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​熱視線―ATM物語

    たま

    背中にチクチクと刺さるような熱い視線を感じる。

    4月に入ってやっと免許を取得した末っ子が通勤するのにクルマが必要になった。
    我が家の駐車スペースは2台。
    夫と私のクルマが置いてある。

    駐車スペースを広げようかという案も出たが、そこに投資しても女の子だ。
    いつ駐車スペースが不要になるか考えたらリターンに期待できないとわかり、近所の駐車場を借りることにした。

    初期費用は口座振替ではなく、明日まで振込と言われた。

    私はその紙切れと諸々入ったバッグを小脇に抱えてATMコーナーへと向かったのである。

    雨で濡れた駐車場に車は数台。
    程なくして3台あるATMの1台が空いた。

    [お振込み]ボタンにタッチし、キャッシュカードを飲み込ませた。

    「カードの磁気情報が読み取れません」

    私のカードは時々こうなる。
    鬱陶しいなと小さくため息が出る。

    「カードの磁気情報を再書き込みします。よろしいですか?」

    迷わず[はい]を押す。
    今やるしかない。期限は明日。契約はこれっきりだなんて決して言わせない。

    背後に少しずつ気配を感じる。
    何を怯え、泣きそうになっているんだ私は。

    その後一旦カードが戻され、やれ通帳を入れろ、カードを入れろ、通帳の店番から預金番号、最終行の番号と預金額入れろ…
    じれったいほどの操作をした後は、気配なんか邪魔さ。

    動揺で揺れる瞳に画面は霞む。
    背後の気配、さざめく空気。
    熱い視線つらぬいて。

    気づいてはいない素振りで背を向ける。
    預金のすべてを失くしても、娘のひとときの夢に捧げよう。

    背後に怒れる気配。熱い視線つらぬいて。

    いますぐにあなたの前にATMを譲りたい。
    でも振り込み操作はまだ終わらない。

    背後から熱い視線つらぬいて。

    ATMは無情にもこう言った。
    「もう一度カードをお入れください」 

    嘘が下手なATMだ。

    ……踊ろう。


    #なんのはなしですか




     
     
     

    たま

     
     
    ソロキャンプを愛する、三姉妹の母。 ​末っ子の就職を機に、本格的な自由時間を手に入れました。趣味のソロキャンプでの出来事や、日常に潜む「小さなドラマ」を切り取って書いてます。 キラキラしてません。 ​アイコンは『なまはげ』ならぬ『たまはげ』よろしくお願いします。

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