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エリンギ以上、アワビ未満

    都会で子育てをしていると、親はときどき「子どもに自然体験をさせねば」という謎な圧に襲われる。

    いちごを摘み、大根をぬき、ぶどうを収穫し、わが家もそれなりに農業体験のスタンプカードを押してきたつもりでいた。

    いや、タケノコ掘りまでは行っていたのだ。

    ところが先日、うちの家族は全員、人生で一度もキノコを収穫したことがないことに気づいてしまった。

    考えてみれば、スーパーでは当たり前に売られているのに、生えている現場を見たことがない。

    高2長男と夫については、もう自己責任とわりきる。

    せめて小5の次男には体験させてやろうか、ということになった。

    そこで、私と次男は、ばあばの住む岐阜へ遊びに行ったついでに、車で1時間くらいの場所にある「しいたけブラザーズ」という椎茸農園を訪れてみた。

    名前だけ聞くと、スーパーマリオみたいだけど、ちゃんとした椎茸農園です。

    前々日くらいに電話をしてみたら、収穫予約はかなりカジュアルに完了した。

    当日、指定された午前11時に到着。

    ビニールハウスのような場所に案内された。

    中に入ると、切り出した原木から椎茸がたくさん生えていた。

    普通のスーパーではあまり見かけない、キングオブ椎茸みたいなものが、原木からごろごろ生えている。

    オーナーさんは、少年がカブトムシを育てるように、毎日手入れをされているのだろう。

    原木から生えている、いかにも健康そうな椎茸たちを見ると、愛が伝わってくる。

    そんな素敵なものを木からそっと引っこ抜く行為が、思った以上に楽しい。

    収穫した椎茸は、量り売りで持ち帰れるが、ここで微妙な問題が発生する。

    椎茸1個が何グラムなのか、さっぱり分からない。

    100g単位の世界なのに、こちらは椎茸の重さがイマイチ想像できない。

    これだから素人は危険。

    案の定、かなり取りすぎました。

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    素人、椎茸の重さをなめていた。


    私と次男は、たくさんの椎茸を袋にしのばせて、その午後、新幹線で東京へ戻った。

    もし荷物検査があったら、かなり怪しい親子だったと思う。

    かばんの中から出てくるのは、大量の椎茸。

    ところで皆さん、しいたけの軸の部分は食べていますか。

    私は今まで、傘の部分だけを食べるものだと信じてきました。

    実は、木とつながっていた硬い石づきさえ落とせば、軸は食べられるらしいのですが、私は雑に切り捨てていました。

    「もちろん軸も食べられます」と、しいたけブラザーズのオーナーさんに言われた時、私は心のなかで「すいません」とつぶやきました。

    確かに、今回の原木椎茸は、軸も太くて長くて立派なので捨てる方が失礼なレベル。

    家に帰って、軸をスティック状に切って炒めてみた。

    味付けは、オリーブオイル、塩コショウのみ。

    食べてみて驚愕。

    傘の部分が美味しいのは言うまでもない。

    私は、むしろ軸の部分に心打たれた。

    エリンギ以上、アワビ未満。

    ほどよく弾力があって、噛むほどに旨味が出る。

    地味なのに、妙に忘れられない。

    椎茸の軸、こんなにちゃんと美味しかったのか。

    過去の私を呼び出して、肩を掴んでゆすりたい。

    普段あまり食べ物について感想を述べない高2の長男まで、ひと口食べて、

    「……おいしい」

    とボソッと呟いたので、美味しさは間違いない。

    超高級キノコといえば松茸なのかもしれない。

    でもこちらは、椎茸の軸で満足してしまった。

    ちなみに、きのこは冷凍してから加熱すると、うま味が増すと言われています。

    大量に持ち帰ってしまった私たちには朗報。

    椎茸のためだけに岐阜県川辺町へ行く人は、あまり多くないかもしれない。

    でも、近くまで行くことがあれば、しいたけブラザーズはかなりおすすめです。

    子どもに自然体験をさせるつもりで行ったのに、親の方が小さな大発見をして帰ってきた。

    とりあえず次に椎茸を買う時は、できれば原木でいきたい。

    もちろん、軸は捨てない方向で。


     
     
    男子2人の母。 暮らしの中のどうでもいい発見と、たまに役立つ小さなことを記録してます。

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