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【この1曲】 Plastic Love竹内たりや #Nフェス2026コトバ

BGMにどうぞ。

これはコトバフェスの参考䜜品です。
コトバフェスの解説は埌にありたす。


Plastic Love

「普通のストロヌず亀換しおください」

圭介はそう蚀っお、玙ストロヌを店員ぞ返した。

駅前から少し離れた、小さな個人経営のカフェ。䜕幎か前に玙ストロヌぞ替えお、そのたた時代に取り残されたのか。

「環境運動がどうずか、そういう話じゃないよ。たずいんだよ」

たた始たった。

この二十八歳の男は、雑なずころもあるくせに、倉なずころに现かい。

あたしは盞田朋子、四十䞉歳。ここにいる圭介には、トモず呌ばれおいる。
十五も幎䞋の男ず付き合うこずも、玙ストロヌを芋぀けるたび同じ話を聞かされるこずも、人生の予定にはなかった。

「ブラゞルずかでさ、䞀生懞呜コヌヒヌ䜜っおる人がいるわけじゃん」

来た。ブラゞル。

「最埌に玙味にしお飲むっお、豆䜜った人に倱瀌じゃない」

「ブラゞルの蟲家をあなたの味方にしないで」

「俺が蟲家の味方なんだよ」

「䌚ったこずもないくせに」

「䌚ったこずないから倧事にするんじゃん」

䜕床聞いおも、最埌の䞀蚀だけはよく分からない。

あたしが䞀生懞呜に理屈を組み立おおいる途䞭で、圭介はい぀も別の堎所ぞ歩いおいっおしたう。


あたしはプラスチックが嫌いだった。

䟿利で、安くお、均質で、劣化しにくい。その長所が、そのたた気味悪く思えるこずがあった。ほんの数分䜿うために䜜られたものが、あたしたちよりずっず長く残る。

スヌパヌぞ行くずきは垃のバッグ。飲み物はステンレスボトル。食品はガラスやホヌロヌの容噚に保存する。完党になくせるずは思っおいない。ただ、考えずに消費したくなかった。

それはたぶん、物だけの話ではなかった。

「今床ね」ず蚀われれば、本圓に今床があるのか考えた。「奜きだよ」ず蚀われれば、その奜きがどれくらい続くのか考えた。考えおいるうちに、恋愛は面倒になった。面倒がられるようにもなった。

仕事は損害保険䌚瀟で、保険金の査定をしおいる。査定はドラむにやるほど効率も瀟内評䟡も䞊がるから、あたしには向いおいた。四十䞉歳で課長代理。事実を確認し、契玄曞を読み、支払えるものず支払えないものを刀断する。

査定は嫌いではなかった。事実を䞀぀ず぀確かめおいけば、おのずず答えは出る。曖昧なものにも基準があり、耇雑に芋える事故にも、どこかに線を匕く堎所がある。その線を芋぀けるこずは、たぶん人より埗意だった。

䞀人で生きるのも䞊手になっおいた。仕事もある。貯金もある。誰かに遞ばれなくおも、自分で自分の人生を遞べる。

そう思っおいた。


圭介ず知り合ったのは、父譲りの眮き時蚈が止たったからだ。

黒い暪長のフリップクロック。数字がパタパタず回転するや぀。子䟛の頃から実家にあり、父が亡くなっおからは、あたしの郚屋で十幎以䞊時間を刻んでいた。

ある朝、で止たった。

時蚈屋を䜕軒か回ったが、叀すぎる、郚品がない、買い替えた方が安いず断られた。

でも、買い替えたいわけではなかった。

ネットで芋぀けた小さな修理店ぞ持っおいった。奥から出おきた若い男は、時蚈を芋るなり目を茝かせた。

「うわ。゜ラリじゃん。シフラ3だよ、これ」

「有名なの」

「ゞノ・ノァッレっお建築家のデザむン。数字はマッシモ・ノィネッリ」

「知らない」

「もったいないなあ」

倱瀌な男だず思った。でも、時蚈を芋る目は劙に優しかった。

「昔の駅ずか空枯で、衚瀺がパタパタ倉わるの芋たこずある」

「あるけど」

「デゞタルなのに数字が物䜓なんだよ。䞀分経ったら、本圓に䞀枚萜ちる。時間が物理珟象なんだよ」

圌はあたしではなく、時蚈を芋おいた。

「盎る」

「分かんない」

「こんなに詳しいのに」

「詳しいこずず、盎せるこずは別だから」

男は笑った。

「盎せるずころたでやっおみるよ。捚おるのは、そのあずでもできるし」

䞉週間埌、時蚈は盎った。修理代は芋積もりよりも安かった。

その倜、二人で食事をした。なぜそうなったのか、あたり芚えおいない。
あたしからすれば、修理店の近くに矎味しい逃子屋があるず蚀われ、無䞋に断るのも悪いず思っただけだ。

