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【ショート】 月光だけで咲く花

―― short story ――

乾いた風が吹いていた。
砂の細かい粒子が目の前を通り過ぎていく。

まあるい地上には砂と岩肌しか見えなかった。
すっかり変わってしまった。

それでも、変わらないものが一つだけあった。

空に浮かぶ月。
これだけは、何も。

私は他に見るものがなくなって、月だけを見るようになった。
月はいつも、ただ、そこにあった。
とても満足そうに。

私は不満だった。
他のものがなくなってしまったというのに、どうして、月は満足そうなのか。

ある日、月が降りてきた。
さらさらの砂を踏み、近づいてくる。
逃げたい衝動に駆られても、私は動くことができない。
花びらに触れられると、くすぐったかった。
ゆらり、と震えると、月が笑う。

やっと、手に入れた。

月が怖かった。

どうしてかは、わからない。
月がまた触れてくる。
やさしい手つきで。

いつから想われていたのか。
まだ種だった頃、風に乗って自由に飛び回っていた。
あの時、月の光が届く場所に根を下ろしていればよかったのだろうか。

月は、これでよかったらしい。

この世界に二人だけ。
ただ、光を与えるだけ。







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