廃却判断が先送りされる現場で、基準づくりに踏み出した手順

部材在庫の廃却に関わる方へ。「使わないのに捨てられない部材」に悩んだことはありませんか。判断基準がないと、廃却は先送りされ続けます。今回は"決める"より先に"見える化する"ために試した手順を、失敗も含めてまとめます。
在庫管理に関わる立場になって気づいたこと
ある時期から、部材在庫の管理に関わるようになりました。
最初に気になったのは、「使われていない部材がずっと棚に並んでいる」ことでした。
誰もが薄々わかっているのに、誰も動かない。
その状態が、何ヶ月も続いていました。
部材在庫は、使う予定がなくても保管され続けることがあります。
そして一度保管が始まると、止まりにくいです。
理由はシンプルで、捨てる判断は怖いからです。
「本当にもう使わない?」と聞かれると、誰も断言できません。
結果として、在庫が"判断待ち"のまま積み上がります。
気づくと、滞留している部材が当たり前の景色になっていました。
ここで強く感じたのは、意思の問題ではないことです。
「捨てたい人がいない」のではなく、「捨てる根拠が置かれていない」。
この差が大きいです。
壁の正体:判断材料がないと、個人に責任が乗る
壁は、「いつ廃却すべきか」の基準が明確でないことでした。
判断が曖昧だと、次のことが連鎖します。
まず、「まだ使う可能性がある」で保管が継続されやすいです。
可能性はゼロではないので、反論がしにくいからです。
次に、在庫滞留が発生しても判断が先送りされやすいです。
日々の業務は緊急度が高いものに引っ張られます。
"将来のための片付け"は後回しになります。
さらに厄介なのは、廃却が「やる/やらない」の二択に見える点です。
二択だと、怖さが勝ちます。
怖さが勝つと、保管を続ける方が"安全"に見えてしまいます。
つまり、壁の正体は「判断を支える材料の不足」でした。
材料がないから、判断の責任が個人に乗ります。
個人に乗ると、先送りが起きやすくなります。
発想を変えた:基準より先に"信号"を置く
今回の学びは、「基準を決める前に、指標を置く」でした。
最初から完璧な廃却基準を作ろうとすると、議論が止まります。
なぜなら、現場には例外が必ずあるからです。
例外を全部潰そうとして、結局"決まらない"が起きます。
そこで発想を変えました。
基準をいきなり"決定"にしない。
まずは"判断を助ける信号"として置く。
今回の信号は、次の2つです。
在庫日数(どれだけ長く眠っているか)
使用実績(最近使った形跡があるか)
この2つを並べるだけで、会話が変わります。
「まだ使うかも」から、「いつ使った?」「どれくらい眠ってる?」へ。
感覚ではなく、事実に寄った会話になります。
基準とは、結局「会話の起点」だと思いました。
起点が数字になると、合意形成がしやすくなります。
「決める会議」を開く前に、「確認できる材料を作る」が先です。
この順番を入れ替えるだけで、会議の密度が変わります。
実際に試したこと
やったことは大きく3つです。
在庫日数を算出する
使用実績を確認する
レポートの形にして、廃却判断の"たたき台"を作る
1)在庫日数を算出する
まず、「いつから在庫になっているか」を揃えました。
ここで言う在庫日数は、例えば次のイメージです。
今日の日付 − 入庫日(または最終入庫日)=在庫日数
ポイントは、計算式よりも"起点の定義"です。
入庫日が取れない場合は、代替の起点が必要でした。
例えば、棚入れ日や検収日など、組織で一貫して取れる日付です。
私はここで一度つまずきました。
「在庫日数」を作ろうとして、日付項目が複数あって迷いました。
結局、最初のレポートは部材ごとに起点がバラバラになり、比較できませんでした。
なので、最初の段階では割り切りました。
"完璧な起点"ではなく、"全品に適用できる起点"を優先しました。
比較できることが、第一歩だと判断しました。
2)使用実績を確認する
次に、「最近使っているか」を見ました。
