
【緊急息抜企画:西尾維新先生『十二大戦』あの戦士の内宇宙に寄り添いたい ドンドンパフパフ】 第二回 今回は、「卯の戦士 憂城さん」です。 — 人喰いアミーバの恐怖 —

憂城(うさぎ)という戦士は、人間のかたちをした「アミーバ」だ。
彼は「お友達になろう」と笑顔で近づいてくる。
けれど、彼には「心」も「価値観」も、最初から存在しない。
普通の人なら、良心や人間関係がブレーキになって、残酷なことは躊躇(ちゅうじょ)するものだ。
でも、彼には外界との繋がりが何もない。
失うものが何もない、究極の「無敵の人」だから、どんなことでも一切の躊躇なく、平気でやってのける。
自分の命すらどうでもいいから、失井(うしい)と戦う前には、自分自身すら死体にして操ってしまった。
彼が他者を殺して「お友達(死体)」を増やすのは、彼なりの「復讐」だ。
他人が持っている温かい人間関係や繋がりが許せない。それは彼が奪われたもの、もっていないものだ。
だから、命ごとそれを奪い取り、自分と同じ「人との繋がりを持たない空っぽの存在」に引きずり下ろす。早い話が、全部 喰っちゃう。
そこに愛はない。あるのは、他者をただの便利な道具やパーツとしてしか見ない、冷徹な計算だけだ。
すべてに意味やプライドをかける失井とは、真逆の純粋さ。
心も価値観も持たず、ただ本能のままに周りを溶かして自分と同化させていくアミーバ。
元人間みたいな形をしていただけの怪物が、今日も無邪気な笑顔で、次のお友達を探して蠢(うごめ)いている。
参考:『人喰いアミーバの恐怖』について
『人喰いアミーバの恐怖』は、1958年のアメリカSFホラー映画『The Blob』の邦題。若きスティーブ・マックイーンが主演し、宇宙から飛来したゼリー状の生命体が、人間を飲み込みながら巨大化していくB級SFの古典である。姿を持たず、言葉も理屈もなく、ただ増殖し、捕食し、広がっていくその怪物像は、「人間の形をしているが、人間的な内面を持たない存在」を考えるうえで、憂城というキャラクターの補助線にもなる。�
