芋出し画像

ひずひら 第八話

出䌚い

月日 AM815

巚朚から舞う癜い花を、呆然ず芋䞊げる。
立ち尜くしおいるず、
朚の埌ろから、小さく草朚の䞊を螏む音がした。

身構えお、無意識に腕に抱くノアを匷く抱きしめる。

ノアの尻尟が私の顎の䞋を撫でおくれる。
巚朚を芋぀める。

突劂、ひょこっず根のずころから、
真っ癜なうさぎが顔を出す。

  こんなずころに、うさぎ

でも䞍思議ず、
「いるはずがない」ずは思わなかった。

猫ずいい、うさぎずいい、
  ここは、もふもふ倩囜

少し幞せな気持ちになりながら、
あちこち飛び跳ねるうさぎを目で远う。

じっず芋おいるず、ノアの尻尟が私の頬をやさしく叩いた。
腕の䞭のノアを芋るず、
「ミャヌ」ず鳎いお、私にすり寄っおくる。
  䜕これ。
胞がきゅっずなる。
思わず、ノアの頭にキスを萜ずすず、
森の奥ぞ消えた。

「あ  ノア」

䞀瞬の出来事に呆気に取られおいるず、
足元でうさぎが私を芋䞊げおいた。
人間ずの距離が近すぎる。
それでも、赀い瞳から目が離せない。

「あなたはどこから来たのここに䜏んでるの」

  それずも、誰かに飌われおいたのか。

ここは、そんなに広い森だったのか。
すぐに海に出られる堎所だず思っおいた。
党く逃げる様子のない、うさぎ。
膝を぀き、手を䌞ばすず、ぎょんず近づいおくる。

  嘘みたい。

ふさふさの毛を撫でながら、
小さい頃に動物園で抱っこさせおもらったこずを思い出す。

「やっぱりニンゞン食べるのよね」

私はポケットに手を入れ  たた、スマホを家に眮いおきた。

逌の䞎え方を調べたかったのに。

ため息を぀くず、うさぎを抱っこしお立ち䞊がる。

蟺りを芋枡すず、ガサっず音がする。

「ノア」

苊笑しながら、呌びかける。

少しするず、ノアが䜕もなかったかのように顔を出す。
近づこうず、巚朚の根の近くたで歩くず、
䜕かが芖界に入る。

  スマホだ。

背筋が凍る。
根の䞊に眮かれたそれを、ゆっくり拟い䞊げる。
するず、画面が消えおいるこずに気づく。

ヒビの入った、私のスマホだ。

詊しに電源を入れたけど、
残念ながら充電がないようだ。

  ずいうこずは、

「ここは未来」

私は蚘憶を蟿っお、昚日のこずを思い返した。

さっき、泉に觊れた時に、あの眩暈がした。

  たさか、ね。

そう思いながらも、心はざわめく。

「  充電したいな。」

䜕か分かるかもしれない。

そしお、今、自分が䜕も持っおいないこずを思い出す。
戻っおも、あの女性が䜏んでいるかもしれない。
町で充電噚を借りるにも、買うにもお金がない。
芪しい知り合いもいないし  。
絶望的な気持ちになりかけた時、
うさぎがぎょんっず腕から降りる。

「あっ 」

私は驚いお、うさぎの埌を远った。
うさぎは巚朚の裏ぞ回るず、
根元から湧き出る泉のたわりを、くるりず䞀呚した。

たるで「こっちだよ」ずでも蚀うように。

そしお、ぎょん、ず䞀床だけこちらを振り返っおから、
流れの先ぞず駆け出しおいく。

「  埅っお」

私は慌おお埌を远った。
泉はすぐに现い小川ずなり、森の奥ぞ続いおいる。
昚日は、こんなふうに続いおいるようには芋えなかったはずなのに。

歩くに぀れお、
空気が少しず぀倉わっおいくのが分かった。

朚々の匂いに混じっお、
どこか湿った、朮を含んだ颚が頬を撫でる。

遠くで、かすかな音がする。

葉擊れずは違う、
氎が砕けるような、䜎い音。

「  海」

思わず口に出すず、
うさぎはぎたりず足を止めた。

䞀床だけ、こちらを振り返る。
赀い瞳が、じっず私を芋぀めおいる。

――本圓に、来るの

そう問いかけられおいる気がしお、
私は無意識にノアを抱きしめた。

ノアは䜕も蚀わず、
ただ、私の胞元で小さく喉を鳎らす。

「  倧䞈倫だよね」

誰に向けられた蚀葉かわからないたた、
私は䞀歩、螏み出した。

朚々の間が、ふっず開ける。

その瞬間、
芖界いっぱいに、真っ青な色が広がった。

「  うわぁ」

森の䞭心だず思っおいた、その先に、
癜い砂浜ず、どこたでも続く海。
波は穏やかで、
朝の光を受けお、きらきらず瞬いおいる。
怖い、ず思うより先に、
胞が、すっず軜くなった。

  来おしたった。

感慚に浞っおいるず、
埌ろから、
ひょい、ず重みを感じる。
「わっ」
ノアが私の肩に飛び乗った拍子に、
よろけお、その堎に尻逅を぀いた。

「  いたた」

目の前には、
ちょこんず座る癜いうさぎ。
じっず、
私の顔を芋䞊げおいる。
逃げる様子も、怯える様子もない。

私は、はっずしお、手に持っおいたものを芋る。

「  スマホ」

ノアが、尻尟で私の手を぀぀いた。

小川に浞かっおいたらしい。

  壊れる。

慌おお匕き䞊げるず、
画面が、ふっず明るくなった。

「  え」

充電、1
確かに、点いおいる。

4月2日 AM 8:45

埅受は私の奜きな海の颚景。
芋芚えのない画面だった。けれど、私らしい。

ずっさにカレンダヌアプリを開いお、
幎月を確認する。

――20××幎

党身から血の気が匕く。
  どうしお。

――五幎埌だった。

昚日は、十幎埌だったのに。
五幎埌  
この時、私はただここに䜏んでいるのだろうか。
それずも  

震える身䜓にぎずっず、ノアずうさぎがくっ぀いおくる。

目頭が熱くなる。
私は二匹をぎゅっず抱きしめた。

立ち䞊がっお、スカヌトの泥を払う。

ログハりスの様子を芋おこよう。
もし――

「もう䞀人の私がいたら  」

䌚わない方がいい、っお聞いたこずがある。

腕の䞭の動物たちに目を向ける。

ノアは「ミャヌ」ず蚀い、
うさぎは私の胞ですんすん匂いを嗅いでいるようだ。

「  そうだよね。」

私は、海を背に森ぞ歩き出す。

癜い花は芋えなくなっおいた。
――そしお、スマホの充電も消えた。







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