
都会の音楽と、私のウィンカー
都会のスピードと、私の心地よいリズムはちょっとだけ合っていない。
でもたまに、最初はズレていた車内の音楽とウィンカーのリズムが途中一瞬合うように、ピタッとハマる時もあるのだ。
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都庁から新宿西口に向かう通路。綺麗な真っ白空間で気持ちがいいし、心なしか空気も綺麗な気がする。そんなはずはないけども。
あちこち見ながら改札に向かって歩くと、次から次へと人に追い越されていく。私の歩く道以外、全部動く歩道でできてるみたいだ。
みんな大きな歩幅を回転させて、一直線にずんずん進む。それを「わぁ」と見ながら、背中の後ろで指を絡めてぷらぷら歩く。お邪魔になってたらごめんなさいね。
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兄の家に帰ると、「もう動けねぇ~」とソファに溶ける兄がいた。2人の夕飯にwebで頼んだ吉野家の鰻重を、まだアドレナリンが出ている私が取りに行った。
お渡し時間は22:10。
3分で着くけど、のんびり行きたいので7分前に家を出た。
夜の湿った冷たい空気に、仕事後すぐ解いた髪が少し揺れる。この街の人は、まだ眠らないんだな。仕事終わりの社会人カップル、とてつもなく幸せそう。パチンコ屋に負けず劣らずなドラッグストアの光漏れ。
ゆっくり歩いて、22:09に着いた。1分早く着いちゃったけど、カウンターの向こうにビニール袋に入った弁当が2つ重なっている。
私たちのだ!
お腹すいたなぁ~とご機嫌顔で待っていると、奥から「お待たせしました!」とお兄さんが走ってきて、急いで渡してくれた。
(お兄さんのペースを崩すまい…!)とささっと受け取り、遅くまでありがとうございますの気持ちを込めて、ふふっとペコっと礼をする。
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温かいお弁当、袋を覗くと山椒と七味、紅生姜も見える。こりゃお疲れの体に沁みそうだ。
袋から顔を上げると、目の前の歩行者信号が点滅を始めた。チカチカ、2回点滅。
まぁいっかと足を止めると、その隣をスーツのおじ様と、ヘッドホンをしたお兄さんが走って渡って行った。赤信号2秒前、見事にセーフ。
そうか、走れば間に合うのか。でもいいやぁと、ポケットに入れたままだった香水の試香紙2枚を取り出して、パタパタと嗅いでみる。
あぁ。夜の都会、マクドナルド前の信号なのに、ジャスミンとネロリの混ざった爽やかな香り。ミスマッチなのに、当分忘れそうにない。
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この街のスピードと、私の心地よいリズムは、やっぱりちょっとだけ合っていない。
それでも不思議と、「そちらのペースもよいですねぇ」「たまに私たち、ぴったり合いますよね」と思えた。都会の街も、きっと私にそう思っているんじゃないかな。
「そういう事なら、いつか都会暮らしでもしてみようかしら」と、新たな私の行く先がほんのり香った、兄家での居候生活ウィーク。
兄にそれを話そうと考えながら玄関の鍵を開け、「いただきます」をした頃には山椒の香りで忘れてしまった。