
お守りと、まだ言えないお礼
カネコアヤノさんの大好きな曲に、こんなフレーズがある。
みんなには恥ずかしくて言えやしないけど
お守りみたいな言葉があって
妊娠中にかけられた言葉で、今も思い出してはまた胸にしまっているお守りみたいな言葉について書いてみたい。
妊娠も後半戦に突入したころだろうか、胎動が激しくて時にはうっ、と呻き声もあげてしまうほどだった。
仕事中はリモートワークなのをいいことに調子いい時に頑張って、調子の悪い時はすぐに横になってできることをする。そんな働き方をしていた。
そのことに罪悪感を感じてしまっていた。産休まではまだまだあるのに、好きな仕事に全力で向き合えていない気もして歯痒さもあった。
そんな矢先のことだ。取引先の担当の方から電話が来て、私はもうできることなら長い時間横になっていたい重たい身体をなんとか起こして電話に出た。
仕事の話が終わった後に少し雑談で、
「調子はどう?」と聞かれた。
私は「胎動がなかなか激しくて…。後期つわりも少しあってちょっとしんどいです」と笑い混じりで答えた。
その頃友人含めて聞かれたら同じように答えていた。きまって、「大変だねえ」とか「そっか…、頑張ってね!」とか同情や労われることが多かったし、さほど気にも留めない普通の会話だと思っていた。
だから返ってきた言葉に驚いた。
「そっか、でも幸せな時間だよね!だって、今しかないんだよ?出てきちゃったら味わえないんだから!」
その時本当に私の意識が変わったのだ。
どうにか頑張って、無事にこの子を産まなければいけないと、24時間強張っていた気持ちがほどけていくのを感じた。
そうか、この大変な時間って幸せなことなんだ、って素直に思えるようになったのだ。
そして今、1歳半を過ぎた子供を前にして実感している。お腹にいる時から元気だったけど、外に出てきてからも元気でたくましくてちょこまかしているタイプでそのまま出てきた感じの子。
きっとそのまま気づいたらどこかに行ってしまいそうな子を前にあの時の言葉を思い出す。
その言葉をくれた人は今の会社に入って間もない頃からずっとお世話になっていた。その頃はお子さんが小さく時短だったはずだ。
きっとあの人にとっては、特別なことを言ったつもりもないのかもしれない。子育てをしてきた中で、自然と出てきた一言だっただけかもしれない。
だからこそ、なんだか今更「あの時救われました」なんて伝えるのも気恥ずかしくて、まだ言えずにいる。
それに今、自分が働きながら子育てする側になって初めてわかることがある。あの頃のあの人は、きっと私が思っていたよりずっと大変だったんだろうな、と。
「あの言葉、今も大事に持っています。それと、あの頃は気づけなくてごめんなさい」って、いつか伝えられたらいいなと思っている。