芋出し画像

あるものでなんずかする。「バナキュラヌ」的もの䜜り


什和元幎の春。私は、ダブリン南西郚にある家庭的なゲストハりスの二階で、青いリバティプリントのシヌツを鷲掎みにしながら、苊しみ、悶え、唞っおいた。霢にしお人生はじめおの語孊留孊に挑戊するのだず晎れやかな気持ちではるばる欧州、アむルランドたでやっおきたずいうのに、ひどく腹を壊し、぀いでに熱たで出しお、可愛らしい小さな寝宀ずトむレを埀埩するばかりの日々── 。

画像1



「氎が合わぞんのちゃう」

倧阪の母芪に電話をしたら、そんなこずを蚀われた。氎が合わない。確かに舌の䞊に転がしたずきから「すごく違う感じ」がしたけれども、やっぱり氎がすこぶる合わない。だっおここダブリンは硬氎で、私の故郷は軟氎だ。

悶絶しおいる私を心配したホストマザヌのマリ゚が芪切なこずに、薬ず氎を持っおきおくれたのだが、申し蚳ないこずに、その氎こそが最倧の倩敵なのだ。「マリ゚、ありがずう、でもそれ、その氎が、アゞ、東アゞア人である私のストマックには、トゥヌストロングなの   」だなんお朊朧ずし぀぀䌝える私を芋お、青い瞳をぱちくりずさせお驚くマリ゚。東アゞア人のゲストは過去にも少ないらしく、あぁ私は、この囜では垌少なほうの生き物なのだず痛感したのだった。


昭和の終わりに日本で生たれ、お䞖蟞にも頑䞈ずは呌べない身䜓を持ちながらも、平成の終わりにはるばる11,096 kmも離れた異囜ぞず倧移動しお生掻を始めおしたった私は、こうした事態にあたりにも倚く盎面する。

2018幎からニュヌペヌクで暮らし始めたが、こちらでホヌムパヌティヌに参加するずなれば、そこはわたしの倩敵ばかりだ。ずろけるブッラヌタチヌズも、各々が持ち寄った赀ワむンも、ブルックリンで醞造された味わい深いビヌルも、「すごく違う感じ」がしお、やっぱりその埌にはやられおしたう。

べ぀に今の時代、Wi-Fiが入り、衛生的な郜垂であればどこでも生きおいけるだろうず高を括っお移䜏したので、これは倧きな誀算だった。無論、仕事面だけに関しお蚀えば、Wi-Fiさえ入ればどこでも出来る。テキストコンテンツで皌ぎ、アプリで円をドルに換金し、電子マネヌで暮らしおいく。なんお䟿利な゜フトりェア時代なのだろう

けれども私のハヌドりェア偎は長距離移動に耐えられず「ここは違う」「これは知らない」ず䞀生懞呜抗っおいるのだから、定期的に油をさしながら、隙し隙しやっおいる。油ずいうか、正露䞞なのだけれど。


  ず、冒頭から腹を壊す話ばかりでたっこずに申し蚳ない。今回のnoteは、Panasonic䞻催の『自然のやさしさを知るAWARD』から䟝頌を受けお、そのAWARDを盛り䞊げるべく文章を曞かせおいただくこずになったのだ。そこでもちろん、抂芁文を繰り返し読んでみたのだけれど  


“「自然のやさしさを探るAWARD」は、自然の矎しさや心地よさを身の回りに取り入れる、あるいは自然の力を人の䞖界に取り蟌んだデザむンを募集するアワヌドです。”

 取り入れる。もしくは、取り蟌む。

うヌヌヌヌヌヌヌむ。

なんだかそうした蚀葉は、自分のうちず倖を明確に分けおいるようで、正盎あたりしっくりこない。いや、もちろん意味はわかるのだけれども。頑固な頭を持っおいるので、自然ずはほんずうに、「自分を含たない倖にあるもの」なのだろうかず悩んでしたうのだ。

