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Day 76 | ブリュッセル:王立美術館でベルギーゆかりの作品に触れた1日

2026/09/20(日) ブリュッセル 雨のち晴れ 19℃

7時起床。窓の外は雨が降っていた。
9時過ぎにホテルを出て、まずは「ギャルリ・サンテュベール」へ向かう。ヨーロッパ最古の美しいアーケード街だ。昼頃には雨が上がる予報だったので、午前中はなるべく屋内で過ごすことにした。アーケードの中にはベルギーチョコレートの名店が軒を連ねており、どの店のショーウインドウも趣向を凝らしていて見飽きない。
皆考えることは同じようで、午前中にもかかわらずアーケード内にはかなりの人が集まっていた。

色合いも素敵な店内
缶にデザインもいい感じ
沢山あって選べない
生キャラメル
雨なのでアーケードが賑わっていた


アーケードから少し歩くと、「世界で最も美しい広場」と称されるグラン=プラス(Grand-Place)に出る。14世紀に建てられた壮麗な市庁舎などが並ぶ、ブリュッセルの中心地だ。雨に濡れた石畳はかなり滑りやすく歩きづらかったが、雨足が強い中でも多くの観光客が広場を訪れ、その美しさにカメラを向けていた。

荘厳な建物が圧巻
あいにくの雨でもネパール(?)のイベントが行われていた

そこから歩いて10分ほどの場所にある、ベルギー王立美術館へと向かう。
その道中、店頭に美味しそうなシナモンロールがたくさん並んでいるCups & Rollsというお店が目に留まった。昔からシナモンロールには目がない。朝食からそれほど時間は経っていなかったが、迷わず一ついただくことにした。選んだのは「アップルシナモン」。シナモンロールの上に細かく刻んだりんごが乗っていて、たまらなく美味しそうだ。
店員の女性が「私もこれが一番好きなのよ」と気さくに話しかけてくれた。聞けば、ここは半年ほど前にオープンしたばかりの家族経営のお店で、すべてハンドメイドで作っているのだという。せっかくなのでコーヒーも頼み、隣のビルの軒先を借りて立ち食いスタイルでいただいた。
パン生地はしっかりしているのに、ふっと解けるように嚙み切りやすい。シナモンの香りが口いっぱいに広がるが、決して甘すぎない。手作りならではの、よく考えられた優しい甘さで、ペロリと平らげてしまった。ここは心から「今後も流行ってほしい」と思える、素敵なお店だった。

店構えもいい
幸せが詰まっている。
パンの部分も美味。個人的にシナボンより好き


王立美術館に到着。ここは「マグリット美術館」と「古典美術館(オールド・マスターズ)」が併設されており、受付で両方見るかどうかのチケットを購入する仕組みだ。今回は両方じっくり見て回ることにした。

まずはルネ・マグリット美術館から。
彼の作品は以前、横浜の美術館でも見たことがあり、その色合いとシュルレアリスム独特のデザインが強く印象に残っていた。実際の素顔についてはあまり知らなかったが、館内には生前の写真や彼自身の言葉、シュルレアリスム運動に関する手記などの資料が豊富に展示されており、そこから見えてきたのは「かなりひょうきんでパンクな一面ももった人物」という印象だ。
もちろん作品一つひとつのデザイン性、グラデーションのきめ細かさ、色合いは一級品だ。だがそれ以上に、彼の中にある反骨精神や、社会に対するアンチテーゼの姿勢がとても痛快だった。
壁の所々に彼の言葉が記されていたが、難解なものもあったため、AIで翻訳・解釈してもらいながら彼の思考の奥底を探ってみた。

「自由とは、そうであることの可能性であり、そうあらねばならないという義務ではない。」
「選択の余地はない。生命なき芸術はありえない。」
「シュルレアリストであるということは、すでに見たものを心から追放し、まだ見ていないものを探求することである。」
「世界とその神秘は決して自らを再生することはない。それは単に模倣できるようなモデルではないのだ。」
「詩の目的は宇宙の神秘を知ること。そしてそれによって私たちが自然の要素に働きかけることができるようになることであろう。」

