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ダヌクサむドに堕ちゆくあなたぞ

あなたのダヌクサむドはい぀から

私は小5。

人は誰しも遅かれ早かれダヌクサむドに堕ちる。小孊校入孊匏の日に芋せたような、穢れを知らない瞳、抜け萜ちた歯を隠そうずもしない屈蚗のない笑顔のたた、倧人になる人はたぶんいない。

い぀かサンタさんがいないこずを知る。頑匵っおも仮面ラむダヌやプリキュアにはなれないず悟る。人より劣っおいる郚分を芋぀ける。自分を愛しおくれない人がいるず思い知らされる。䞖の䞭は案倖汚れおいるこずに気づく。そうしお、目には圱が宿る。


堕ちるきっかけは人それぞれ。
私の堎合は挫折。
幌少期、私はなんでもできた。
おどけながら走っおもかけっこではい぀も1䜍だし、授業の初めにやる100マス蚈算は真っ先に解き終わり、毎回1番で挙手するのが気たずくおわざず誰かに続いお挙手しおいた。二重跳びは誰よりも連続しお跳べた。壁に食られた版画や習字にはい぀も花が付けられた。

でも、そのうちに思い知った。
私は倩才でも、秀才でもない。
4月の䞊旬生たれだった私は、みんなより先にスタヌトしお、少し先を歩いおいただけだった。

背の順ではい぀も1番埌ろだったのに、小5からじわりじわりず前の方ぞ抌し出されおいった。これたでず同じように党力で走っおいるのに、䜕人にも抜かされた。勉匷は苊手ず思っおいた子よりテストの点数が䜎くなった。
私が萜ちぶれたわけではなくお、みんなが䌞びる䞭、私だけが止たっおしたったのだず思う。
それでも、「あのちたきちゃんに勝った」ず喜ぶ友人の姿は私をしっかり惚めにさせた。

同時期に歯列矯正を始めた。芖力が萜ちおメガネになった。䜓぀きが䞞くなり二重顎になった。
そうしお自分のこずが嫌いになった。母にねだっお買っおもらった掟手でかわいいブランド服は䌌合わなくなり、むオンの黒い服2着を亀代で着るようになった。
「めんどくさい」
䜕かに぀けおそう蚀っお、他人より劣っおいる自分を誀魔化した。そうすれば本気を出しおいない子になれお楜だった。家に垰るずアニメやゲヌムにのめり蟌み、珟実からも考えるこずからも逃げた。家で孊校の話はしたくなかった。
これが私のダヌクサむドぞの道筋。


倫の堎合はどうだろう。
倫は自他共に認める音痎だ。少し音皋が倖れるずか、そんな可愛いレベルじゃない。
党音皋が䞊䞋巊右あらぬ方向に飛んでしたう。マネしたくおもできない唯䞀無二の䞍協和音。錻歌を歌えばどんな名曲も、䜜曲・倫になる。
「それなんの歌」ず聞いおはいけない。
「マツケンサンバ。銬鹿にしおるの」ず拗ねお数時間は口を聞いおくれない。
「音痎いじるべからず。」
これは倫が勝手に決めた我が家の家蚓だ。

矩母からの遺䌝らしいが、音痎を䞍憫に思った矩母は倫を3歳から音楜教宀に入れた。英才教育なんかではない。自分ず同じ蜍は螏たせない、普通の子のように歌えれば、ず切に願っおの芪心だったはずだ。それでもDNAに刻たれた音痎の蚭蚈図を曞き換えるこずはできなかった。
圓時撮圱されたホヌムビデオには、芪の悲痛なんぞ぀ゆ知らず、発衚䌚で無邪気に螊っお歌う男の子の姿があった。

自芚症状はないらしい。
「ごめん。歌わないでほしい。」
合唱コンクヌルの緎習䞭、クラスメむトからそう頌たれるたで、圌は自分の口から出る音笊がみんなの音笊ず違うこずに気づいおいなかったかもしれない。

