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金子さんがいいです(推しの話①)

     私は、10代の頃からアイドルというものに全く興味がなかった。青春時代は、「モーニング娘。」から「AKB48」の時代にぶつかっていたのであるが、周りの男子高校生が熱中するなか、それらに一切興味を持つことなく過ごしてきたのである。

     だが、アラサーを前にする頃になって、唐突に推しができたのだ。それも二人も同時に。

     その一人は、金子理江である。彼女は、世界三大天使の一人と言われているのだ(残り二人は、私の妻と娘である。)。
     様々な変遷を経て、かつての盟友・黒宮れいとの劇的な和解を遂げ、現在は、ユニットREIRIEとして活動をしている。この歴史を語りはじめると長いのであるが、本題ではないので誰かに譲りたい。

     さて、推しができたとはいえ、私はアイドル文化に全く馴染みがなかった。そもそも、厳密に言えば、アイドルとしての金子理江より、アーティストとしての金子理江が好きなのである。

     したがって、彼女のCDはたくさん持っていても、写真集などのグッズは何も持っていない。遠くから歌っている姿を見られれば、それで満足という推し方なのだ。

     だが、やはり、世界三大天使と言われるだけあって、歌声やダンスだけではなく、ルックスも抜群によいのである。

     推し始めてから数年後のとあるライブのこと。CDを買った特典として、撮影券なるものが渡された。このとき、何を血迷ったのか、私はそのままライブ終了後の特典会の列に並ぶこととなったのである。

     最初こそ、ライブ終了後のテンションもあってワクワクしていたのだが、列が進むにつれて、私の緊張と不安は徐々に高まっていった。

     私は、天使とどのようなことを話せばいいのだろうか。
     そもそも、私のような者が一緒に写真を撮ってもらってよいのであろうか。

     周りの女性ファンが、スマホを見ながら前髪を整えているのを横目に、アラサーおじさんである私は心ここにあらずで、冷や汗がとまらず、まるで絞首刑を待つ囚人のような有様を晒していたのである。

     そして、処刑の時はやって来たのだ。

     当時、金子理江は、LADYBABYという四人組アイドルの一人として活動していた。このため、スタッフは囚人である私にこう告げたのである。

     「最後の望みを言え。(誰と写真を撮りますか?)」

     そして私は、震える声を振り絞って、こう呟いたのだ。

     「か……、金子さんがいいです。」

     一瞬、怪訝な表情を見せたスタッフの顔は、今でも忘れない。名字にさん付け読み??普通、「理江ちゃん」だろ、と……。

     私は、不覚を悟った。が、このまま処刑は執行されたのである。

     天使は、「今日は来てくれてありがとね!」と、笑顔で優しい言葉をかけてくれていたと思う。だが、頭が真っ白になっていた私は、何と返事していたのか全く覚えていない。

     出来上がった写真には、天使と、一気にアラフォーと化した私が写っていたのである。
    (続く)

    ▲サムネイル、右から2番目が金子理江


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    40歳前後の国家公務員。小役人の日常や子どもの頃の出来事など、実話をもとにしたエッセイを書いています。

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