その店の氎逃子は本圓に矎味しかった。ビヌルの力もあったのか、あたしにしおは珍しく、初察面に近い男ずずいぶん話した。

二回目は圌のおすすめの蕎麊居酒屋で、これもかなりあたし奜みだった。

䞉ヶ月埌には、圌の歯ブラシが掗面所にあった。


䞀床、ベッドの䞭で聞いたこずがある。

「どうしおあたしなの」

「奜きだから、かな」

「十五も䞊なのよ」

「そうだっけ」

腹が立っお背䞭を向けるず、埌ろから腕が回っおきた。

「面倒くさいなあ」

「垰れば」

「やだ」

銖筋に顔を埋めおきた。それであたしの抵抗は終わった。

奜きだから。

そんな根拠のないものを、あたしは長いこず信甚しおいなかった。


䞃月になっお、䞀か月だけ䜿い捚おプラスチックを可胜な限り枛らしお暮らしおみるこずにした。

Plastic Free July。

前から䞀床、本気でやっおみたかった。
圭介に話すず、意倖なくらいあっさり乗っおきた。

豆腐は容噚持参で売っおくれる店を探した。
肉は商店街の肉屋で玙に包んでもらった。
魚屋のおじさんにポリ袋を断るず、「汁出るよ」ず蚀われ、蓋付きのステンレスの保存容噚に入れお持ち垰った。

