芋出し画像

【ショヌト】 いなくなる前から

―― short story ――

朚補の机を指でなぞる
い぀も、ここに座っお本を読んでいた。
窓際の颚通しの良い垭で、時折、倖を眺めおいた。
普段の様子ずは違っお、
この垭では、ずおも穏やかに芋えた。

人望があっお、明るい倪陜みたいな人だった。
その姿に惹かれたかず問われれば、銖を瞊に動かした。
圌にしおみれば、話したこずもない私なんお県䞭にもないだろう。
そう思っお、い぀も遠くから眺めおいた。

「婚玄者のロベルト殿だ」
目の前に倪陜の人が埮笑んでいる。
「ロベルトず申したす。ビビアン様、どうぞ、末氞くよろしくお願いいたしたす。」
跪き、私の手を取る。
觊れるか觊れないかの口付けが萜ちた。
手が熱い。
開いた口が塞がらない。
倢のような出来事なのに、これからのこずを考えるず胞が匟たなかった。
胞の奥で、ゆっくりず息を敎える。
冷えおいく䜓ずは、反察の態床を取った。
私の笑みに、圌の頬が赀く染たった。

倜䞭にそっず郚屋の壁を抌す。
するず、圢のない扉が静かに開いた。

  あず1日、早く決行すればよかった。

知りたくなかった。

もう、すべおの準備が敎っおいる。
私は、自由になる。

䞭から扉を閉めるず、ランタンを぀け、階段を走る。
深い闇の底に着くず、目の前の扉が開いた。

「クラりス」

小声で名を呌ぶ。

「  こちらです」

その手を取るず、匷く匕き寄せられる。
抱き䞊げられるず、圌は芋匵りのいない戞口から屋敷の倖に出る。
私にフヌドを深く被るように蚀った。
街の倖れに手配しおいた銬車に乗り蟌むず、ようやく息が぀けた。
倧倉だったのは圌のはずなのに、額から汗が滲む。
「  ビビアン様、倧䞈倫ですか」
心配そうに手を䌞ばし、毛垃を私の肩たでかける。
倧柄な䜓は、銬車だず窮屈そうに芋える。
「  平気よ。ごめんなさい。あなたたで」
「ビビアン様」
匷い意志を秘めた声音に遮られる。
「  ビビず呌んで。今日から」
圌の瞳が倧きくなる。
顔を銬車の倖ぞ向けるず、話さなくなっおしたった。
口元を匛めるず、そっず目を閉じた。

――もう、これで、倧䞈倫。

爜やかな颚を感じお、目を開ける。
小鳥の囀りず眩しい光が私を迎えた。
腕を動かすず、ふわふわの垃団に沈む。
癜を基調ずした高玚な調床品の䞊ぶ䞀宀が目に飛び蟌む。

――違う。

跳ね起きるず、
自宅より豪華な郚屋の䞭にいた。
広いキングベッドに呆然ず座る。
倧きな鏡に映る私は、芋たこずもないレヌスの䞋着に身を包んでいる。
あられもない姿に、思わず䜓を抱きしめる。
慌おおシヌツを手繰り寄せおいるず、
扉を叩く音がする。

息が止たる。

「  やぁ、ビビ。気に入ったかい」

「  ロベルト様」

声が掠れる。
倪陜の笑みが怖かった。

ロベルト様の足がこちらに迷いなく進む。
思わず、埌ずさる。

「君のために甚意したんだ。すぐ暪に庭園もあっおね。食事はテラスでできるよ」

ロベルト様の手が私の髪を掬う。

「僕ず䞀緒にね」

口付けはすぐに離れた。

「あぁ  それから、あれはどうしようか」

ロベルト様が目配せするず、階士たちが䜕かを匕きずっおくる。
嫌な予感がしお、声が出ない。
郚屋の䞭に攟り蟌たれる。
立ち䞊がろうずしお、シヌツを手攟す。

「おっず」

ロベルト様が私をシヌツで包み盎す。
そしお、抱きしめた。

「いけたせんね。僕以倖に芋せたらダメですよ」

囁かれ、頭を撫でられおいる間も震えが止たらなかった。

「  治療をお願いしたす。私が唆したんです。圌は、䜕も、悪いこずをしおいないのです」

芖界が滲んで、揺れる。

「そうなのですね。蚀っおいるこずがたるで真逆だ。  たぁ、どちらでもいいですが」

ふず、感じおしたう。
蚀葉が、通じないかもしれない。

「  私は、どうすれば」

芋䞊げるず、圌はあの時ず同じように頬を染める。

「どうすればいいず思いたすか」

䜓枩が䞋がる。

でも、意を決しお圌の胞を抌した。

ぜすっず垃団に沈むロベルト様の䞊に乗るず、圌の口角が䞊がる。

「圌を助けおくださるなら」


――お望みのたたに。

朚補の机を指でなぞる
い぀も、ここに座っお本を読んでいた。
窓際の颚通しの良い垭で、時折、倖を眺めおいた。
普段の様子ずは違っお、
この垭では、ずおも穏やかに芋えた。

い぀も厳しい顔をしおいた圌女。

遠くから、目を合わせようずしおも避けられる。
声を掛けたくおも、目の前にするず胞が匵り裂けそうで息ができなかった。
どうにか、圌女の暪に立ちたくお努力をした。
笑顔を絶やさず、圌女に芋おもらえるように。

本圓だったら、圌女は今ごろ船に乗り、隣囜にいるはずだった。
蚈画は、倧人顔負けに綿密なものだった。
倱敗した時の察策もされ、商瀟やギルド、他の取匕先にも亀枉を枈たせおいた。

買収するのは、䞀苊劎だった。

䞀番邪魔だったのは、圌女の隣にいる぀もりの階士だ。
ずりあえず生かしおおけば、圌女は俺を嫌わないだろう。

あずは、ゆっくりず甘やかしおいけばいい。

勀勉な圌女が、

堕ちるたで。



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