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【ショヌト】 雚の䞭の声

―― short story ――

どしゃぶりだった。
垃袋を頭に乗せお、ぬかるみの䞭を走る。
昚日、隣町で新調した革靎はもう重たくなっおいた。
匷い颚で朚々が擊れ合う音も、
暗い雲から萜ちる痛いくらいの雚の音で、党く聞こえない。
  数分前たでは、倪陜が芋えおいたのに。
ふず、足をスラむドさせお止たる。
泥氎が顔に撥ねた。
  ぀いおない。
森の合間から、狌に矜を぀けたような魔物が珟れる。
すかさず森の朚の圱に走ったが  気付かれた。
腰に觊れるず、朚の幹の窪みに足をかけ、飛ぶ。
朚の枝を反察の手で掎むず、勢いのたた回転し、枝の䞊に乗る。
衝撃が朚を揺らす。
息を吐く。
そのたた魔物の䞊に飛び降り、剣を振り䞋ろした。
鈍い音。
飛び散る飛沫。

断末魔が森にこだたする。

スッず剣を匕き抜くず、巚䜓が倒れる。
黒い血がべっずりず剣に぀いたのを芋お、振り払う。
返り血が、肌に気持ち悪い。
雚が流しおくれるのを期埅しお、垃袋を持ち盎し螵を返す。
  ただ、いるな。
走りながらも、心でため息を぀く。
仲間がやられおお怒りのようだ。
思い盎し、垃袋から垃地を出しお、剣を吹くず鞘に収める。
走り出すず、背埌に耇数の魔物の気配。
そしお  
なんだろう。
䜕か、感じたこずのない気配がした。

――こっち。

「  」

呚囲を芋枡す。

䜕もない。

足は止めない。走り続ける。
魔物の気配が匷くなる。
勢いを぀け、䞊空ぞ飛ぶ。
䞉匹いる。
雚のせいで、赀い瞳が爛爛ず光る様しか芋えない。

――こっち  

先ほどよりも鮮明に聞こえる。
地に降りるず、魔物たちに背を向ける。
気配が背埌に生たれる。

口で呪文を詠唱する。
途端に地が揺れた。

響いたのは、魔物たちの悲鳎。
地面が厩れ、鋭い刃が魔物たちを䞲刺しにする。
気配が消えるず、そのたた歩く。

朚々の隙間を進み、草を螏む。
芖界が悪い。
次第に、開けた堎所に出た。

䞭心に切り株ず  
切り株の埌ろに、小さな少女が隠れおいた。

「  呌んだのは、あなた」

声を掛けるず、䜓を震わせ、ゆっくりず仰ぎ芋る。

「お姉ちゃん、だれ」

「あなたが呌んだんじゃないの」

「私が呌んだのは  」

その時、地が揺れた。
  長い。
立っおいられず膝を぀く。女の子は切り株にしがみ぀いおいた。
地の底が倉圢し、次第に巚倧な土の塊になっおいく。

「  げ」

思わず、䜎い声が出る。
アンデットの竜だった。
嫌な匂いが広がり、垃で錻を芆う。
ふず、震える女の子を芋る。
この子は切り株から動けないような気がした。
私は前に出るず、玠早く剣を取り出し、剣の刃先に手をおいた。
肌がビリビリず痛い。
息を吐く。
刃先から指先たで青癜い光が生たれる。
アンデットの竜が埌ずさる。

「お姉ちゃん  」

呟く声を耳にしながら、竜の右偎ぞ玠早く走り、翌を切り付ける。
錓膜が砎れそうな悲鳎が響き枡る。
思わず耳を塞ぎたくなるのを我慢しお、䞊空ぞ飛ぶ。
地響きが぀いおくる。
唞る尻尟が私を目掛け飛んできお、避けきれずに腕を掠めた。
焌けるような痛みに眉を寄せる。
䞀床、地に戻る。
そのたた走り、尻尟を切るず、壊れたような咆哮が広がる。
翌が前方ぞ抌し出されるず、匷い颚に吹き飛ばされそうになる。
  錻がもげそう。
もはや垃が効果を果たさない。
終わりにしたい。
私は、剣に集䞭する。
詠唱しながら竜ぞず駆け走る。

「はっ」

剣ず青癜い光を暪に䞀閃させる。
竜が歪み、暪倒れになるず地響きが起こる。
そしお、光に包たれるず、䞭心から浄化されお消えおいく。
膝の力が抜けるず、今曎ながら吐き気に襲われる。
䌝う汗ごず垃で顔を芆う。

「  う」

気持ちの悪さず戊っおいるず、埌ろに小さな気配が近づく。
振り返りたいが、それどころじゃない。

「  お姉ちゃん、聖女様だったんだね  」

心底心倖そうな声は聞き慣れたものだった。
私は地面に腰を䞋ろすず、倧きく息を吞った。
蟺りから腐臭が消えたお陰で、少し楜になる。

「こんな血たみれの聖女様っお初めお芋たから」

随分ずはっきりものを蚀う。
  たぁ、いいけど。

「助かったわ」

急に倧人びた声がしお、振り返る。
女の子は、い぀の間にかずんでもない矎女になっおいた。

「困っおたのよ。あの竜の魔物は森を腐らせるから  」

憂いを垯びた瞳が私を芋る。
私の額に、圌女の䞭指が觊れた。
途端に䜓から䞍快なものが党お消えた。
雚で湿った服、こびり぀いた魔物の血、止たない雚も匟いおいるようだ。

「  これはいい」

呟きに、笑われる。

「぀いでに浄化しおくれない」

指の先を芋るず、切り株だった。
  そういうこずね。
合点がいくず、剣を地に差し、柄を握り締めた。
膝を地に぀き、目を閉じる。
息を吐くず――祈った。

どうか、この地に安らぎを。

青癜い光は切り株を䞭心に呚囲ぞ広がる。
次に目を開けるず、巚倧な朚が聳え立っおいた。
  でか。

「あぁ、うれしいこず」

圌女が舞い螊り、朚の幹に抱き぀く。
頭䞊だけ、雚が止んでいた。
差し蟌んだ光に、
濡れた葉がきらきらず揺れる。

「ありがずう、聖女様」

芖線を戻すず、
そこにはもう、誰もいなかった。


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