【ショート】 半透明ハイキング
葉っぱは山に恋をしていた。
今日も小さな体を揺らし、大きな山のハイキングコースを歩く。
遠く、陽を受けた深緑が風にざわめき、その向こうに荘厳な山が見えた。
高鳴る鼓動は、上り坂のせいだけではない。
道の両脇には、常に野菊が咲いている。
「山は野菊が好きなんだわ」
涙を流し、天を仰ぐ。
――せめて、想いだけでも伝えたい。
哀れに思った天の神は、山形の半透明の飴細工を葉っぱへ授けた。
口にすると、甘い、と感じた瞬間、山の中心に根を張る巨木になっていた。
次の秋、足元に野菊はない。
「なぜ泣く?」
「あなたの好きな野菊が咲かなくなったの」
「野菊? あれは、お前が迷わず私のところへ来られるよう咲かせていただけだ」
「それって……」
「今さら気づいたのか」
巨木の葉が、飴細工のように透けながら桃色に染まった。
天の神は息を吐く。
手には葉っぱ型の半透明の飴。
「次は、私を見ておくれ」
口に放り込んだ。
やがて巨木のもとへ続く、新しいハイキングコースができた。
(410文字)
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