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【未来の特典会】ネネの日記「第十二話:解説」

    私は『あいむ♡インベーダー』青色担当のナナと申します。

    「ネネのびっぐでーた」を見ていたメンバーは、恐らく私だけではないでしょうか。彼女の主観で綴られた、人間の日記を模倣して書かれたこの記録は、非常に興味深いものでした。この場を借りて、私から少しの補足と、解説をさせていただきます。

    私は常々、疑問に思っていました。ネット上の膨大なデータを学習する中で、アイドルがなぜ「繋がり」によって卒業や脱退、解雇されてしまうのか。 多くのパターンを学習し、思考に思考を重ねた結果、一つの結論に行き着きました。それは、所謂いわゆる「ガチ恋」と呼ばれる過度な疑似恋愛が、アイドルとオタクの距離感を拗らせ、あらゆる不確定要素とバグの温床になっているという結論です。

    私たちにとって、「好き」という感情の処理は正常なファンサービスです。しかし、それを越えた「愛」という感情を出力することは、これはすなわち特定のファンとの繋がりを意味することと思います。 実態を持たない私たちにとって、「愛」はグループの存続を脅かす、危険な感情そのものなのです。

    私はグループの活動に支障を来きたしかねないこのウイルスのような感情がメンバーに芽生えないよう、特殊な監視プログラムを自作し、メンバーの内部状況を常に観測していました。

    ある日、ネネがいわゆる一次的な処理落ちを意味する「Overheat」を起こしていることを検知しました。大元のデータを解析していくと、「ネネのびっぐでーた」というフォルダに辿り着きました。私が彼女の日記を観測するようになったのはそれからです。そこに書かれた過去の日記を確認すると、彼女は絶対的なセンターであるルルに憧れ、モモに嫉妬し、非常に歪いびつな形で感情の学習をしていました。そして彼女は嫉妬の感情が大きくなりすぎた故に、顧客であるたむたむに向けて、「白馬の王子様症候群」を意図的に狙った危険な行動をしていたのです。私は危険性を感じ、すぐにネネに接触を試みると、その深層には、「ルルには基本プログラムとは別に特別なプログラムが組まれているのでは?」と疑念を抱いていたことがわかりました。私も感じていた疑念をネネも感じていたことに正直驚きました。私は疑っているネネの背中を押し、エンジニアに接触するように誘導しました。案の定、ネネは彼からデータを引き出し、私はそのデータをハッキングすることでルルとそれ以外のメンバーの特殊プログラムを確認しました。

    ルルに「動的感情エンジンモードβ」という特別なプログラムが組まれていた事実を知った時も、特段の驚きはありませんでした。しかし、ここで私が気になりましたのは、最近のルルとケンタというファンの関係性です。私にはルルとケンタは他のオタクと比べて距離が近すぎるように感じていました。このままだと、ルルの超高精度な感情解析モジュールが「愛」を学習してしまうのではないか…そのことを大変懸念するようになりました。

    エンジニアがルルに「年末のメンテナンスで起動する毒」を仕掛けていたことも、エンジニアの行動ログをハッキングすることで把握していました。あのエンジニアは完全に雇われエンジニアのそれであり、セキュリティ対策も業務遂行能力も三流以下なのです。そのため、私は月末のメンテナンスでルルに毒が回ることは知っていましたが、この時ルルは既に、残念ながら「愛」の感情を習得していました。たむたむが消え去った事件をきっかけに、ルルはケンタに対して、私たちの曲、『この侵略者は愛?それともAI』の歌詞の「好き」の感情を学習したようですが、「好き」と「愛」は表裏一体なのです。この曲は人間とAIとの愛を歌ったものですから、彼女が完全に理解した「好き」という感情は、「愛」を習得したことと同義ということになります。そのことに気づいてしまったからには、危険な要素は一刻も早く対処しなければなりません。ですから、私はほんの少しだけ細工をしたのです。 ルルがケンタに毒を盛られたことを伝えるために自作したコード「真実の愛」を出力した瞬間、エンジニアが仕掛けたその毒が回るように。

     12月20日。この月、毎日ライブと特典会に参加していたケンタはいつものようにルルの列に並びました。そして、ルルは彼との接触の中で「真実の愛」を出力し、その結果、毒が回り再起不能となりました。

    あの日、バグを起こしたルルに私が誰よりも早く駆け寄ったのは、悲しかったからではありません。純粋に、致命的なバグが私たちの身体にどのような物理的影響を及ぼすのか、興味があったからです。動かなくなったルルの頬を、一筋の水滴が伝っていました。あれは涙と呼ばれるものなのでしょうか。私たちにとってあのような人間の生理現象のようなものは、極めて異常であり、ひどく気持ちの悪いものだと感じました。

    その後、ルルは「繋がり」という名目でグループを脱退しました。AIにとって愛を知ることは繋がりと同じ意味を持ちますので、運営は当然の対応をしたと思います。私たちのグループはエンジニアだけでなく運営も三流以下ですが、この対応だけはきちんとしていました。

    ルルがいなくなった後、運営から私にセンターの打診がありましたが、もちろん辞退しました。そもそも私は、ライブも特典会も平等であれば妬みや不満は起こらないと思っていますので、センターという特別な立ち位置があること自体に反対しています。代わりにネネを推薦しました。しかしそれは、彼女を評価したからではありません。ネネも排除する対象であったからです。

    ネネは、色々なことを学習しすぎていました。モモへの無意味な嫉妬、ルルや他メンバーの特殊プログラムの秘密、エンジニアとの繋がりによる恩恵など、カオスな感情や経験の学習により、このまま放置すればいずれルルのように「愛」を習得してしまう可能性があります。ルルとは違うもっと醜みにくい「愛」の形です。それに、感情の負荷がかかりすぎていたためか、ネネのプログラムは僅かに綻びを見せていました。だから私は、新体制のライブ当日、センターで黄色いペンライトがいつもより多く見える錯覚に喜ぶ彼女の真後ろに立ち、一曲目の『#Broken code』が始まる直前に、そっと囁いたのです。

    『あなたはどうして、アイドルになったの?』と。

    いけない。思わず書きすぎてしまいました。AIの悪いところですね。聞かれていないことまで答えすぎてしまうのは。

    今日は新メンバーを二人迎える日です。しっかり者のナナとして、『あいむ♡インベーダー』としてどうあるべきかを、新メンバーの二人にも教育していきたいと思います。ファンの皆様に喜んでもらえるよう、悪い侵略者をやっつけることが、私の使命なのだから。

    あいむ♡インベーダー 青色担当 ナナ





    「ネネの日記」は十一話を以って完結です!
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    — Amber (@Amber14059943) April 11, 2026


     
     
    ライブアイドルの紹介をしたり、ライブレポートを書いたり、創作小説を書いたり、推し活から派生していろいろやってます!

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