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アリンコと巨象

     まずは、こちらの記事を御覧いただきたい。本文は読んでいただかなくて構わない。タイトルと一文目(私には、友達がいない。)だけ抑えれば十分である。大して内容のある文書ではないのだ。

     続いて、こちらの記事をご覧いただきたい。是非とも本文までしっかり読んでいただきたい。若くして成功し、大企業エイベックスの代表にまでなった方の、孤独感と人間関係に関する深い洞察を学ぶことができるであろう。

     おそらく、読み始めたら本記事には戻ってこないとは思うが、気が向いたら、また戻って来てほしい。

     そう、世の中には、時としてこのようなことがあるのである。

     シンクロニシティなどと言いたいわけではない。

     アリがちょろちょろ変な動きをしている後ろで、巨象が地響きを立てて駆け抜ける瞬間があるということを言いたいのだ。

     今回、アリンコである私にとって幸いであったのは、わずか一日だけ私の投稿の方が早かったことである。

     これが、巨象である松浦氏の投稿の後であったなら、「タイトルをパクった」との誹りは避けられず、その上、内容も熟練料理人の桂剥きのごとく薄いではないかと断罪されざるを得なかったであろう。

     あの時もそうであったのである。

     私は、とある飲み会で、聴衆を相手に純愛についての大演説を行っていたのだ。内容は、次のとおりである。

     ・私には、高校時代から付き合っている妻がおり、浮気などただの一度もしたことはない。
     ・もちろん、夜のお店になど行くことはないし、一度、上司に無理やりキャバクラに連れて行かれたときなどは、いかに妻が素晴らしいかをキャバ嬢に語っていたくらいだ。
     ・一途な愛にこそ真の安らぎがあるのであり、誰彼構わない恋などは愚かなものである。

     聴衆の皆々は、「今どき珍しい男だ」、「娘と結婚するなら、こういう男がよい」などと、口々に私への惜しみない称賛を行ったのである。

     しかし、この聴衆の中に巨象が紛れ込んでいたのである。

     スラリと伸びた背丈に、少し長めの髪と女性すら想起させるような美しい顔立ちをもった若い彼は、こう言ったのだ。

     「中馬さん、それすごくわかります。自分も幼馴染の彼女一筋で、他の女の子なんて考えられません。」

     この瞬間、空気は完全に反転した。先ほどまで私を称賛していた聴衆たちは、一気に彼の方へと流れたのである。

     誰も言葉にはしなかったものの、中馬の一途な愛と彼の一途な愛では、そのハードルが違いすぎるのではないかということを瞬時に悟ったのだ。

     眼の前にお米だけが置かれた食卓で、

     「お米は最高!!お米さえあれば何もいらない!!」

     と、わーわー喚いている男と、

     様々な料理が所狭しと並べられた豪華絢爛な食卓で、

     「自分は、そのお米しか食べませんので。他は下げてください。」

     とクールに言い放つ男。

     両者とも一途なお米愛に変わりないのであるが、米愛好家として、より称賛に値するのは明らかに後者であろう。

     嫉妬というのは、自分とその対象者の扱いが不当に異なるように思われるときに生まれるものである。圧倒的な格差がある場合において、嫉妬は生じ得ないのだ。

     したがって、アリンコは巨象の疾駆を口をぽかんとして眺めるだけなのである。

     何の話かよくわからなくなったが、アリンコも頑張ろうぜという話である。

     
     
     
    40歳前後の国家公務員。小役人の日常や子どもの頃の出来事など、実話をもとにしたエッセイを書いています。

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