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Romancing Train ——いつか、めぐり逢う。


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    ふたつの灯りが、夜をめぐっています。
    幾度もすれ違い、めぐり逢えるのは、つかのま。
    光はやがて消え、それぞれの闇へ。

    そして、また、めぐる。

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    はじまりのまえ。
    くらやみ。
    まっくらで、なにも、見えない。

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    ——切符を、そっと、かざしてみる。

    祈るような、思い。
    その瞬間、闇に、光が灯る。

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    ことこと、ことこと。

    夜空が、ひらく。
    そのまんなかを、ふたつの影が、 ゆっくりと、めぐりはじめる。

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    とりかこむのは、 瞬いては、ゆらめく灯り。
    モノクロームの銀河。

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    それは、まるで——
    からっぽの夜空をめぐる、 ふたつの、メリーゴーランド。

    やがて夜空は、 しずかに、降りていく。

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    ことこと、ことこと。

    ふたつの影が、世界をめぐっている。
    はなれたまま。近づくこともなく。

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    ことこと、ことこと。

    おなじ軌道を、なんども、めぐる。
    それなのに——
    景色だけが、すこしずつ、移ろっていく。

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    景色の奥から、もうひとつの灯りが、 近づいてくる。
    こちらへ、まっすぐに。

    もう少しで……触れる

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    ——けれど、列車は、曲がってしまう。
    背を向けて、奥へ、遠ざかっていく。

    そして、もう、いない。

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    ふたたび、あの灯りが、走ってくる。

    けれど今度は、こちらの軌道が、 曲がっていく。

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    近づいては、すれ違い。
    触れそうで、離れていく。

    遠ざかる、喪失。
    届かない、孤独。

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    どんなに願っても、 重ならない日々が、あるように。

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    それでも、巡ることをやめないのは……

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    いつか、重なり合うと、信じているから。

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    とくん、とくん。

    なぜか、今夜だけ、胸が、ざわめく。

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    その瞬間を見守るように——
    星たちが、震えるように、瞬きはじめる。

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    なんども、なんども、めぐりつづけて——

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    なんども、なんども、めぐりつづけて——

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    見つめあった、その瞬間——

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    世界は、色づいた。

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    まるで、夜のすみずみまで、 にじんでいくように。

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    だけど、美しい瞬間はもう、
    モノクロームに揺れている。

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    ひとつの影は、端へと
    もうひとつの影は、奥へと

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    それぞれの、くらやみへ。

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    ことこと、ことこと。

    二つの列車は、走り続ける。

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    同じ夜空。
    それぞれの軌道。

    あたらしい、夜。

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    いつか、また、 めぐり逢う時を願いながら。

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    ——列車に、乗っていた。
    遠く、遠くを、見つめながら。

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    もうひとつの灯りを、さがしていた。


    【あとがき】

    「美しさの果てにあるのは、切なさ。  
    切なさの果てにあるのも、美しさ。」

    この作品のコンセプトです。

    「Romancing Train」は、影絵とIoTと映像に、鉄道模型を組み合わせたインスタレーション作品として始まりました。
    展示で何を見せたいのか——それを決めるために、まずシナリオを企画し、それから電子工作とプログラミング、映像制作に取り組みます。
    体験者が暗闇の中で切符をかざすと、列車と共に映像世界が動き出す。プロジェクターが光源となって、模型の列車は影絵としてスクリーンに映し出される。そして、影絵と映像が組み合わさって、物語が進行していく・・・まさに、この絵本と同じシナリオです。
    この作品はver1から始まり、先日、ver3の展示を終えました。この絵本は、そのver3で語られた物語を、紙の上のかたちに写しなおしたものです。

    線路がオーバルなのは、それが人生の時間軸と見立てているからです。始まりも終わりもなく、同じところを巡り続ける。列車は、その上を生きる人間の姿。同じ軌道を走っていても、景色だけが移ろっていきます。

    そして、二つの列車が別々の軌道を歩む姿は、どんなに願っても、現実は簡単には重ならないことの表れです。
    それでも、何度も、何度も巡り続けて、ようやく重なったその時、光が見える。けれど、また重ならない日々が続く。そして、また何度も巡り続けて、ようやく、重なる。その繰り返しです。

    私が感じている切なさと美しさは、こういうことなのだと思います。
    重ならないから切なくて、それでも巡ることをやめないから、いつかの一度が、こんなにも美しい。切なさと美しさは、別々のものではなく、同じひとつの夜のなかで、めぐり続けている。

    —— 行き先は、あなたの夜のなか

    いつかどこかの暗闇で、この列車とめぐり逢っていただけたら。

    【展示動画】

    【作品詳細】

    【絵本としてめくりたい人へ(PDF)】

    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門


     
     
    ベンチャーCFO / 週末アーティスト。 技術 × ビジネス × 感性を一つの体で操って IoTアート / 音楽・MV / 大人のためのデジタル絵本の制作。 Hack Sonic 2026 準優勝(Romancing Train -Re:Sound-)

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