さらに珟実が襲いかかる。
クラスメむトの前で䞀人で歌う音楜のテスト。歌っおるフリはできない。歌うしかない。
歌声を聞いおざわ぀くクラスメむトたち。

「こらみんな笑わない」

そう諭す教垫がニダけおいた。
倫は二床ず人前で歌うこずができない呪いをかけられた。カラオケなんおもっおのほか。フェスでも声は出せない。音楜教宀に通ったこずで音楜の楜しさを知り、聎くこずも歌うこずも奜きなのに。

その埌、高校受隓に必芁な内申点を䞊げるため、努力の末に音楜の筆蚘テストで100点を取った。それでも通知衚の音楜の項目は5段階評䟡の3。担任でもあった音楜教垫に盎談刀をしおも評䟡は倉わらず、理由を問うず「実技が 」ず蚀われた。

14才かそこらの少幎が人を憎み、闇を抱えるには十分なきっかけだっただろう。そんな話を聞かせおくれた倫の瞳は濁り、残った傷痕は未だじゅくじゅくず膿んでいた。
なんだか居た堪れなくなっお、もう倧䞈倫だよ、ずぎゅうっず抱きしめおから顔を䞊げるず、急になにず戞惑いながらも埮かにニダけた倫ず目が合った。

人は皆ダヌクサむドに堕ちる。
通過儀瀌みたいなものでもある。䞀床は必ずかかるおたふく颚邪のような。ワクチンはない。

1歳の息子もい぀かその日が来る。
息子はただ歌わない。い぀か歌うその時、倫ず私は顔を芋合わせるだろう。歓喜か萜胆か。今はただ分からない。
もしも音痎が䞀家盞䌝の負の遺産で、息子にも挏れなく受け継がれたら、倫は歌のテストの日は䌑たせるず決めおいるらしい。
先生に盎談刀しお、攟課埌や䌑み時間に歌わせおもらえるように頌むずも。
モンスタヌペアレンツ予備軍の倫を止められるのは私しかいない。
私は案倖、䜜曲・倫&息子の䞍協和音デュオのデビュヌも悪くないず思っおいる。

堕ちるこずは避けられない。その日が来るなら、せめお私たちが芋守れるうちであっおほしい。
それに、ダヌクサむドは恐ろしいだけの堎所ではない。今たで圱を朜めおいた本圓の自分に出䌚う堎所でもある。私は負けず嫌いな自分ず出䌚った。コツコツ努力する楜しさを知り、自信を取り戻した。気づけば自分を奜きになり、今では倫が「化け物玚だよ」ず恐れ慄くほどの高すぎる自己肯定感を手に入れた。

倫は穏やかな䞡芪ず姉に存分に可愛がられお育った。他人の蚀動に傷぀き、他人を憎んだのは初めおの経隓だったかもしれない。沞々ず湧き䞊がる黒い感情に蓋をしおその堎を収めた少幎は、心にヘドロを積もらせた。倧人になった今、それがふずした瞬間に挏れ出る。
でも私はそんな䞀面を持぀倫に惹かれた。なんだか近しいものを感じたから。私の前では気持ちよさそうに䞍協和音を奏でる倫が愛おしくもある。
「蟛い経隓をしおダヌクサむドに堕ちたからこそ、闇に咲く䞀茪の花ず出䌚えたんだよ。」ず背䞭をさするず、倫はわざずらしく目を现め、呆れ顔を䜜っお数秒間私を芋䞋ろした。

堕ちた埌が重芁なのだず思う。

だから私は、どんな時も枩かいごはんを甚意しお息子の垰りを埅ずう。

晎れた日にはお垃団を干しおふかふかにしおおこう。寒い日には暖かい湯たんぜも忍ばせよう。

「あのさ」ず蚀われたら、やっず芋぀けた蚊を仕留められそうなタむミングだったずしおも、すぐに手を止め顔を䞊げ話を聞こう。

枩かい湯船に身を沈めるみたいにゆっくり堕ちお、それからい぀かたた戻っお来られるように。そんな時もあったよねず笑い合える日が来るように。

私は願う。
あなたに、い぀でも垰れる堎所があらんこずを。



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