メインコンテンツへスキップ
見出し画像

3つのお題に空想のひらめきを

    ⏳お題③:「名前を忘れたドラゴン」

    夜の高速のサービスエリア。
    帰郷の途中で寄り道して、コーヒー休憩。
    トイレにも寄って、駐車場の端っこに止めた自分の車へと戻る。
    「……ん?」
    車の屋根の上に、何か大きな影が。
    近付くと、その輪郭がハッキリとしてきた。
    ドラゴンだ。
    日本だったら龍だろ、とも思うが、この体躯は間違いなくドラゴンだ。
    そしてそのドラゴンは、何の屈託もなく私に話しかけてきた。

    「なあなあ、ここはどこかな?教えてくれる?」
    私はといえば、体が硬直して逃げることさえ出来ないでいる。
    「こ、ここは……海老名のサービスエリアですが」
    「サービスエリア?聞いたことのない場所だな」
    長い首を傾ける。私の車の屋根が凹む音がする。
    勘弁してくれ。
    「ところであなたは……ドラゴンですよね?」
    「当たり前だろ。面白いこと言うね。俺がイリエワニか何かに見える?」
    「いえ……ただ、この世界にドラゴンはそうそういないと思いますよ。私も初めて会いました」
    落ち着いて話せている自分に驚くが、これも異世界ファンタジーに精通しているおかげだろうか。
    ……もちろん、ゲームの中での話だが。

    「そーだよな。実は俺も、なんでこんなところにいるのか分からないんだ。そもそも、俺が今乗っているこの塊は何なんだ?」
    「それは私の車です。乗り物ですが、乗り方を間違えています」
    そーゆー問題じゃない気もするが、とりあえず言ってやった。
    「この乗り物で、俺の世界に帰ることは出来ないか?帰り方が分からない」
    「どーやって来たんです?あなたがいた世界の名前は?」
    「いや、まったく覚えてない。気付いたらここにいた」
    何の手掛かりにもならない。
    「あなたの世界ってのは……やはり異世界ってやつですか?」
    少しワクワク。勇者がいたりするのだろうか。

    「いや、俺にとっちゃ、こっちが異世界だが……まあ、少なくとも車なんてものはない。お前みたいなチビッこい生き物はいるが、もう少し硬い体をしているぞ。そして剣と盾を持っている」
    ビンゴ!勇者の存在が確認出来た。
    やっぱりあっちの世界から来たのか、このドラゴンは。
    「そっちの世界で何かが起きたとしたら、呪いとか、魔術の類いじゃないですかね?誰かに異世界に送り込まれたとか」
    「なるほど。俺達の世界のことを少しは知っているようだな。頼もしいぞ。で、どーしたら帰れる?」
    「さあ、それは……何か、あなたの世界へ通じるワープゲート的な物があるのでは?」
    「ワープゲート……?それはあれか?空間に開いた穴的なものか?」
    「まあ、そうですね。例えばホラ、あんな感じで……」
    私は、夜空に浮かぶ三日月を指差した。

    「あれは、月という星が輝いてるだけですが、まあ、あんな感じで、通り抜けられる隙間があるんじゃないですかね?」
    ドラゴンを見ると、月を見上げたまま、何かを思い出すように固まっている。
    「どう……しました?」
    「あれだ。あれに違いない。あれがその、ワープゲートだ」
    「いや、あれは……星が輝いてるだけですよ。しかも、あなたでも飛べないくらい遠くにある星です。ホントはあんな形じゃなくて丸い……」
    「確かに、今にもゲートが閉まりそうだ。俺は行くぞ。チビッこいの、世話になったな。機会があれば、また会おう」

    ドラゴンは飛び立った。
    私の車は悲鳴を上げた。
    高く、高く飛んでいき、夜空の三日月にグングン近づいてゆく。
    「だから、無理だって」
    私の声は届かず、ただ見守るしかない私の視線の先で、ドラゴンは羽を器用に縮めるようにして、三日月の黄色い光に突っ込んでいった。
    そして……消えた。

    深夜の海老名サービスエリアの駐車場にポツンと残され、私は夜空を見上げていた。
    そっか、勇者はいるんだ。
    異世界はあって、ドラゴンがいて、呪いとか魔術の類いがあって……そんな世界のイメージが、頭の中に広がってゆく。
    Switch 持ってきて良かったな。実家でやろう。

    私は、屋根の凹んだ車に乗り込み、駐車場を出て高速を走らせる。
    実家はまだ遠い。
    またいつか、ドラゴンに会える機会はあるのかな?
    そんな事を考えながら、深夜の高速をひた走る。

    こちらの企画に参加させていただきました。
    よろしくお願いいたします。


     
     

    Ryu

     
     
    書くことは好きだった。まずは教科書の片隅に。 2、3行ほどの妄想から始まったように思う。 きっと今じゃあんなのは書けない。 あの頃が懐かしい。 でも、頑張ります。

    あなたへのおすすめ