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「俺の判断が、俺より先に働いている」という恐怖

    小説を書きながら、この一行を書いたとき、少し手が止まったの。

    怖かったから。


    近未来の東京に、HKSという制度がある。

    ヒューマン・ナレッジ・シェア制度

    従業員の思考プロセスや判断をデータ化して、組織の資産として回収する、国が認証したシステム。

    フィクションの話よ。

    でも、そんなに遠くない話だとも思っている。


    私たちはすでに、自分の判断を会社に預けながら働いている。

    長年かけて磨いた企画の感覚、言語化できない判断の速さ、誰に教わったわけでもない「これだ」という直感。

    それは「私」のものだろうか。

    それとも、職場という文脈の中でしか生まれなかった、「会社のもの」だろうか。

    考えたことがあるかしら。


    小説の中で、安藤樹(あんどう・いつき)という男が姿を消す。

    彼は大手デベロッパーで働く企画担当で、独創的な着想を持つ人間だった。

    彼が消える前に残した言葉が、あの一行よ。

    「俺の判断が、俺より先に働いている」


    システムに判断を抽出された人間に、何が残るのか。

    最終話のタイトルは、こう問いかけている。

    「まだ、俺に見える?」


    これは近未来のサスペンスとして書いた小説だけれど、私が本当に書きたかったのは、その問いへの答えよ。

    抜き取られなかったものが、人間らしさなのかもしれない、という予感。

    整えられたあとに残らなかったものの中に、本当の「その人」がいるのかもしれない、という感覚。

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    — Moneypenny

    #創作大賞2026 #お仕事小説 #人間蒸留


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    放送作家歴30年×生成AIクリエイター。「Moneypenny File|思考の武器」で仕事とAI時代の働き方を現場の言葉で読み解く。新刊『SNSに頼らないKindle出版』発売中。Amazonのアソシエイトとして、マネーペニーは適格販売により収入を得ています。

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