「一緒に歩んでくれた君へ。」
二年生になったら、もう見送りはやめよう。
そう決めたのは私なのに、今から少しだけ胸がきゅっとします。
一年前の春、私は仕事をやめました。
初めての専業主婦になる春だった。
正直に言うと、すごく怖かった。
私は仕事が好きだったから。
役に立てる場所があって、名前を呼ばれて、感謝される毎日。
その場所から離れたら、私は何者になるのだろうと。
社会から少し離れること。
自信がゆっくり薄れていくこと。
それがいちばん不安でした。
それでも、私は君と歩く一年を選んだ。
学校まで片道二十分。
行き帰りを合わせると四十分の道のりです。
最初は門まで、やがて角まで。
君の成長に合わせて、歩く距離を少しずつ短くしていったね。
夏は本当に暑くて、帰るたびに何度も着替えたし、
しんどくて、「今日はやめたい」と思った日もあったよ。
それでも、寒い朝に何も言わず手をぎゅっと握られると、
その小さな温度に、迷いが静かにほどけていったのを覚えているよ。
お迎えに行って、私の顔を見るなり
ぽろぽろと涙をこぼした日もあったね。
学校で頑張っている君の気持ちを
私に伝えてくれて、それを
すぐそばで受け止められることができて、
嬉しかったよ。
実はね、クラスのこともたくさん、たくさん、悩んで、君が君らしく過ごせる場所を選んだんだよ。
だから君が学校を楽しいといつも言ってくれて、
私は救われたんだ。
私の誕生日に、君は手紙をくれたね。
「いつも来てくれてありがとう」
その一行で、私は思ったよ。
私はちゃんと、ここにいるんだと。
あの一年は、私が君を支えた時間というより、
君が私に愛情と自信をくれた時間だったんだね。
もう、並んで学校へ歩く朝も、
残り少ないけれど、
雨の日も、暑い日も、
泣いた日も、笑った日も、
君と並んで歩いた
あの時間は、全部私の宝ものだよ。
一緒に歩んでくれた君へ。
本当にありがとう。
これからもそばにいさせてね。