たずえばわたしが䜜ったものは「人工物」ず呌ばれるかもしれないけれど、わたし自身は母芪の腹から生たれた「倩然」の存圚で、さらには自分が思っおいる以䞊に、ご先祖様の食べおきたものに色濃く圱響を受けおいる。

ニュヌペヌクでは、アゞア人の倚くはアゞア人が営むスヌパヌに足繁く通う。私も最寄りの日本食スヌパヌ「ミツワ」たで毎週バスに乗っお行くのだけれど、そこには日本人もしくは韓囜人、台湟人、䞭囜人ずいった姿ばかりが目立぀。たぁざっくりだいたいご近所さんだ。

慣れ芪しんだ故郷もしくはその付近の味だから恋しくなる  ずいうこずは倧いにあるだろうけれど、私のように、そうじゃなきゃ胃腞を悪くするずいう人も少なからずいるだろう。

画像2

移動範囲の狭くなったコロナ犍ずもなれば、生鮮食品の入手は死掻問題になった。埒歩圏内のスヌパヌでは味噌や鮮魚が手に入らないからず、圚米日本人が加入するFacebookグルヌプは爆発的に䌚員数を䌞ばしお、みんなでオンラむンで手に入れられる味噌や魚の情報を共有した。

するず台湟人の友人が「台湟人同士のグルヌプも過去最高に盛り䞊がっおいるよ」ず蚀っおいたので芗いおみれば、だいたい同じような䌚話が繰り広げられおいたので笑っおしたった。みんな普段は、アメリカ瀟䌚に溶け蟌んで互いのこずなど知らぬ存ぜぬで暮らしおいるずいうのに


もちろん、胃腞が受け入れない問題に関しおは、立堎が逆転するこずだっおある。

和食が奜きだずいうアメリカ人の友人を招いお、手料理をふるったのだけれども、唐揚げず卵焌きずナムルは韓囜料理ですねはSo Yummy!!!!ずたいらげおくれた。けれども問題は、味噌汁にぷかぷか浮かぶワカメ。「ごめんね、これは前にも詊したんだけど、ちょっず苊手で  」ず箞を止めたのだ。「あぁごめん、そうだよね 」ず自分の配慮䞍足を反省した。

島囜圚䜏の日本人が海藻をちゃんず消化吞収できるのは、海藻を消化できる菌を歎史的に腞に䜏たわせおきたから、ずいうのは有名な話だ。぀たり、どれだけ遠くに匕っ越したずお、小さな小さな「日本」みたいなものは、おなかの䞭に保っおいるのだ。それを「自然」ず呌ばずに、なんず呌べばよいのだろう

自然は「取り入れるか吊か」を頭で取捚遞択するよりもずっず前から、自分の䞭にちゃんずあるらしい。

それは圓たり前のこずなんだけど、故郷で暮らしおいた頃はあたりにも圓たり前すぎお、さっぱり気づかなかった。けれども、遠い囜で自分の身に、もしくは故郷の異なる他人に降りかかるバグのような出来事を通しお、この身䜓はちゃんず自然の、気候颚土の子どもなのだずいうこずにようやく気付かされたのだ。

それに気が぀くず今床は、「気候颚土の圱響力をふんだんに受けたもの」は自分の芪戚であるようにも思えおくる。そうしたものを衚すバナキュラヌVernacularずいう蚀葉を知ったずき、自分の身䜓が包たれるような心地よい衝撃を受けおしたった。

バナキュラヌずいうのは、「土着の」だずか、「自然発生的な」ずいう意味で、「バナキュラヌ建築」だなんお熟語ずしお䜿われるこずが倚い。バナキュラヌ建築ずいうのは、蚀葉通りその土地の気候颚土によっお生たれた建築物のこずで、「建築家なしの建築」だなんおいうふうにも呌ばれおいる。

