつりそうになる口元に笑みをつくり、俺の名を告げた。
驚く妻に、俺が夫であることを何度も説明した。
出会った頃の話をして、妻にもう一度好きになってもらう。
それが、何年も続いていた。

東方に住む魔女から想いを寄せられ、それを断ったことが原因だった。
『私を拒むのなら、妻に愛想を尽かされればいい』
魔女はそう言って、妻に呪いをかけた。

目覚めた妻の反応は、毎日少しずつ違った。
でも、一日の終わりには俺を愛してくれた。
だから、翌朝になって俺を忘れても、耐えられた。

呪いを解く方法を城の神官様や魔法使いたちに相談していた。
金はいくらかかっても構わなかった。
あらゆる方法を試した。
妻も協力してくれた。
それでも、魔女の力は強大で解けなかった。

――ある朝。

妻が俺の名を呼んだ。

振り返ると、妻が少し驚いたような顔をしてこちらを見ている。
頭が真っ白になった。
口角が上がり、妻に近づこうとして、ふと足が止まる。

昨日も、妻を連れて城へ行った。

神官の浄化で、とうとう呪いが解けたのか。

いや……。

涙が込み上げる。

「どうして……泣いてるの?」

妻は眉をひそめる。
喉の奥から、乾いた笑いが漏れた。

「……すまない。嬉しくて」

妻をそっと抱きしめる。
けれど、妻の腕は、

いつまで待っても俺の背中に回らなかった。


その朝から、妻は一度も俺を忘れなかった。








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