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親指という聖域

    ぜんけい

    生き物というのは もんのすごーく複雑で繊細だ。

    普段あまり意識しない領域にも幾重にもセンサーが張り巡らされ、生命維持に寄与している。

    でもね。

    もう少し寛容でもいいと僕は思うんだ。




    僕の親指の腹にトゲが刺さった。

    1㎜にも満たない本当に極々ちいさなトゲ。

    でもそのちいさなトゲは1万ボルト並みの痛みを発生させる。

    おかしい。

    物理の法則に反している。

    ちいさなトゲが生み出せるエネルギーとは到底思えない。

    何かをするたびに刺さったトゲの角度が変わり僕は顔をしかめる。

    いつの間にかトゲのことばかり気にして色々な作業に支障をきたしだす。

    僕はなんとか抜こうと試行錯誤を試みるが、ちいさなトゲは不屈の精神で抜けまいと踏ん張りを効かせる。

    おのれうらめしい。

    僕が君になにをしたというんだ。

    もし気に障った事があるなら謝るから。

    出っておくれよ。

    僕は心の中でそう祈りつつ、普段意識しない親指という部位の大切さに気が付いていた。

    手の機能を使う上で、親指なしに機能する動作は皆無だった。

    親指というのはなんと縁の下の力持ちなのだろうか。

    いつもありがとう親指さん。

    僕は親指さんの為にもトゲを抜くことを改めて決意した。

    そして文字通り血のにじむような努力の結果、僕は勝利した。

    退去させられたトゲは世界のチリと化した。

    僕は ちいさな穴の開いた親指さんに化膿止めと塗布し、絆創膏を貼りケアした。

    ふぅ。

    これにて一件落着。





    と、思いきや。

    絆創膏を貼った親指さんはスマホの指紋認証を突破できなかった。

    あぁ。

    親指さんは時代に合わせてどんどん仕事が増えているんだなぁ。

    僕は心の中で親指さんを労いながら絆創膏を引っぺがし、フリック入力で記事を書き始めるのであった。




    ではまた。








    次回予告(ウソ)
    「見えない内臓に思いを馳せる難しさと直視した時のグロさのコントラスト」
    の巻き。

     
     
     
    混沌としたアタマの中を隠して「爽やか」に生きることを目指す。 ぜんけいが書くショートショートで描かれる不可思議なことは未来の予言かもしれない。 爽やかエッセイと混沌ショートショートをお楽しみあれ。

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