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「ネガティブな感情が押し寄せたら実況アナウンサーを降ろしてみる」|俯瞰視点の話

    カモミール


    頭の中に実況アナウンサーを
    ひとり降ろしてみる

    焦る

    怒る

    嫉妬する

    もやもやする

    羨ましいと思う

    こういう感情は
    ときどき少し肩身が狭い

    「そんなことで怒らなくても」

    「人を羨んでも仕方ないよ」

    そんなふうに言われるこ
    ともあるし自分自身でも

    「いい歳して何を
    腹立ててるんだろう」

    と感情が出てきたこと
    そのものを恥ずかしく
    思ったりする

    でも僕は怒りや嫉妬って
    必ずしも邪魔なものばかりでは
    ない気がしている

    たとえば怒りなら

    「そこは踏み込んで
    ほしくなかった」

    とか

    「それは不公平じゃないか」

    とか

    嫉妬なら

    「僕もそれが欲しかった」

    「僕もそこへ行ってみたかった」

    そんなものを拾っている
    可能性がある

    感情が教えてくれることが
    いつも正しいとは限らない
    でも何かに反応したという
    事実くらいは残る

    アラートが鳴ったから
    といって本当におおごととは
    限らない

    それでも

    「何かを拾ったらしいぞ」

    くらいには考えてみても
    いいのかもしれない

    *
    以前本を読んでいて
    面白い方法を知った
    怒っている自分や
    怒っている誰かを
    心の中で実況してみる
    というものだった

    たとえば僕が
    ものすごく腹を
    立てていたとする

    そこで頭の中に
    スポーツ中継のアナウンサーを
    ひとり降ろしてみる

    「カモミール選手
    かなり腹が立っているようです」

    「ここで黙りました」

    「どうやら同じ言葉が
    頭の中をぐるぐる
    回っている模様です」

    …なんだかちょっと可笑し
    ほんの数秒前まで

    「なんでそんなことするかな」

    だったものが

    「怒っている人が
    ここに一人いる」

    に変わる
    怒りがなくなった
    わけではない

    それでも自分と怒りの間に
    ほんの少しだけ距離ができる
    僕はこの感じが面白い

    *
    実況アナウンサーには
    一つ大事な仕事上の
    ルールがあるように思う

    勝手に解説しすぎないこと

    「声が大きくなりました」

    なら実況だけれど

    「あの人は僕を嫌って
    いるようです」

    になるともう推測だ

    「返事がありません」

    は見えていることだけれど

    「無視されたようです」

    は自分がそこに
    置いた意味かもしれない
    実況席から見えていることと
    実況席からでも
    見えないことがある

    これは自分の感情を
    眺めるときにも
    同じなんだろうと思う

    「羨ましいようです」

    までは実況できる

    そのあと

    「どうやら人に
    影響されやすい
    ようですね」

    と解説者まで勝手に
    登場させなくてもいい

    代わりに

    「さて何に反応したのでしょう」

    くらいにしておく
    もしかしたら
    本当は自分も参加して
    みたかったのかもしれない
    認めてもらいたかった
    のかもしれない

    単純に

    「いいなあ僕も欲しい」

    だけかもしれない
    それならそれでいい

    *
    たぶんメタ的に自分を見る
    というのは言葉でいうほど
    簡単ではない
    自分の頭を使って
    自分の頭を外から眺める

    考えてみれば
    少し変な作業でもある

    だから

    「客観的になろう」

    と言われるより
    頭の中に実況アナウンサーを
    ひとり雇う
    くらいのほうが
    僕には分かりやすい

    焦っている

    怒っている

    嫉妬している

    拗ねている

    そんな自分が現れたら
    追い出す前に深呼吸でもして
    実況席から少し眺めてみる

    「おや今日はずいぶん
    反応していますね」

    「何か大切なものに
    触れたのでしょうか」

    そのくらいでいい

    感情はこちらに命令している
    わけではない
    感じたからといって
    そのまま行動しなければ
    ならないわけでもない

    ただ
    何かを知らせに来た通知
    くらいに思ってみる。

    通知を開くか
    あとで読むか

    「これは誤検知かな」

    と閉じるか
    決めるのはそのあとでいい
    そして今日も頭の片隅では
    僕専属の実況アナウンサーが
    マイクを持っている

    「おっとカモミール
    突然落ち着きを失いました
    焦っているようです」

    …はいはい

    それでは何に反応したのか
    ちょっと聞いてみることに
    しましょうか

    こんな余裕はありませんでしたが
    先日スマホをお洗濯してしまった
    時はきっとこんな感じだった
    ような気がします😊

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