
SSRの臼井先生
私は、中学生の頃、パソコン部に所属していた。もともと、運動も芸術も得意でなかった私にとって、入部できそうな部活がそれくらいしかなかったからである。
この部は、そんなやる気のない中学生たちの巣窟となっていたのだ。
おそらくプログラミングをやったり、ホームページを制作するなどが、模範的なパソコン部の活動なのであろう。
しかし、当時は2000年代初頭である。そもそも、それを教えられるような先生もいなかったのである。顧問の臼井先生は数学教師であったが、年に数回ほどしか顔を出さない状況であったのだ。
そんななか、我々が熱中したのは、その臼井先生の写真を使っての合成写真づくりである。
臼井先生は、40半ば頃の男性教師で、少し禿げかけた天然パーマにメガネをかけたまん丸顔というジャムおじさんを想起させる風貌であり、合成写真の素材としてSSRの存在であったのだ。
そして、学校のパソコンには運動会の画像データが保存されており、その中から、緑のハチマキをして満面笑顔の臼井先生の写真が発見されていたのである。
私たち新入生は、先輩の指導のもと、この素材を使っての合成写真づくりに精を出したのである。
こうして、
・犬になった臼井先生
・戦国武将として槍を構える臼井先生
・ムキムキマッチョな臼井先生
・だんご3兄弟になった臼井先生(の顔)
といった数々の芸術作品が発表された。
同じ素材をもとにつくっているため、どの作品でも、臼井先生は満面の笑みをたたえており、額には緑色のハチマキをつけていたのである。
指導に当たった先輩も、私たちの作品をゲラゲラ笑いながら褒めてくれたのだ。
さて、こんな部活にも文化祭はやってくる。部活動として、何らかの発表をしないといけないのだ。
普段から、他に私たちがやっていることといえば、「特打」というタイピングの練習ソフトと、無料で勝手にダウンロードしたゲームくらいのものであり、発表できるようなものはなかった。
上級生は独学で勉強を始めたホームページなどを発表するようであったが、そこまでの知識のない私たちは、例の臼井先生作品を発表することにしたのだ。
文化祭に向けて、臼井先生を素材とした新たな芸術作品が量産されることになったのである。
そんなある日のこと。突然、前触れもなく、その当人が部室へとやってきたのだ。
彼は、自らが芸術作品の題材とされている事実を知ってしまったのである。
モナ・リザが自らの肖像を見たときどう思ったのかは知らないが、おそらく、そのときの感想とは真逆の感想を抱いたであろう臼井先生は、作品の即刻破棄と新たな創作の禁止を厳命したのである。
私たちは、慌てて作品の顔の部分を猫やら犬やらの顔につけ替えることとなったが、SSRの臼井先生に比べれば、遥かに見劣りする作品になってしまったのであった。
※ サムネ画像の男性は、ChatGPTがこの記事の内容から生成したもので、臼井先生本人の写真ではありません。割と似てはいますが。