第一次世界大戦という惨劇を引き起こした当時の欧米社会の「理性」や「合理主義」を徹底的に否定し、現実にはありえない不条理で神秘的な光景を描き出したマグリット。「こうでなければならない」という世間の規範から解放された「あり方の可能性」こそが自由であるという彼の芸術哲学に、深く触れることができて本当に良かった。

マグリット
空のブルーと家の街灯を分ける木々の黒さの構図が面白い


続いて、常設の古典美術館(オールド・マスターズ)へ。
こちらはルーベンス、ブリューゲル、ヒエロニムス・ボスなど、ベルギー(フランドル)にゆかりのある巨匠たちの作品が数多く展示されている。

ルーベンスはアントワープに工房兼自宅を構え、弟子の中からアンソニー・ヴァン・ダイクという天才も輩出した。肉感に溢れたダイナミックな絵が多く、マドリードのプラド美術館でもど真ん中に彼の巨大な絵が飾られていたのを思い出す。

『バベルの塔』などで有名なピーテル・ブリューゲルも素晴らしい。今回初めて知ったのだが、同じく画家として有名な息子のピーテル2世は、実は父と一緒に活動したわけではないらしい。父の名声と市場価値が非常に高かったため、父の工房に残された下絵や素描をもとに、父の代表作をそっくりに複製(模写)する工房を息子が営んでいたのだ。一見すると区別がつかないほどそっくりな作品が世に送り出された背景には、そんな事情があったのかと驚かされた。ここでも緻密な農民生活の様子が描かれており、当時の社会を知る歴史資料としても非常に面白い。

そして、ヒエロニムス・ボス。
彼の作品には気味の悪い謎のキャラクターが多数登場するが、不思議と惹きつけられる魅力があり、つい見入ってしまう。当時の画家には生活を支えるパトロン(買い手)が不可欠だったはずだが、「一体誰がこんな不条理で奇怪な絵を買ったのだろう?」と気になり調べてみた。
すると、ボスは生涯のほとんどを故郷スヘルトーヘンボスで過ごし、地元の「聖母信心会」という宗教結社のメンバーとして活動しており、その仲間や街の裕福な市民たちが最初のパトロンだったことがわかった。そして彼の死後、その奇想天外な世界観に魅了され、最も熱心に作品を買い集めた最大のコレクターが、あのスペイン国王フェリペ2世だったのだ(プラド美術館にボスの名作が多数所蔵されているのはそのためだ)。
歴史の繋がりを感じながら、名画の数々をゆったりと楽しむ最高の一時だった。

ルーベンスのお部屋
ブリューゲル
ボス


午後は予報通り空が晴れ渡ったので、昨日とは別のフリーマーケットへ行ってみることにした。
王立美術館からバスに乗り、目的地に近いバス停で降りる。Googleマップと睨めっこしていると、一緒にバスを降りた地元のおじちゃんが「どこに行くんだ?」とフランス語で聞いてきた。画面を見せると、「案内するからついてこい!」という手振りで、本当に目的の広場まで連れて行ってくれた。過去の旅の経験(特にエジプトなど)から、こういう善意の後は必ずお金を請求されると身構えていたのだが、彼はニカッと爽やかに笑って去って行った。
朝のシナモンロール屋のお姉さんといい、今日は温かい人たちに出会えるラッキーデイだ。

到着したシャトラン広場(Pl. du Châtelain)では、かなり規模の大きなフリマが開催されていた。朝の雨が嘘のような活気で、ここでも出店者たちはワインやビールを陽気に飲みながら、心からフリマを楽しんでいる。
小一時間ほどローカルな空気を味わい、バスとトラムを乗り継いでホテルへ戻った。

雨に当たった後、美術館の空調で体が冷えてしまったせいか、喉に違和感があり若干体調が良くない。
明日はアントワープへ移動する。今日は無理をせず、早めにベッドに入って休むことにする。

悪い顔をしたムキムキの子供
ゼウスが化けた白鳥が悪い顔をしていた
午後は気持ち良く晴れ、シャトランのフリマは大賑わい

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