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我が家のソーシャルイノベーション

     多種多様な社会的問題が山積する現代において、企業にもそうした問題に関与し、解決の一端を担う役割が求められつつある。企業がもつビジネス的手法は、社会的問題を根本から解決するインパクトがあり、そこにソーシャルビジネスの活躍の余地もあるのである。

     さて、会社員の経験は一日たりともないくせに、適当にビジネスを語ってみたが、実は、我が家にも社会的問題を抱えていた過去があるのである。

     そして、この社会的問題について、私は、とある企業の開発した先進的技術を導入したことにより、見事、抜本的な解決に至らしめたのだ。今回は、その過程についてご紹介したい。

     まず、そもそも我が家の抱えていた社会的問題についてであるが、私がトイレに行った後にドアを閉めないという問題である。正確に言えば、ドアを閉めようとはしているのであるが、いつも最後まで閉め切らず、10センチほどの隙間が残されるというものである。

     せっかくなので、この問題を、「ラスト10センチ問題」とでも呼称しよう。同様の問題を抱えている家庭も多いと思うので、是非、活用いただきたい。

    (例)
     「パパの引き起こすラスト10センチ問題については、甚だ遺憾である。」
     「いわゆるラスト10センチについて、パパには不退転の覚悟で取り組んでいただきたい。」

     さて、この「ラスト10センチ問題」が社会に与える影響であるが、まず、単純に不快だということがあげられる。トイレという隔離空間の一部を解放することとなるのである。おそらく、実害までは発生していないとはいえ、精神上の苦痛を与える可能性があることは、否定できない。

     次に、結局、この「ラスト10センチ」を解決するのが妻になるということである。社会においては、立派な人(優しい人)ほど公共の福祉のため、自らの損を引き受けてしまうのだ(電車で席を譲る人を見よ。)。

     この「ラスト10センチ問題」は、我が家において長らく問題視されていたが、ついに、妻からの「早急に改善せよ。」との行政指導が入ってしまったのである。

     途方もない社会的問題の解決を迫られた私は、大いに頭を抱えた。

     まず、実践された取り組みとして、張り紙を掲示するというものがあった。これは、我が国が誇る注意喚起の代表例とでもいう施策であり、「トイレの後は、ドアを閉める!」という紙をトイレの内側に貼るだけでよいのである。

     しかし、この方法は、数週間ほどは効果があったものの、次第に張り紙の存在に慣れてしまった私が、張り紙を意識しなくなるといった問題が顕在化し、抜本的解決には至らなかった。何より、お客さんが来たときに見栄えが悪いという問題もあった。

     完全に行き詰まったかに見えた「ラスト10センチ問題」であるが、ここで、私が「自動で閉まればいいのに」と夢想したことから、事態は思わぬ方向に動き出す。

     そうだ、トイレのドアを自動化すればよいのである。私はさっそくグーグルで検索した。すると、やはり我が国の科学技術というものはすごいもので、なんとトイレに張るだけで、ドアを自動で閉めてくれるツールがすでに存在していたのである。

     そして、私は当該企業に協力を求めた(通販で商品を購入した)のである。

     その仕組みはこうである。トイレの壁にシールでつけられた箱状の物から伸びたワイヤーの先が、ドアの上部につけられたフックにかけられている。このとき、ドアを開くとそのワイヤーが伸び、ドアを離すとワイヤーがバネの要領で収縮し、ドアが閉まるというものである。

     このツールが導入されて以来、「ラスト10センチ問題」は完全に過去のものとなったのである。イノベーションが、社会的問題を根本から解決した好例と言えよう。

     「ドアクローザー」などで検索いただければ出てくるので、同様の社会的問題を抱える家庭は導入を検討されたい。千円程度と安価なので、十分に元は取れる。

     なお、「ラスト10センチ問題」は解決したものの、我が家には、

     「私が泡がついた食器用スポンジを放置する問題」
     「私が靴を玄関で乱雑に脱ぎ捨てる問題」

     などの、社会的問題がなお多く存在している。   
     これらの問題を解決するソーシャルビジネスの登場が待たれるところである。

     
     
     
    40歳前後の国家公務員。小役人の日常や子どもの頃の出来事など、実話をもとにしたエッセイを書いています。

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