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Photo bypukin_5510

【ショートショート】炭酸のシュワワ… #シロクマ文芸部 

    小杉かほり

     炭酸の入浴剤を、私はいつも使っている。
    今夜ももちろん、湯船に放り込むつもりだ。
     ああ、それにしても今日は最悪の一日だった。
    仕事で派手なミスをし、苦手な上司からこっぴどく叱られた。
    こんな日はゆっくりお風呂に入り、早めに眠るに限る。

     そうだ。今夜は「これ、すごく良いよ!」と、この前の誕生日にプレゼントしてもらった入浴剤を使ってみよう。
    いつもスーパーで買うものとは違う、初めて見るパッケージだ。

    お湯に落とした瞬間、ゴボゴボゴボッと激しい勢いで泡が立ち上った。

    「うぉっ、ずいぶん肩が凝ってるねぇ」
     急にどこからか声がして、私は湯船の中で飛び上がった。あたりを見回しても、狭い浴室には私しかいない。

    (疲れて、幻聴でも聞こえているのかな、私…)
     まあ、それならそれでいいや、と湯船に深く身を沈める。

    「お姉さん、この泡が消えるまでなら、話相手になれるよ」 
     お湯の底から響くような、おじいさんの優しい声が言った。
    「どうしたんだい?」

    促されるまま、私は今日あった仕事のミスを、堰を切ったように話し出した。
    おじいさんはシュワシュワと泡を弾かせながら、「それは大変だったね」「がんばった、がんばった」「明日になったら、きっと良くなるよ」と、ただただ温かく慰めてくれた。
     やがてプチプチと音が小さくなり、お湯が静かになる頃には、私の心もすっかり丸くなっていた。

    翌朝、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。久しぶりに、泥のように熟睡できた気がする。
    体も心も、驚くほど軽い。
    「あの不思議なおじいさん、いったい誰だったのだろう…」
     ふと気になって、洗面所のゴミ箱から、昨夜捨てた入浴剤のパッケージを拾い上げてみた。
     裏面の成分表示の隅に、小さな文字でこう書かれていた。

    『品名 シュワシュワ仙人の労い湯。
    ※大変お疲れの方には、お湯の仙人の声が聞こえる場合があります』

    「ふふっ、おじいさん、ありがとう」
    私は小さく笑い、お気に入りのシャツに腕を通した。今日も頑張ろう!



    ※小牧部長、どうぞよろしくお願いします。


     
     
     
    多趣味。読書、マンガ、国内・海外旅行、ゲーム・ガーデニングなど。 動物だったら犬派。 2025年春からnoteで書く事を始めました。 悲しいことやら何やらいろいろあって、何かをやってないと乗り越えられないと感じたからです。 noteではいろんなテーマの記事を書く予定です。

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