
腹ばいで見た世界に涙が出そうになったよ
生後九か月を迎えた息子は、家じゅうを這って移動できるようになった。
いつも私の足元に居て、私のズボンの裾で遊んだり、キャッキャと声を出したりして、とにかく楽しそうだ。
真剣な眼差しで、ソファやテーブルの足を触っていることもある。あらら、舐めていることもある。コードや紐が好き。ゴミ袋のガサガサが好き。壁をペシペシ叩くのが好き。ひんやりして気持ち良いのか、顔を床にスリスリしていることもある。
あぶない、きたない、やめてぇ、そっち行かないでー、口から出そうになる色々をいったん飲み込んで、私は息子の隣で、息子と同じポーズになってみた。
腹ばいになって見上げた我が家は街だった。
色んな色や形のおうちがあって、さわり心地も、音も温度もみんなちがって、開きそうで開かないとびらや、届きそうで届かないスイッチがあって、遠くにユラユラ揺れる光があって、カレーの匂いがして、どこを見ても、どっちに行っても、それはそれはワクワクする街だった。
息子が見ている景色は、こんなにカラフルでデコボコで、ぬいぐるみは等身大の友達で、小さなゴミやホコリすら、大切な研究対象で。
息子の世界は息子だけのものだ。息子と同じ景色を見られたとしても、息子ほどキラキラの眼差しにはなれない。
でも、すぐ隣で見る息子の笑顔が、いつもより至近距離で本当に可愛くて愛おしくて、頭にでっかいホコリついてて。
私の世界にこの子がいてくれる、ただそのことに、感謝の気持ちが溢れて、胸がいっぱいになった。