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【短線小説】もし生たれ倉わったら鳥になりたい 

    小杉かほり

    䞀人旅は久しぶりだった。

    昚倜もかなり酒を飲んでしたった。
    昌過ぎに目芚めお鏡を芗き蟌むず、そこには無粟ひげを生やし、ボサボサ頭でや぀れた男が立っおいた。
    ここ䜕日も、たずもに眠れおいない。

    恋人に去られ、傷心の僕は気分転換にず旅に出るこずにした。

    個人経営の飲食店は「郜合によりしばらく䌑みたす」ず貌り玙を出したたたにしおある。

    来月で33歳になる。
    二歳幎䞋の圌女のななず二人で、穏やかに誕生日を迎えるはずだった。

    ずころがある日、同棲しおいたマンションから圌女の姿が消えた。
    圌女の荷物も、痕跡ごずすべお。
     
    テヌブルの䞊に残されおいたのは、小さな眮き手玙䞀枚だけだった。

    『玲さん、ごめんなさい。
    どうぞお幞せに。  ななより』

    こうなった原因に、心圓たりがないわけではない。喧嘩のたび、䜕床か圌女の頬を叩いた。

    痣が残るほどでもなく、骚折もしおいない。病院に行くような倧怪我ではないからず、僕はどこかで甘く考え、軜く芋おいたのだず思う。

    䞀床めは酒のせいだった。「飲みすぎだよ」ず窘められ、「なんだず」ず怒鳎り散らし手がでた。

    頬を抌さえたななは、痛みのせいだけではなく、信じられないものを芋るような目で僕を芋぀めおいた。
    あの目が今も焌き぀いお離れない。

    「おたえが䜙蚈なこずを蚀うからだ」

    圓時はそう呟き、謝眪の蚀葉ひず぀口にしなかった。

    二床目は酒のせいでもなく、些现な行き違いで頭に血が䞊り、たた叩いおしたった。

    僕は思い切っお、芪友に盞談するず、「それはDVだ。今は昔ずは違うんだぞ」ず厳しく諭された。

    けれど、䞀床぀いた癖は容易には改たらなかった。気が぀くず、カッずなり、たた手をあげおいた。

    さすがのななも、愛想を尜かしたのだろう。
    自業自埗だ。そう分かっおはいおも、なぜ話し合う猶予さえくれなかったのかず未緎がたしい蚀い蚳を探しおしたう。
    自分を正圓化し、ななを悪者にしなければ、ズタズタになった僕のプラむドが保おなかった。

    傷を癒すように向かったのは、本州ず九州の間の、関門海峡だった。海流の早さで知られるその堎所ぞ、以前ななず冬に蚪れたこずがある。
    公営の枡し船が倧きく揺れお、二人で驚いた蚘憶がよみがえる。

    荒波が、僕の愚かさも苊しみもすべお掗い流しおくれればいいのにず思った。

    海を芋぀めおいるず、いっそのこず飛び蟌んで泡ずなっお消えおしたえばどんなに楜だろうず、䞀瞬本気で頭をよぎった。

    だが、芪父やおふくろの悲しむ顔が浮かび、どうにか思いずどたった。

    宿に戻り、䞀人で倕食をずった。最近は食欲もなく、ズボンのり゚スト呚りが明らかに緩くなっおいた。

    出䌚いは䞀期䞀䌚。 男ず女の瞁も同じだ。

    去ったななぞの恚みを抱えおいるうちは、前には進めない。 

    倜、意を決しお芪友に電話をかけた。

    受話噚の向こうで、芪友は静かに蚀った。
    「お前さ、䞀床ちゃんず専門の病院に行っおみたらどうだ。䞀人で悩んでいおも治らないよ。
    たずえ新しく誰かず出䌚えおも、たた同じこずを繰り返す。きちんず治療した方がお前のためなんだ」

    ななに察しおはどこたでも身勝手で暪暎だった僕だが、その倜はなぜか、芪友の蚀葉がすんなりず胞に染み蟌んできた。

    「勇気がないなら付き添うし、必芁ならおふくろさんにも俺から話すから」

    友人の優しさに、胞の奥が熱くなった。

    電話を切るず、昌間の疲れず少しの安心感が抌し寄せ、僕は久しぶりに深い眠りに぀いた。

    道はきっず長い。治る保蚌もないし、再び誰かず寄り添えるかもわからない。

    けれど、長い付き合いの友がくれた蚀葉を䜕床も心の䞭で噛み締めながら、僕は暗闇の䞭で小さく呟いた。

    「ありがずう」

    頬を䌝う枩かいものを拭いもせず、僕はほんのわずかな垌望を抱きしめおいた。

    生たれ倉わったら、あの海の䞊を自由に矜ばたく鳥になりたい。今はただ、そう願っおいた。


    ※1562文字

    ※花柀薫さた、どうぞよろしくお願いしたす。



    #第二回䞀枚の写真から文芞賞



     
     
     
    倚趣味。読曞、マンガ、囜内・海倖旅行、ゲヌム・ガヌデニングなど。 動物だったら犬掟。 2025幎春からnoteで曞く事を始めたした。 悲しいこずやら䜕やらいろいろあっお、䜕かをやっおないず乗り越えられないず感じたからです。 noteではいろんなテヌマの蚘事を曞く予定です。

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