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3つのお題に空想のひらめきを 『眠らない海』

    アイツの第六感は鋭かった。
    特に、誰かに見られているという視線に対する恐怖心が強く、それを感じ取る能力も人一倍強かった。
    たとえ背中を向けていても、背後から誰かが見つめていようものなら、そこにチリチリとした焦燥感を感じると言う。
    事実、それを感知している時の彼の表情は、何かに怯えている時のそれだった。

    そんな彼が、夜も眠れないと相談してきた。
    「視線が気になる?日中はどこに行っても人の目があるから仕方ないけど、夜は一人暮らしの自分の部屋なんだろ?視線を感じる理由もないと思うけど」
    「それがさ、ずっと誰かが見てるんだよ。俺には分かるんだ。まばたきもせずに、じーっと俺を監視してる」
    「まばたきもせずに…?もしかして、部屋にアイドルのポスターとか貼ってないか?誰かの写真が飾ってあるとか」
    「全部片付けた。見られてるのに耐えられなくて。でも、まだ視線を感じるんだ。しかもそれは、生きている者の視線だ」
    「そんなことまで分かるのか?…じゃあ、誰かがお前の部屋を覗いているか、部屋に侵入しているか…」
    「遮光カーテンを閉めきっている。部屋は六畳一間で、人が隠れられるような場所はない」
    「それじゃあ…気のせいじゃないのか?気に病みすぎなんだよ、きっと。何かこう、部屋で生き物でも飼って、癒やされる手段を考えたらどうだ?」
    「生き物は飼ってるよ。水槽の中に熱帯魚が七匹。この間アクアショップで買ったんだ」
    「…え?」
    「…え?何?熱帯魚がどうかした?」
    「いや、それが見てるんじゃないの?お前のこと」
    「いや、だって、熱帯魚だって生き物なんだから、昼間ずっと起きてたら夜は眠るんじゃないの?明かりを消したら…」
    「魚にはまぶたがないって…知ってる?」
    「…眠らないの!?あの目でずっと俺を見てるの!?」
    「眠るけどさ、目を閉じた魚なんて見たことあるか?」
    「うっ、それもなんか気持ち悪い」

    かくして、その熱帯魚はすべて俺が譲り受けることになった。
    それなりの値段だったそうだが、事情が事情なのでかなりの格安で。
    ホント、視線恐怖症ってのも厄介だな。

    ところがしばらくして、彼からまた相談があった。
    魚がいなくなったのに、視線を感じて眠れないと。
    いったいどこから見られてるんだ?と聞いたら、「天井の隅の一角」だと言う。
    ああそれは…と思うところはあったが、もう何も言うまいと決めた。

    だって、それを譲り受けるわけにはいかないから。

    こちらの企画に参加させていただきました。
    よろしくお願いいたします。

     
     
     

    Ryu

     
     
    書くことは好きだった。まずは教科書の片隅に。 2、3行ほどの妄想から始まったように思う。 きっと今じゃあんなのは書けない。 あの頃が懐かしい。 でも、頑張ります。

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