【ショート】 マッチョ華道
「華月よ。よいな」
「はい、お父上」
手を揃え、頭を下げる。
衣擦れの音をさせて立ち上がり、障子を開けた。
軋む床の上に膝をつき、障子を閉めた。
明るい日差しが日本庭園を輝かせている。
そのとき、足音が近づいた。
「華月、いよいよ今日だ」
「はい」
庭にいた大柄な兄が、手を差し出してくれた。
大きな手のひらに、細く小さな手を添える。
庭園の中心には、桔梗柄の花瓶が置かれていた。
「お兄様がお運びに?」
「そうだ」
「こちらの花瓶、二百キロもあるのでしょう」
「この日のために鍛えたのさ。我が家に代々伝わる花瓶だ。今日、お前が花を生ければ、晴れて成人となる」
「はい」
午前十一時、来賓が集まった。
私は赤い絨毯の上に正座し、父の挨拶が終わるのを待つ。
父の合図で、花を一本差した。
続いて二本目を差し、手を止める。
花ではない。
花瓶が中央から少し左へ寄っている。
私は両手を添えて、花瓶をひょいと持ち上げた。
静まり返る庭で、
父は兄ではなく、私の肩に手を置いた。
(410文字)
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