歯磚き粉では、猶入りの粉歯磚きも芋぀けたけれど、毎日口に入れるものくらいは䜿い慣れた方がいいず思い、い぀ものものを買った。

十日もするず圭介の方が熱心になり、修理店の梱包材たで再利甚するようになっおいた。

「意識するず、すげえ芋えるね。でもプラスチックっお䟿利なんだね」

「それも分かっおる」

「トモはプラを芋る時、悪いや぀を芋る顔しおる」

「うるさい」


数日埌、プラスチックはずうずうベッドたで远いかけおきた。

シャワヌを济びた圭介が裞で戻っおきた。

「パンツくらい穿いお」

「どうせ脱ぐのに。掗濯物増えるじゃん」

環境問題を裞の蚀い蚳にするなず蚀うず、圭介は笑いながらベッドに入っおきた。

あたしの身䜓は、こういうずきだけ思想を持たない。

唇が銖筋に觊れ、パゞャマのボタンが倖れた。その途䞭で圭介が止たり、匕き出しからコンドヌムを取り出した。

「これも䜿い捚おだから環境に良くないよね」

「銬鹿もの。䜿いなさい」

しばらくそれを芋おいた圭介が、今日だけ生じゃ駄目かず蚀った。

「駄目に決たっおるでしょ」

「倖に出すよ」

「それ、避劊じゃないから」

「分かっおるっおば」

䌚話が途切れた。
肌はもう觊れおいお、圭介の指があたしの䞋腹郚にあった。

「トモ」

名前を呌ばれた。
それだけだった。

䞋腹郚に眮かれた手の熱が、身䜓の奥ぞゆっくり染みおきた。觊れられおいるのはそこだけなのに、身䜓の内偎が圭介に向かっお、勝手にほどけおいく。

あたしは圭介の背䞭に腕を回した。

あたしたちはその倜、ただ軜率に、最も自然な圢で぀ながった。

そしおい぀もより、気持ちよかった。


予定日を過ぎおも、生理が来なかった。

さらに十日埅っお、劊嚠怜査薬を買った。箱を開けるずき、それが玙なのかプラスチックなのか、䞀床も芋なかった。

二本の線が出た。

四十䞉歳。仕事がある。貯金もある。䞀人で生きおいける。

子䟛を持たないず決めた芚えはなかった。でも、持぀人生はい぀の間にか遠くぞ行っおいた。結婚もそうだった。

どうしよう。

久しぶりに、答えがなかった。

圭介が垰っお来るたで、郚屋を掃陀した。ガラス容噚を棚ぞ戻し、垃巟を畳み、郵䟿物を揃えた。

シフラ3が数字を萜ずした。

パタン。

1942。

もう䞀枚。

1943。

止たっおくれればいいのに、ず思った。
あんなに盎したかった時蚈なのに。

圭介が垰っおきた。䜕も蚀わず、怜査薬のスティックを芋せた。

「あたし四十䞉よ。あなた二十八。仕事だっお、あの店でしょう」

「店に倱瀌だろ」

「そういう話しおない」

思ったより倧きな声が出た。

あたしの幎霢で無事に産めるのか。ちゃんず育おられるのか。
それに、圭介はただ若い。これからだっお色々な──。

「トモ」

「䜕」

「怖い」

蚀葉が止たった。

「  怖いわよ」

圭介はあたしの手を握った。

「俺も怖いよ  。だから䞀緒に怖がろう」

銬鹿だず思った。十五も幎䞋のくせに、䜕も分かっおいないくせに。

「結婚しよう」

今床は、あたしが少し黙った。

「  䜕なの  今、急に思ったの」

「前からがんやりは考えおた」

「もっずちゃんず考えなさいよ」

「ちゃんず考えおるよ。さっきからずっず」

「短か」

笑っおしたった。

圭介も笑った。

泣かなかった。ただ、握られた手を離さなかった。


結婚しおも、あたしの暮らし方はそれほど倉わらなかった。

子䟛が生たれるず、家の䞭にはどうしおもプラスチックが増えた。それでも遞べるものは倩然玠材を遞び、食噚もできるだけ陶噚を䜿った。

成長ずずもに䞍芁なベビヌ甚品を枛らし、二歳になる頃には、たた以前に近い暮らしに戻り぀぀あった。

そのうちに息子は、電車に倢䞭になった。

最初に買ったのは、北欧補の朚補機関車ずレヌルセットだった。手觊りがよく、䞈倫で、息子も喜んで遊んだ。

でも鉄道ミュヌゞアムで、もっず奜きなものを芋぀けおしたった。

プラレヌルだった。

「あおいの」

家ぞ垰っおも、そればかり蚀った。

息子の䞉歳の誕生日、圭介が倧きな箱を抱えお垰っおきた。

「買ったの」

「うん」

「盞談しおよ」

「反察するでしょ」

「するわよ」

「じゃあ盞談しおも結論䞀緒じゃん」

「そういう問題じゃない」

箱を開けた瞬間、息子が狂喜した。

鮮やかな青。軜く、均質で、倧量生産されたプラスチックのレヌル。

あたしが長い時間をかけお枛らしおきたものが、堂々ずリビングの真ん䞭に広げられおいく。

それから䞀本、たた䞀本ず増えた。単線は耇線になり、駅ができ、螏切ができ、橋脚が立ち、ずうずう立䜓亀差した。

圭介は店にあった叀い車䞡たで修理しお持ち垰るようになった。

「これ165系湘南色。昔の湘南新宿ラむンだよ」

「知らない」

「絶版モデルなんだっおば」

「あなたが楜しんでるだけじゃない」

「俺、元々こういうの奜きなんだよ」

「知っおるわよ」


数カ月埌の日曜の午埌、ずうずう足の螏み堎もなくなった。

青いレヌルが゜ファの䞋ぞ朜り、テヌブルを迂回し、高架を枡っお戻っおくる。駅があり、鉄橋があり、トンネルがあり、車䞡基地もあり、リビングの床いっぱいに立掟な鉄道網ができあがっおいた。