ここも最初から複雑にしない方が進みます。
例えば、使用実績は以下のような形にできます。
過去◯ヶ月の出庫回数
最終出庫日
過去◯ヶ月の使用数量
私は「最終出庫日」だけで判断しようとして、失敗しました。
最終出庫日が古い=不要、とは限らないからです。
年に一度しか使わない部材も普通にあります。
そこで、「期間」と「回数」をセットで見るようにしました。
直近12ヶ月で出庫0回
直近24ヶ月で出庫0回
直近12ヶ月で出庫1回(しかも少量)
このあたりで、優先順位がつけやすくなりました。
3)基準整理に向けたレポートを作る
最後に、指標を"見える形"にまとめました。
意図は、廃却判断をしやすい仕組みに近づけることです。
レポートはまずシンプルで良いです。
私は次のような並びを意識しました。
部材カテゴリ(ざっくり)
在庫数量
在庫日数
最終出庫日
直近12ヶ月出庫回数
コメント欄(例:保守用途、代替品あり等)
ここで大事なのは、結論を出し切らないことでした。
「廃却すべき」ではなく、「判断の候補」を出す。
候補を出すだけでも、会議や確認のスピードが上がります。
やってみて分かったこと
良かった点と、失敗した点を正直に書きます。
良かった点:会話が"感覚"から"確認"に変わった
在庫日数と使用実績を置いただけで、やり取りが変わりました。
「一応残しておこう」ではなく、「直近2年使ってないけど、理由ある?」と聞けるようになります。
これが想像以上に効きました。
相手も「感覚で言われている」ではなく「データを見ながら話している」と感じるからか、返答が具体的になります。
「あれは保守用途で年1回しか使わない」「もう代替品に切り替わっている」といった情報が、自然と出てきます。
こうした情報は、データを出す前は誰も言い出さなかったことです。
「捨てよう」という話より、「確認しよう」という話の方が場が開きます。
結果として、不要在庫の削減に繋がる可能性が見えました。
まずは"対象を特定できる"ことが大きいです。
失敗した点:最初から"基準値"を決めに行くと止まる
私は早い段階で、「在庫日数◯日以上は廃却」という線引きをしたくなりました。
でも、ここで議論が止まります。
例外が必ず出るからです。
例外の説明に時間を使い、全体が進まなくなります。
なので次回は、段階を分けます。
第1段階:可視化(ランキング・区分け)
第2段階:判断フロー(誰が何を確認するか)
第3段階:基準値(例外を含めて運用できる形)
「基準値」は最後で良い。
このとき学んだのは、「段階を見誤ると、頑張るほど止まる」ということです。
最初から「廃却基準を作る」と宣言してしまうと、例外処理だけで会議が終わります。
「判断の候補を出す」まで範囲を絞るだけで、動けます。
明日から試せる一歩
明日やるなら、私はこれをおすすめします。
"廃却を決める"ではなく、"判断しやすくする"がゴールです。
在庫一覧から「在庫日数」を出せる列を1つ作る
「最終出庫日」か「直近12ヶ月出庫回数」をどちらか1つ出す
在庫日数の長い順に並べて、上位20件だけ見る
上位20件に「保守用途」「代替あり」などメモ欄を足す
次の打ち合わせでは「廃却」ではなく「確認したいこと」を持っていく
小さく始めるほど、続きます。
続くほど、基準の精度が上がります。
次の一手(#AI活用100本ノック)
次は、レポートを"継続運用できる形"に寄せたいです。
更新のたびに手作業が増えると、また先送りになるからです。
具体的には、「毎月1回、自動で在庫日数と使用実績が更新される」状態を目指します。
その上で、判断フロー(誰が、何を見て、どう決めるか)を整えます。
#AI活用100本ノック 進捗:20/100
次回の実験:在庫レポートを定期更新できる形にして、判断フロー(確認項目と担当)まで落とし込む
このnoteでは、現場改善・AI活用・小さな自作ツールの試行錯誤を記録しています。
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