
カフェのおと|にんじんとバナナの昼下がり
昼のキッチンは
まぶしいくらいにキラキラと明るくて
窓から入る光に迷いを感じない
キッチンテーブルの上に
洗ったにんじんを並べ
乱切りにしていく
ゴロゴロッと
フードプロセッサーのなかにいれたら
蓋を閉める
溝にピタッとハマったときに鳴る
カチッという音を確認し
スイッチをON
ガッガッガッとリズムよく刃がまわり
あっという間に鮮やかな色がほどけていく
さっきまで一本のかたまりだったものが
積もりはじめた雪のように
細やかでやわらかい姿へと変身する
別のボウルで
完熟したバナナをマッシャーでつぶす
果肉がくたくたと崩れていくたびに
甘い香りがふっと立ちのぼる
そこへにんじんを合わせると
やさしい色が重なって
昼の光によく似合う
粉を加えてシリコンのヘラで混ぜる
サクッ、サクッと
にんじんがすべての材料を抱え込む
小さな音を奏ではじめる
混ぜすぎないように
でも不足しないように
加減を見ながら手を動かしていると
余計なことを考える隙がない
型に流し入れて
台にトントンと軽く落とす
オーブンに入れてドアを閉めると
昼のキッチンが少しだけ静かになった
ほどなくして
甘い香りがゆっくり広がりだすころ
彼はちょっぴりソワソワしだす
おいしいものがつくられているに違いないと
ちゃんと知っている顔をしている
焼き上がったミニケーキは
まだ熱を残していて
触れるとほのかにあたたかい
昼下がりに
こんな小さなおやつがあるだけで
今日という日が少し整う気がする

『カフェのおと』
何気ないことをつづる場の「note」、自由に記録する物理的な「ノート」、『For Two Café』で聞こえる「音」
これらの意味を込めた”のおと”です