
3つのお題(世界ノスタルジー)
🎈お題①:「雨のベーカー街」
🐾お題②:「午前二時の馬車」
⏳お題③:「街灯の下の黒ねこ」

其の夜は、珍しく雨の多いロンドンの街は先程までの雨が上がり歩道の石畳には街灯の光が滲んでいた。
ベーカー街も同じく建物の影が濡れた石畳に張り付いていた。
コッツコッツコッツと規則正しい靴音が近付いて来る。
午前二時の鐘が鳴り、通りの向こうから駆けて来る馬車。
先程の靴音の紳士の傍まで来ると止まり、窓から女性の白い手が伸びて小さな書付けを渡すのが見えた。

俺は街灯の下で街の出来事全てを見ている黒猫。
「うん?滅多に笑わない紳士の顔が緩んでるな。メモは逢引の時間か場所か?
「浮いた噂のない男の口元が...これは怪しいぞ」
俺は、歩きだした紳士の後を付け始めた。
一件の建物に入って行ったが、其の儘、時間は過ぎて早朝の4時半、紳士が建物から出てきた。
「なんだ?女は?と思っていたら、其の儘、紳士はスタスタと港の方へ歩き始めた。
「オイオイ、そっちは逢引には向かないぜ。何処へ行くんだよ」
俺の予感とは全く違う方向へと紳士は歩を進めて行った場所は、水揚げされた鮮魚売り場の有る港だった。
紳士は其処で鱈を一匹購入すると元来た道を引き返した。
「おい、待てよ。俺だとて魚が喰いてえよ。あっ、仕方ねえや此の小さい奴を」と鰯をパクッと咥えると紳士の後を追った。
それで、紳士はベーカー街に戻った。
丁度、時を図ったかのように馬車の蹄がカツカツと音を立てて走って来る。
紳士の傍に止まると中から女性の手が出て魚を受け取り馬車は走り去った。
途端に雨が降り出した。
「なんだ、お使いかよ。天下のホームズさんよ。
魚買いに港までとは洒落に成らねえなー」
「ヤレヤレ、俺も塒に帰って寝るか」
その時「黒猫君よ。御足労だったな。探偵ごっこも程々にな。あばよ」と、紳士の後姿が街角に消えて行った。

片桐みかん様の3つのお題で、64回に参加させて頂きます。
宜しく御願いします。
有り難う御座いました<m(__)m>