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長いマグマの夜

     娘が幼稚園生の時の話である。彼女は、マインクラフト(マイクラ)というゲームに熱中していた。

     マイクラとは、ブロック状の3次元の世界で家を建てたり、宝を探したりする自由度の高いゲームである。

     一応、ラスボスのような存在もいるのであるが、このゲームの醍醐味は、思う存分、自分の好きな世界をつくりあげるところにある。

     しかしながら、夜になると強力な敵が押し寄せてきたり、家やアイテムを作るにも必要な資材がなかなか手に入らないという難しさもあるのだ。

     そこで用意されているのが、クリエイティブモードというものである。このモードでは、無限に好きな資材を使うことができ、敵も出てこないように設定できることから、ゲームの世界でレゴブロックのような体験ができるのである。

     幼い娘は、このクリエイティブモードで自由に町をつくるのが好きであり、私も協力しながら広大な町をつくっていったのである。

     さて、町がつくられれば、そこの住人も欲しくなるのが人情というものである。マイクラでは、この点もカバーされており、村人と呼ばれるモブキャラクターを出現させるためのアイテムが用意されているのである。

     こうして、少しずつ町に住人たちが増えていった。ウサギやネコといった可愛らしいキャラクターも追加され、娘の町に着々とユートピアが築かれつつあったのである。

     そう、あの日までは・・・。

     その日、幼稚園から帰ってきた娘は一人でマイクラに興じていたらしい。その時、どうやら、住人をもっともっと増やしたいと考えたようなのである。

     そして、娘による「村人無限増殖計画」が発動されたのである。

     Switchに保存されていたいくつかの録画動画から推測するに、町のいたるところで娘の村人増殖は行われたようである。

     まるで種でもまかれるようにして、彼女の通った道のあとには、次々に村人たちが出現していった。その結果、おびただしいほどの村人で溢れかえり、もはや、町ではなく都といってもよいほどの人口集中が発生したのである。

     これにより生じたのが、ゲームの大幅な処理遅延である。あまりに多くの村人が出現したため、ゲームの処理が追いつかなくなり、まともにゲームできなくなったのだ。

     そして、私が帰宅すると、娘から「マイクラが壊れた」との報告があったのである。

     これらの状況を察した私は、非情な決断を下すことになる。解決するには、村人を減らすしかないのである。

    (注意)
     基本的にポップなゲームではあるものの、ここから先、私による村人殲滅の模様を記載するため、苦手な方はご留意ください。

     私は、ゲーム中最強クラスの武器を用意し、「村人殲滅計画」を立案した。私だってこんなことはしたくないが、増えすぎた人口を何とかしなければ、この世界が滅びてしまうのである。

     そして、この作戦は、娘の教育上、大変よろしくないと判断し、娘の就寝後に発動することにしたのである。いくらゲームとはいえ、村人を倒すところを幼い娘に見せたくなかったのだ。

     その夜は惨劇であった。
     
     これまで増やしに増やされた村人に対して、私の凶刃が襲いかかったのである。ある者は、ダイヤの剣の錆となり、ある者は、弓矢で射抜かれて倒れたのであった。

     しかし、倒しても倒しても、村人は一向に減る気配がなかったのである。

     業を煮やした私は、さらなる悪魔の所業に手を染めることとなる。このゲームにおいて、鐘というアイテムがある。この鐘を鳴らすと、村人たちはベッドに帰るのである。

     これは、先述したとおり、夜になると強力な敵が押し寄せてくることに対応したものであり、本来は、村人に対し安全な家の中のベッドに逃げ込むよう指示するためのアイテムなのである。

     しかし、今回は全くの逆の理由で使用された。多数の村人に対し、用意されたベッドは一台のみ。その状況で鐘が鳴らされたため、多くの村人たちがただ一つのベッドに集合することになったのである。

     そして、そこへ、究極アイテム「溶岩マグマ入りバケツ」を携えた私が現れたのである。

     ・・・。

     こうして、多くの村人の犠牲とともに、ゲームの遅延は解消した。翌朝、私は「村人は全て倒した」との娘への伝言を妻に預け、出勤したのである。

     帰宅後、妻からの報告によると、娘は楽しくマイクラで遊ぶのを再開したようである。

     しかし、彼女のなかで、「村人=ゲームの邪魔をするもの」の構図が出来上がってしまったらしく、私が取り逃した村人を見つけるや否や、「パパ、全部倒してないじゃん!!」と言い、遠慮のない攻撃をしかけていたとのことであった。

     親の心、子知らずである。

     
     
     
    40歳前後の国家公務員。小役人の日常や子どもの頃の出来事など、実話をもとにしたエッセイを書いています。

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