
お魚を捌いたらスプラッター
お魚を捌けないのに、素敵な出刃包丁を買いました。
分厚いなまめかしい刃に、素朴な朴 の柄。
一目惚れするなというほうが無理でした。
美しく丁寧な生活に憧れていました。
初めてのお魚は、漁師さん直送にしました。
捌いたことないのに、凝り性。
動画を見て、出来ると確信していたのに、
早く捌かないとダメになるという焦りと罪悪感で、
平常心を失い、めちゃくちゃになりました。
けれど、どうにかして食べないといけない。
とにかく切りまくりました。
そうしたら、捌くじゃなくてスプラッターでした。
料理するときも、半身に下ろすことさえ出来なかったので、
仕方なく塊のまま焼くと、中が生焼けになり、
おいしいというよりは、胃に詰め込む感じになってしまいました。
泣けました。
挙句の果てに、漁師さんに「あのお魚さんたちは成仏できなかったと思います…」なんて懺悔して、迷惑をかけてしまいました。
このころはまだ鱗取り器を持っていませんでした。
スプーンを代わりに使うと、鱗はあらゆる方向に飛び散り、台所中、鱗だらけになりました。
乾いた鱗はまな板やシンクや壁などに貼り付き、一体化しました。
1ヶ月後くらいまで、洗濯機から鱗が出続けました。
あまりのショックに、包丁は封印しました。
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数ヶ月後、また包丁を取り出しました。
他の人の真似をして、鱗取り器や、ジッパーバッグなど買い揃えました。
どうしても、動画に出てくる人たちのように格好つけたかったのです。
毎月1回、10匹ほどを捌き続けました。
お魚を置く位置と、道具の位置を固定。
捌く前に、どういう料理に使うか、捌き方を脳内シュミレーション。
1匹ずつ、お魚としての最後の姿を撮影。
鰓は全部の分をまとめて取っておいて、お出汁に。
胃袋は、消化液があるから、他の内臓とは別にビニールに入れる。
肝臓は、ハラミの上に置いて焼くと、うまく一緒に焼ける。
生ゴミは、ゴミの日まで冷凍保存。
捌き終わったら、ついでに排水口まで掃除。…
3年経ったら、そんなマイ・ルーチンが出来ました。
残念ながら、今も、捌くのは上手くなっていません。
けれど、美味しいお魚をいただけるくらいになりました。
ルーチンと慣れが私を支えてくれている。
いまのところ、これが私の、美しくて丁寧な生活のようです。