
エッセイ|別れの季節
直属の上司が退職した。いつも朗らかな、気働きの人だった。温厚でこまやかな人柄と実直な仕事ぶりは多くの人の信頼を集めた。長年勤め上げた会社を定年退職するこの日、彼女はシックな着物に身を包み、私達の職場に現れた。本社での退職発令を終えたその足で、最後の別れを告げるために。ピンと背筋を伸ばして退職の挨拶をする上司を前に、地道に努力し続けた彼女の積み重ねた年月を思った。
4月の人事異動を目前に控えた3月は、別れの季節だ。長いこと机を並べた職場の仲間と、離れることになるのはやはり寂しい。社会人となって久しいけれど、この気持ちは依然として変わらない。繁忙期ゆえ感傷的になってばかりもいられないのだが、それでも胸にこたえる。別れがあるからこそ、また新しい出会いがあるのだと人は言う。頭では理解しているつもりだけれど、一方の感情はそれほど聞き分けがよい訳ではなくて。
上司の晴れ晴れとした笑顔を前に、なんだかちょっぴり泣きたくなった。
* 2001/3/30記(2025/4/29公開)
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日常の中の気づきや、ちょっとした心のつぶやきを綴っています。
別れの季節は、どうしてこんなにも胸にこたえるのだろう。
泣きたくなる気持ちに、理由なんていらないのに。
言葉にならない感情も、黙ったまま抱えている想いも、そっとそのままでいられる時間──。
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