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Photo byエドガー・ドガ / メトロポリタン美術館

過去 【詩のようなもの】

    夜森蓬




    まるで自分の意見が言えなかったのだ。


    心が、唇が、彫像のように固くなり、

    人に、物が言えなかった。

    何を恐れていたのだろう?


    常に、何かを恐れていた。



    まるで何かを恐れることが義務だった。


    私という人間の義務だった。

    なんと、おぞましい心根だ。

    何が私にそう思わせていたのだろう?



    あのことはもう過去だ。

    そのことももう過去だ。

    どのことを言っている?

    それらはみんな過去だ。



    過去は戻らない。
    戻すことはできない。

    過去には行けない。
    行くことはできない。

    いずれにしろもう触れることはない。
    触れることはできない。



    それはもう、
    写真の中には入っていけないのと同じこと。


    それはもう、
    古いオルゴールが音を飛ばすのと同じこと。


    色褪せた過去、
    そんなものはもう要らないということ。


    鮮やかな今、
    見つめるのは今しかないということ。








     
     
     
    連載小説『僕は君になりたい。』『1番目アタール、アタール・プリジオス』を中心に詩や短編、随筆、イラスト等。

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