
安藤くんとの非行少年日記
私は、幼いころから大変真面目な少年だった。親の言いつけを守り、道路は横断歩道がある場所でしか渡ろうとしなかった。また、友達がゲームセンターへ行くときも、そこへ行くことを禁じられていた私は、一人、外でみんながゲームに飽きて出てくるのを待っているほどだったのだ。
そんな私だが、小学校四年生のころ、安藤くんという大変なワルと仲良くなったことをキッカケに、非行の道へ走ったことがある。今回は懺悔の意味も込めて、その非行の詳細を白状したい。
安藤くんは小学四年生にして彼女をもつ男であり、いつも自転車の後ろには、その彼女を乗せていた。また、我ら男子小学生は短パンかジャージを履くのが正装とされているところ、彼は、白いシャツの下にベルト付きのジーンズという装いで過ごしていたのである。これだけでも、彼がいかにワルい男か想像できるであろう。
そんな彼と、クラスの物知り学者的な立ち位置で過ごしていた私が、何をキッカケに仲良くなったのかは覚えていない。いつの頃からか毎日一緒に遊ぶようになり、当時流行していたアニメ・るろうに剣心を真似したチャンバラごっこなどに興じていたのだ。
そんなある日、私は安藤くんの家へ招き入れられた。安藤くんの家は共働きなのか、いつも昼間は誰もいなかったのである。そして、そこで私は非行の道へと踏み込むことになるのだ。
まず、安藤くんは昼間だというのに家中のカーテンというカーテンを閉め切った。そして、部屋の明かりも全て消したのである。もちろん、家の中は真っ暗だ。私は、これから何が始まるのか期待と不安を感じていた。
次に、安藤くんはおもむろにテレビをつけたのだ。真っ暗な部屋でテレビを見ると目が悪くなる。これは、当時の小学生社会において代表的な悪行の一つであった。
しかし、安藤くんはそれでは飽き足らなかった。
なんと、スーパーファミコンのスイッチまで入れたのである。
「実況!パワフルプロ野球!!」
の大音声が、真っ暗な部屋の中をこだまする。
この男、正気か⋯!?
恐れおののく私を尻目に、安藤くんは台所へと消えていった。そして、戻ってきた彼の手には、なんとコーヒーとポテトチップスが握られていたのである。
聡明なる読者の皆さまはご存知であろう。コーヒーを飲むと身長が伸びなくなるのである。だから、子どもは飲んではいけないのである。
それにもかかわらず、安藤くんの手には間違いなくコーヒーが握られている。しかも、紙パック一リットルである。
安藤くんは、二つのコップにコーヒーをトクトクと注ぎ込むと、今度はポテトチップスの袋を豪快に開いた。そして、
「中馬、飲めよ。」
と、私に勧めてくるのであった。
私は、コーヒーなど子どもの飲むものではないと思っていたが、断りきれず、少しだけ飲んでみることにした。しかし、これが良くなかったのである。
コーヒーとは、苦い大人の飲み物。それが、どうだ。この雪印コーヒーという飲み物は、激甘なのである。
この後のことは、とても詳細には書けない。パワプロに興じながら、コーヒーとポテトチップスをキメたという、あっさりした記載だけでご容赦いただきたい。
いや、もう一つだけ白状しよう。夕ご飯前だというのに、レンジでチンするポテトまで食べたのだ。
その後は、真っ当な青少年の道へと回帰した私だが、おそらく、今後も悪の道へ踏み外すことはないだろう。
なぜなら、あの日の非行以上の悪行を、私は未だ知らないからである。