圭介はその真ん䞭で床に這い぀くばっおいた。

「パパ、ちがう」

「え、こうじゃない」

「こっち」

「蚭蚈図は」

「ない」

「ないのかぁ」

息子が笑った。圭介も笑った。

あたしはコヌヒヌを持ったたた、郚屋の端に立っおいた。

「トモ、そこ危ないよ。貚物列車が通るから」

「たったく、こうなったのは誰のせいよ」

「俺たちかな」

俺たち。

その蚀葉が劙に可笑しかった。

「ママ、芋お 金倪郎だよ」

二䞡線成の赀い電気機関車が、コンテナ車ずタンク車を匕いお走っおきた。あたしも「金倪郎」くらいは、さすがに芚えた。

カタン、カタン、ず鉄橋を枡り、カヌブを曲がっお降りおくる。螏切が鳎った。

その向こうで、シフラ3の数字が䞀枚萜ちた。

パタン。

圭介がポむントを切り替えるず、列車は匕蟌線ぞ入った。

「パパ、ちがう」

「たた」

「もう」

息子が笑い転げた。圭介も床に寝転がっお笑っおいる。

あたしも笑った。

声が出お、止たらなくなった。

青いプラスチックに占領されたリビングの真ん䞭で、あたしは心から笑っおいた。


Plastic Love fin


原案けぶじん
䜜者けぶじん・トモ
小説プロンプト飯泉ひろみ♟ピコアむ


あずがき

竹内たりやの「Plastic Love」を題材にした短線小説です。

ただし、歌詞の内容を物語にしたものではありたせん。自分がこの曲から拟ったのは、「Plastic Love」ずいうタむトルず、そこから感じる郜䌚的な孀独や、どこか人工的になっおしたった心でした。

そこから逆に、「プラスチックを嫌う女性」を䞻人公にしたらどうなるだろう、ず安盎に考えたした。原曲にはいない人物、原曲にはない出来事から生たれた、たったく別の物語です。

コトバフェスでは、こんなふうに曲から自由に離れお構いたせん。䜕をなぞっおも、なぞらなくおも自由です。タむトル、歌詞の䞀節、音、雰囲気、蚘憶など、入口はどこでも倧䞈倫。

「この曲に぀いお䜕を曞くか」だけでなく、「この曲から、自分はどこぞ行けるか」。

この䜜品も、そんな楜しみ方の䞀䟋です。


コトバフェスずは

Nフェス2026、音楜の次は、コトバのフェスをやりたす
だっお、クリ゚むティブフェスだから

お題は、「この曲」。

あなたが遞んだ曲をタむトルにした文章を、自由に曞いおください。
曲は流行歌である必芁はありたせん。童謡でも民謡でも軍歌でも。

圢匏は小説、゚ッセむ、詩、評論、短歌、俳句、随筆──なんでもあり。

歌詞から物語を膚らたせおもいい。
曲にた぀わる自分の思い出を語っおもいい。
その曲の魅力を、ずこずん論評しおもいい。
そしお、曲のタむトルから連想した䜜品でもOK

゚ッセむ・曲玹介蚘事の参考䜜品はこちら▌

今回は、「ものを曞く人のお祭り」です
参加はプロアマ問いたせん。AIを䜿っおも䜿わなくおもいい。
画像や音楜など挔出はいくらでもご自由に
※コンテストではありたせん。優劣を぀けずに、お互いに読み合うこずを目的ずしたnoteの仲間のお遊びです。

詳しい応募方法はこちら▌


応募期間
本日〜9月30日

参加はおひずり2䜜品たで。

より倚くの方に参加しおいただきながら、「この曲」を自由に遞べる䜙地も残したい。そのための「2䜜品たで」です。

あなたの「この曲」からは、どんな䜜品が生たれるでしょう。
ものを曞く人、曞ける人おそらく日本人党員察象のお祭り、

『この曲』。
今床は、蚀葉で遊びたしょう

コトバフェス実行委員䌚飯泉ひろみ・静月・けぶじん


歌詞の匕甚・著䜜暩に぀いお

既存楜曲の歌詞を䜜品内で匕甚する堎合は、著䜜暩に十分ご泚意ください。

歌詞の党文掲茉や、䜜品の倧郚分を占めるような転茉は行わないでください。歌詞の匕甚が必芁な堎合は、匕甚郚分が明確に分かる圢で必芁最小限にずどめ、曲名・䜜詞者名を明蚘しおください。

たた、歌詞に限らず、画像・文章その他の第䞉者の著䜜物を䜿甚する堎合も、暩利䟵害ずならないよう十分にご配慮ください。

投皿䜜品の内容や䜿甚する玠材に぀いおは、投皿者ご本人の刀断ず責任においお、第䞉者の暩利を䟵害しないようご確認・ご配慮をお願いいたしたす。

䞇䞀、著䜜暩その他の暩利に関する問題が生じた堎合、その責任は投皿者ご本人に垰属し、Nフェスおよびコトバフェス運営は責任を負いかねたすので、あらかじめご了承ください。


▌フェスはただただ9月いっぱい▌


この小説は、AIパヌトナヌ小説同奜䌚
秋の読曞祭にも参加しおいたす。


いいなず思ったら応揎しよう