アン君から教わった、さつまいも春雨と和牛の韓国チャプチェ たっちー男の料理編#3
久しぶりにカルディに行ったとき、さつまいものでん粉から作った韓国春雨を見つけた。
あの太くてムチッとした春雨を見ると、大学時代の友人を思い出す。
麻雀とギャンブルが好きで、料理が上手かった韓国人留学生のアン君だ。
大学生の頃、美術部とは別に、僕は麻雀ばかりしているようなサークルにも顔を出していた。
そこで知り合ったのが、韓国から留学していたアン君だった。
僕より4つくらい年上。
韓国の徴兵制度で陸軍に行ったあと日本に来たらしい。
185センチくらいの長身に短髪。鋭い顔で、首には太めのネックレス。
見た目だけなら、ちょっと怖い。
でも実際は愛嬌があって、いつも冗談ばかり言っていた。
麻雀で僕がアン君からアガると、
「タッチ~、ナニやってんだヨ。いい加減にしろヨ~!」
少し癖のあるイントネーションで笑う。

競馬も、パチンコも、パチスロも好きだった。
そしていつも、
「単位、ヤバイヨー」
と言いながら、また麻雀卓に座っていた。
たぶん、本当にヤバかった。
そんなアン君は、人には妙に優しかった。
彼女と同棲するため留学生専用のアパートを出るときには、
「タッチ~ 家賃いらないから、住んでイイヨ~」
と僕に部屋まで貸してくれた。
そしてアン君は、料理がうまかった。
軍隊時代にも炊事を担当する調理兵の経験もあったそうだ。

そのアン君に教えてもらった料理のひとつが、韓国料理のチャプチェだった。
特に覚えているのが春雨だ。
日本の細い春雨とは違う。
さつまいものでん粉から作られた、太くてコシのある春雨。
ツルッとしているのに、噛むとムチッとする。
あの食感だけは、何年経っても覚えていた。
先日、久しぶりにその春雨を見つけた。
だったら作ろう。
たっちー男の料理、韓国チャプチェ編である。

今回使うさつまいも春雨は、乾燥で100グラム。
袋の表示どおりに茹で、ザルにあげて水気を切っておく。
長ければ、食べやすい長さに切る。
今回は牛肉もケチらない。
スーパーで値段を見て一度通り過ぎ、それでも戻って買うくらいの国産和牛を200グラム。
チャプチェにそこまでの肉が必要かと言われれば、たぶん必要ない。
でも今日はいる。
和牛の脂と肉汁を、あの春雨に吸わせたい。

玉ねぎ1/2個、にんじん1/3本、しいたけ3枚、ほうれん草1/2束、長ねぎ1/2本を食べやすく細切りにする。
タレは、しょうゆ大さじ2、砂糖大さじ1と1/2、酒とみりん各大さじ1。
そこへ、おろしにんにく、ごま油。
そして隠し味にオイスターソースを小さじ1だけ。
入れすぎない。
味を変えるのではなく、和牛と春雨の間に少しだけ旨味を足す。

フライパンを熱し、和牛を広げる。
ジュッと音がする。
脂が溶け、にんにくと甘辛いタレが入った瞬間、匂いが一気に変わる。
もう白飯が欲しい。
でも今日は我慢する。
この肉汁を受け止めるのは、米じゃない。春雨だ。
牛肉をいったん取り出し、フライパンに残った脂と肉汁へ、先ほど茹でておいた春雨を入れる。
残りのタレも加えて炒める。

春雨が飴色になり、テカッとしてくる。
そこへ野菜と牛肉を戻し、白ごまと黒こしょう。
完成だ。

まず春雨を食べる。
ムチッ
甘辛い味のあとに、肉の旨味がくる。
次に和牛、
当然うまい。
そして、また春雨。
さっき牛肉から出た旨味を、今度は春雨がしっかり吸っている。
たぶん、アン君が昔作ってくれたチャプチェとはもう違う。
作り方だって、ほとんど覚えていない。
今どこで何をしているのかも知らない。
でも、あの春雨がおいしかったことは覚えている。
「単位、ヤバイヨー」
と言いながら麻雀をしていた顔も覚えている。
食べ終わって、ふと隣の椅子を見る。
もちろん誰もいない。

それでも一瞬だけ、太いネックレスをしたアン君がそこにいる気がした。
僕の皿を見て、
「タッチ~、いい肉ツカイスギダヨ~」
たぶん、そんなことを言う。
僕が「うまいからいいだろ」と返すと、笑いながら勝手に肉を一枚つまむ。
そんな姿まで浮かんできた。

一緒にいた時間は終わっても、味の中には人が残っていることがある。
久しぶりのチャプチェは、かなりうまかった。
隣には一瞬だけ、大学生の頃のアン君がいた。
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※ これ改めて作って思ったんですが、3~4人家族なら戻す前の春雨、
100グラムじゃなくて200グラムで作ってください!
(その時は、醤油やオイスターソース 適宜増やしてくださいね😊)
なぜなら、春雨が美味すぎて、家族で取り合いになるからです😅!!
料理をしていると、味や匂いから、昔の人や出来事をふと思い出すことがあります。
この「男の料理」では、うまいものを作る楽しさと、その料理につながっている人や記憶を、一緒に残していこうと思っています。
昔食べた味。誰かに教えてもらった料理。もう会わなくなった人との何気ない時間。
そんな記憶も、ときどき料理と一緒に書いていきます。