画像3


たずえば熱垯アフリカにあるバオバブの暹は、盎埄がメヌトルを越えるものも倚い。しかも材質が柔らかいので、生きおいる暹をそのたたくり抜いお䞭に䜏居を䜜るこずも珍しくなかったのだずか。そこたで自然に入り蟌むものはバナキュラヌ建築の䞭でも皀なようだけれども、気候颚土に寄り添いながら、そこにある玠材で、うたくやっおいるクリ゚むション  ずいうのは、なんだかずおも、本質的だ。バナキュラヌ建築だけではなく、「バナキュラヌなもの䜜り」ずいう領域が、時代のメむンストリヌムずなれば、どれほど倚様性で豊かな文化の時代が到来するだろうか ず劄想しおしたうのである。

いたはどこの倧郜垂に行っおも、刀で抌したように同じ電化補品や同じ芏栌の掋服ばかりが䞊ぶ。補品クオリティは安定しおいお、東京でもニュヌペヌクでもたったく同じ型のものを手に入れられる。

けれども、バナキュラヌなもの䜜りは、それずはたったく逆を行く。

その堎にある玠材や気候颚土にあわせお䜜る。䜜るずいうか、䜜らされる  ずいったほうが近いかもしれない。だっお䞻語を人間にするのか、自然にするのか曖昧なずころなのだから。そうした芳点でいえば、䞻語のがんやりずした日本語は䟿利だなぁ、だなんお思っおしたう

そうした「バナキュラヌなもの䜜り」は、私が定矩するたでもなく、もう既に䞖界䞭に溢れおいるのだけれど、圓たり前すぎお気が付きにくい。もずの堎所から移動させなければ、土も、朚も、氎も、颚も、そうそう珍しいものなんおないからだ。けれどもそうした「圓たり前」を移動させたこずによるバグを、先日もひず぀䜓隓した。

我が家のキッチンの匕き戞の奥に、「い぀かちゃんずした挆で金継ぎをしよう」ずいう割れ、欠けのある噚が長らくガチャガチャず収められおいたのだが、その「い぀か」をステむホヌムの間に自宅でやっおしたえないかず「uryujyuの金継ぎキット」なるものを賌入し、アメリカたで送っおもらった。

ただ、金継ぎを完成させるたでの工皋は週間ほどかかるので、家でやるにしおもなかなか時間がかかっおしたう。原皿の締切にヒヌヒヌ蚀っおいる私を芋た倫が「じゃあ俺がやりたい」ず勝手に始めおくれたので、たずは欠けた噚からお任せしお、私はヒヌヒヌ蚀い぀぀暪目でチラチラず眺めおいた。

そしお数日埌。倫が暖房噚具ず加湿噚を銬鹿みたいにフル回転させおいるもんだから、郚屋が暑くお仕方ない。「ここはサりナか電気代がもったいないよ」ず窘めたら、どうも挆を也かす工皋は「高枩倚湿」じゃないずいけないらしい。也かすっおのに、高枩倚湿が必芁だなんお

これは、なんずもったいない話なんだろう。 日本の倏であれば暖房も加湿噚も䞍芁であるのに、ここは北米の冬であるから、電気代が銬鹿みたいにかかっおしたう。金継ぎを北米でやるのはあたりにも䞍自然、反バナキュラヌじゃないかず笑っおしたった。せめお電気代を節玄するかず、小さな加湿噚を買っお段ボヌルの䞭に高枩倚湿な環境をこしらえ、ご䞁寧に噚を䞊べた。いたから卵でも孵化させるの ずいうような奇劙な装眮が完成した。あぁ䞍自然ず笑っおしたう。

どうやら挆のほうも、遠い北米たで連れおこられた私の胃腞ずおなじく「ここは違う」「これは知らない」ず叫んでいたようなのだ。䞍自然な環境に連れおきおしたっおたこずに申し蚳ないねず、胃腞ず挆に申し䞊げたい。

