祖母がどうしても言えなかったこと〜今、戦争を考える〜
母方の祖父は、先の戦争で戦死しました。
もちろん、私は会ったことがありません。
遺影に写る祖父は、目鼻立ちがはっきりとしていて、どこか日本人離れした顔立ちでした。
仕事は医者だったと聞いています。
祖母から聞いたのか、母から聞いたのかはもう忘れてしまいましたが、祖父はフィリピンの病院で亡くなったとのことでした。
てっきり、病気か何かで亡くなったのだとばかり思っていました。
マラリアにでもかかったのだろうかと、勝手に思い込んでいたのです。
ところが、事実は全く違いました。
祖母が亡くなってからかなりの年数が経ち、ある日、意外な事実が判明したのです。
祖父の部下だった方からの手紙が見つかったのだそうです。
そこには、祖父が働いていた病院が爆撃され、即死だったこと、そして遺体の状況がひどいものだったと記されていました。
この残酷な事実を、祖母はどうしても認めたくなかったのでしょう。
遺骨の代わりに手元に残ったのは、ただの石ころひとつ。他には何もありませんでした。
異国での突然の出来事を、祖母は到底受け入れがたかったに違いありません。
祖母は、その真実を子供たちにも話していませんでした。ずっと一人で、その重い悲しみを抱え続けてきたのかもしれません。
戦死した夫の両親と同居し、時に厳しかったという姑との生活の中で、幼い子供たちを育て上げた祖母。
戦争未亡人として、どれほどの苦労があっただろうかと想像するばかりです。
子にも孫にも何も告げずに旅立った祖母だからこそ、私にはその悲しみが、深く静かな湖のように感じられます。
孫である私にとって、祖母がいつも明るい人だったことが、せめてもの救いです。
それにしても、戦争は人の人生を狂わせます。これほど残酷なことがあるでしょうか。
戦後80年が経った今、改めて実感しています。
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