
Kisekiの星-Ⅵ:黄金色の海原ー9
見えない圧力や歪んだ価値の中で、
本当に力のある人ほど声を失っていく世界。
その現実に違和感を持った八人が、答えを求めて歩き出す。
Ⅵ 黄金色の海原
第九章 『青い鳥』
黄金の光は、
空高く立ち昇っていました。
誰もが見上げています。
王も。
兵士も。
農夫も。
子どもも。
老人も。
国境を越えて。
敵も味方も関係なく。
ただ一つの光を。
その時。
黄金の海が大きく揺れました。
轟音。
大地の奥から響くような音。
そして。
海の中央で、
何かが姿を現します。
最初は、
海底火山が噴き出したのかと、
けれど違いました。
それは岩でした。
巨大な岩。
黄金色に輝く、
信じられないほど大きな結晶。
人々は息を呑みます。
「なんだ……あれは。」
「島か?」
「違う……」
シナバーは見つめていました。
胸の星のかけらが震えています。
まるで、
再会を喜んでいるようでした。
コーラルが呟きます。
「そういうことだったのか。」
アンデシンも静かに頷きました。
「ずっと探していたのにな。」
ラリマーは涙を浮かべます。
「私たち……」
バライトが続けました。
「ずっと外を探していました。」
アンバーは光を見つめています。
「消えた『星の貴石』を。」
モリオンは静かに笑いました。
「しかし。」
「最初からここにあった。」
アゲートも頷きます。
「私たちの足元に。」
その瞬間。
九つの星のかけらが空へ浮かびました。
人々が驚きます。
黄金の光。
九つの欠片。
それらが巨大な結晶へ向かいます。
すると。
結晶が応えるように輝きました。
世界中が黄金色に染まります。
そして。
人々は見ました。
幻ではありません。
記憶でした。
遥か昔。
まだ国もなく。
王もなく。
争いも少なかった時代。
人々は、
この星を
「貴石の星」
と呼んでいました。
命を育む星。
知恵を育む星。
心を育む星。
そして。
人と人を繋ぐ星。
ところが。
文明が発展します。
人々は豊かになりました。
便利になりました。
強くなりました。
その代わり。
自分たちが星に生かされていることを忘れていったのです。
星は、
所有するものではありません。
国も。
土地も。
資源も。
本来は、
ほんの少し借りているだけでした。
けれど人々は、
自分のものだと思い始めました。
そして。
奪い合いました。
争いました。
支配しようとしました。
その結果。
貴石の力は失われ、
星の記憶も忘れられてしまったのでした。
その時。
黄金の結晶から、
優しい声が響きます。
『ありがとう』
誰もが聞きました。
『思い出してくれて』
『あなた達の起原を』
『この星の軌跡を』
『この星は』
『誰のものでもなく』
『共に生きる者たちの場所』
『どうか忘れないで』
黄金の光が広がります。
裂けていた大地が静まります。
吹き上がっていた光が収まります。
揺れが止まります。
でも、完全には戻りません。
崩れた街もあります。
ひび割れた地面も戻りません。
傷ついた人々もいます。
けれど。
人々は理解しました。
次は、
自分たちで築かなければならないことを。
その頃。
遠くの空。
誰かが叫びます。
「あれを見ろ!」
空を横切る光。
一筋。
いや。
何本も。
それは巨大な飛翔船でした。
ロケットにも似た乗り物。
この混乱の中。
別の星へ向かう船。
王たちでもありません。
兵士たちでもありません。
人々を助けていた者たちでもありません。
膨大な財力。
技術。
権力。
それらを持つ者たちでした。
「逃げるのか。」
誰かが呟きます。
モリオンは首を振りました。
「まだ分からない。」
「だが。」
「確かめる必要がある。」
その時。
九つの星のかけらが再び降りてきます。
そして。
八人の手の中へ。
カザニアの胸元へ。
再び収まりました。
その瞬間。
声が響きわたります。
『ジェ夢たちよ』
『次の旅へ向かいなさい』
『あの星へ』
八人は顔を見合わせました。
そして笑います。
アンバー。
ラリマー。
バライト。
コーラル。
アンデシン。
アゲート。
モリオン。
シナバー。
遠くで。
カザニアも微笑んでいます。
その時。
彼らを包むように、
巨大な風が吹きました。
「間に合ったぜ。」
聞き慣れた声。
バーユでした。
空飛ぶ馬車。
けれど、
地上は以前とは違います。
磁気の石畳はありません。
浮遊する館もありません。
文明は大きな傷を負いました。
バーユは笑います。
「だがな。」
「風はまだ吹いている。」
「それで十分だろ?」
皆が笑いました。
「空にも大きな流れはある」
馬車へ乗り込みます。
眼下に故郷の星が遠ざかります。
黄金の海。
輝く結晶。
そして。
星全体を包む光。
その時。
シナバーが呟きました。
「私たちは。」
「ずっと星の貴石を探していた。」
アンバーが続きます。
「でも。」
ラリマーが微笑みました。
「探していたものは。」
モリオンが空を見上げます。
「最初から。」
全員が故郷星を見つめました。
「あの星そのものだった。」
「幸せの青い鳥は、そこにいたんだ」
黄金の光が、
まるで応えるように輝きます。
それは。
『貴石』でできた星。
『奇跡』を育む星。
人々の『軌跡』が刻まれた星。
彼らの故郷。
『貴石の星』 でした。
そして。
八人の光は、
兄弟星へ向かって、
再び旅立っていったのです。
もう一つの光がそれを見守っています。
貴石の星とともに。。。