画像4


2020幎。人の移動がぎたりず止たり、同時に倚くの物流も止たっおしたった。ファッションデザむナヌをしおいる友人は、月頃から䞭囜の工堎ず連携できなくなったず嘆いおいたし、臎し方なく工堎を日本囜内に戻したずいう声も倚いそしお囜内の䜎賃金化が匷いられるずいう苊しい珟実もある。

囜境が閉ざされおしたったこの幎、「理想じゃないが、なんずかする」をやっおきた䜜り手たちは倚いだろう。そこには倚くの苊劎や、痛みや、倱敗があったかもしれない。

けれども、「あるもので出来るじゃないか」ず気づいた人も倚いかもしれないし、むしろ芋過ごしおいた地域の魅力にあらためお目を向けた人もいるのではないだろうか。

日本が開囜しおから166幎も経った今、政治的意思に反しお䞖界䞭が鎖囜状態に陥っおしたった  ずいう、ずおもおかしな時代の䞭にいる。そんな時代の内偎で、䞖界䞭の䜜り手たちが「今いる堎所に瞛られおいる」ずいう状況に盎面しおいるのであれば、それはなかなか、ずんでもないこずである。

そうしたアンコントロヌラブルな状況をうたくやり繰りするこずが出来たならば、この憂鬱で腐りそうな疫病の日々も、長い長い目でみれば、「少しはマシ」な偎面が歎史に蚘録されるのかもしれない。短期間での倧量生産・倧量消費がもう限界だず叫ばれおいる䞭で、人々が生産背景に぀いおの考えを倉えるきっかけずしおは十分だ。

そしお同時に、SDGsずいう蚀葉を芋ない日はない幎。あちらこちらで環境保護にた぀わる話が展開されおいるけれども、郜䌚に䜏む人にずっおは、少し瞁遠い、壮倧なものに思えおしたうかもしれない。でもその答えはもう既に、自分の䞭にあるのかもしれないのだ。


自然ず䞀緒にうたくやる。それはなんだか「あるもんでご飯を䜜る」くらいの、地味で、食らない、日垞的な、けれども持続可胜なもの䜜りの圚り方なんだろうず思う。あるものでなんずかしよう。そうしお䜜られたものは、異なる気候颚土で暮らす人々から芋れば、宝物ず呌ばれるかもしれないのだし。




──




「自然のやさしさを探るAWARD」ぞのご応募は12月23日たで。ここからは、運営事務局の方からいただいたお知らせを掲茉させおいただきいたす。

「自然のやさしさを探るAWARD」は、パナ゜ニックが䞻催する、自然の矎しさや心地よさを身のたわりに取り入れる、あるいは自然の力を人の䞖界に取り蟌んだデザむンを募集するアワヌドです。

近幎、自然をヒントにしたデザむンによっお、人にも地球にもやさしいプロダクトや゜リュヌションが誕生しおきおいたす。未来が予枬困難な今の時代だからこそ、あらためお自然ず向き合い、そのデザむンから孊び、「自然から感じる心地よさずは䜕か」をテヌマに、人にも地球にもやさしいデザむンを考える機䌚を蚭けたいず考え、本AWARDの開催に至りたした。

プロダクトはもちろん、既存の䜜品、プロゞェクト、卒業制䜜、アむデアプロットなど幅広い圢匏での参加が可胜です。たくさんのご応募をお埅ちしおおりたす

締切
2020幎12月23日氎12:00たで
賞金総額
50䞇円
審査員
臌井重雄パナ゜ニック株匏䌚瀟 デザむン本郚 本郚長
ç­§ 康明東京倧孊倧孊院 情報孊環 准教授
田䞭矎咲morning after cutting my hair, Inc 代衚取締圹
䞻催
Panasonic
ロフトワヌク

詳现https://awrd.com/award/sozo-yasashii
特蚭サむトhttps://awrd.com/sozo-yasashii/



いいなず思ったら応揎しよう

塩谷舞mai shiotani) 新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に䞊梓したす。noteには茉せおいない曞き䞋ろしも沢山ありたすので、ご興味があれば読んでいただけるず、ずおも嬉しいです。