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パパは悪い人じゃない!――この子は、こうして強くなった

    一度、車を買った。

    でも、車を手放せば、その分のお金で旅行に行けることが分かった。

    たくさん旅行して、いろんな経験をさせる。

    そんな体験型の子育てがしたかったから、車は手放した。

    それからは、どこへ行くにも自転車だった。

    休日は、少し遠くの公園へ行ったり、一週間分の食材を買いに大型スーパーへ行ったり。

    自転車が4台。

    家族4人、意気揚々と週末を楽しみに出かける。

    平日は、子どもたちは保育園。

    私たちは仕事。

    やっと休みが来た。

    そんなある日。

    途中の道に、白いバイクが止まっていた。

    警察官がまたがっている。

    前を通り過ぎようとすると、警察官が立ち上がった。

    止められた。

    「……なに?」

    これが職務質問ってやつか。

    パパの在留資格を確認する。

    自転車が盗難車ではないか確認する。

    家族4人で、ただ自転車に乗って出かけているだけなのに。

    まあ、仕事だものね。

    仕方ない。

    そう思った。

    翌週。

    また、その道を通った。

    自転車4台。

    家族4人。

    そして、また白いバイク。

    また、呼び止められた。

    また、職務質問。

    「……これ、なんか変だぞ」

    と思った。

    ときどき、自分でもびっくりする自分が出てくることがある。

    私は、自信がない。

    人の顔色を見る。

    何かあると、まず「自分が悪いんじゃないか」と思う。

    そんな私なのに。

    夫のことになると、突然、前に出る。

    夫に限らない。

    理不尽な目にあっている人や、虐げられている人を見ると、心の中の何かが発動する。

    「ねえ、おまわりさん」

    私は言った。

    「警察官って、一度見た人の顔、覚えてるよね」

    「逃げた車のナンバーとかも覚えてないと、仕事にならないよね」

    「先週、職務質問した人でしょう?」

    「しかも、止めて10分くらい話した人を、どうしてまた止めるんですか」

    いい加減にして。

    そう思った。

    一度見て、話までしたのだから。

    顔くらい覚えているでしょう。

    ここは駅前でもない。

    地元の人が通るような道だ。

    それからしばらくすると、その警察官は私たちを止めなくなった。

    私が先頭を走っていると、ちらっと見る。

    私も、ちらっと見る。

    顔パスになった。

    ところが、ある日。

    私がいないとき。

    パパと娘たちが自転車で出かけた。

    駅前で、警察官に呼び止められた。

    職務質問。

    そのとき、長女が言った。

    「パパは悪い人じゃない!!!」

    泣いて、わめいて、そう言い続けた。

    ちょっと、かわいそうになった。

    ちょっと、せつなくなった。

    ああ。

    そうか。

    この子は、こうして育ったんだ。

    ママの背中を見て。

    気が強い子は、こうして育つ。

    いや。
    気が強いだけじゃないのかもしれない。

    大切な人を守ること。
    おかしいと思ったら、相手が誰であっても「おかしい」と言うこと。

    そんなことも、見て覚えていたのかもしれない。









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