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【第䞀章】 第䞀話〜第䞉話

    第䞀章 「疌き」

    第䞀話

    音楜倧孊のある、この街にはもう䜕床も来おいた。
    女孊生の倚い瀟排な駅近の商店街。
    すぐ隣には東京䞀有名な高玚䜏宅街がある。
    だが俺が仕事にするのはそんな生掻ずは真逆な人間たちだ。

    俺はずりあえず䞀本の契玄を䞊げるために、なじみのある家に行った。
    半幎前にも契玄を取ったガサ客だが、団のノルマのためには 最䜎1本は必芁だからだ。

    「こんにちは」

    鍵もかかっおいない玄関を勝手に開け、俺は倧きな声を出す。
    たるで近所の知人のような銎れ銎れしさだ。

    「お久しぶりです奥さん、前の契玄から半幎経ちたしたのでお䌺いしたしたよ」

    戞惑う奥さんをよそに俺は圓然のような顔で蚀う。

    「ああ、新聞屋さんね」

    もちろん俺の顔など芚えおはいない
    だが俺は、前の契玄の時のサヌビスを芚えおいる。
    俺は数枚の高額な商品刞を芋せた。

    商品刞は珟金ず䞀緒だ、䞀番割に合わない。
    だがそれだけに匷いし、話も早い。
    こういう檀家を䜕件も持っおいるセヌルスが結局䞀番成瞟がいい。
    商品知識、セヌルストヌク、など、必芁ない。

    契玄をずった埌、俺は雚雲で暗くなり始めた空を芋䞊げ、タバコを吹かした。
    こんな綺麗な街の䞀角で、マッチ箱のような粗末な家が䞊んでいるのを眺める。
    新聞代がタダになるほどの景品。
    自分でもこんな仕事が必芁なのかず思う、こんな営業経費をかける本瀟も販売店も狂っおいる。
    たあ、十幎近くこんな汚れ仕事を続けた俺が蚀っおお可笑しいが。

    俺も新入りの時は苊劎した、䜕十件ず飛び蟌み、土䞋座したずころで、嫌われ続け自分がすり枛るだけだった。
    今は食えおいる、いや同じ歳の普通のサラリヌマンよりいいかもしれない。

    だが人ず䌚えば合うほど、自分の客が増えば増えるほど、なぜか孀独感は増しおいった。
    うわべだけの付き合い、心の䞭の蔑んだ声、調子の良いリップサヌビス  。
    擊れた胞の内にも、䜕かを求め続ける「疌き」は、䜎い唞り声を䞊げ始めおいた。

    第二話

    雚が本栌的になり、俺は団に連絡を入れた。
    駅前をうろ぀くず、ビリダヌド堎の看板が目に぀いた。
    映画が流行っおから、ちょっずしたブヌムになっおいるこずは知っおいたが、その店の看板は幎季の入ったものだった。
    雚宿りがおら暇぀ぶしに芗いおみるこずにした。

    ドアベルの付いた少し軋む重い扉を開けるず、明るい店内に五台ほどのテヌブルがあり、小さなパヌカりンタヌが芋えた。
    映画のような勝負事をしおいるような雰囲気ではない、若い孊生やシニアの女性の楜しげな声が聞こえおくる。
    昌ず倜ずでは客局が違うのかもしれない。

    「いらっしゃいたせ。 お䞀人ですか」

    店員ずいうには貫犄のあるおばさんが声をかけおきた。

    「ああ、いや、ビリダヌドはやったこずないので  。 コヌヒヌずか飲めたすか」

    「じゃあ、こちらで芋おいっおくださいね」

    俺はカりンタヌに座り、コヌヒヌをすすりながら奥のテヌブルを眺めおいた。

    おばちゃんはコヌヒヌを出すず、そのテヌブルに戻っお行った、孊生颚の女の子たちがぎこちなく、䞍恰奜に玉を撞き、笑い合っおいる。
    初心者なのだろう、映画に憧れおきたのか、リアルな難しさに苊劎しおいるようだ。
    箞が転がっおも可笑しいずは蚀うが、女の子ずは蚀えよくもそんなに笑えるものだず思う。

     俺が心から笑ったのはい぀だったろう――。

    別のテヌブルでは、仕事を匕退したような幎配の二人が、真剣にゲヌムをしおいた。
    ミスをするず本気で悔しがる、感心するほどの闘争心 、将棋の方が䌌合いそうな感じだが。

    真剣にやったのはい぀だったろう――。

    俺はそんな景色を眺め続けおいた。

    「やっおみたせんか」

    背䞭越しにカりンタヌの奥からマスタヌの声がした。

    「あっ、いや、俺なんか  」

    「随分ず熱心に芋おおられたすよ」

    そう、俺は惹かれおいたのかもしれない。

    心から  、真剣に  。

    「今日は仕事があるので、これで垰りたす」

    俺は、逃げるように店を出た。


    第䞉話

    俺のアパヌトは倚摩川沿いの駅近くにある。
    腹が枛れば安い倖食で枈たせられるし、䜕より亀通の䟿がいい。
    倚摩南郚地域のテリトリヌの店にすぐ向かうこずができる。
    倖郚セヌルスなど、䜿う方も䜿われる方も、郜合が悪くなればずっずず 鞍替えするが、自分の檀家リピヌタヌだけあれば、い぀でも仕事はできる。

    俺はあの日以来、ビリダヌドのこずが気になっおいた。
    探しおみるず俺の䜏凊の近くにも、䜕件かあるようだ。
    ブヌムの圱響もあるのだろう 新しい看板や、バヌのような排萜た名前の店もある。

    駅から少し離れた所に、「撞球みどり」ずいう店があるようだった。
    駅からかなり歩いた開けた堎所、隣は畑だろうか
    倧きな看板が䞊がっおいるから ビリダヌド堎ずいうこずはわかるが、その建物はたるで 蟲家の玍屋か、倉庫。 ガレヌゞずいうほど栌奜良くもない。
    俺が生たれる前からここにあったような䜇たいだ。

    広い平屋の店内には結構な数のビリダヌド台があった。
    奥の方には芋慣れないサむズの台もある。
    昔は穎の開いおいないビリダヌドの方が盛んだったず聞いたこずがあるが、この店にはその時代の名残があるようだ。
    壁には 埀幎の名プレヌダヌ達であろう写真が䜕枚も食られおいた。
    玚段者の名前の札も沢山ある。
    その䞀番䞊には日本人らしき写真が䞀枚だけあったが、俺には誰䞀人わからなかった。

    「こんにちは  」

    俺は䜎いカりンタヌの長怅子に寝そべっおいる、オヌナヌらしい人物に挚拶した。
    オヌナヌらしいおっちゃんは俺を䞀瞥するず怪蚝そうな顔で起き䞊がった。店内を芋枡す限り、ビリダヌドブヌムずは瞁のない店のようである。

    「ポケットかい」

    「あっ、はい。」

    「じゃあ、その台で  」

    そっけない感じでボヌルを枡された。

    初めお觊るビリダヌドのボヌルは䞁寧に磚かれ茝いおいた。
    指瀺されたテヌブルにはホコリ䞀぀ない。
    気付けば、建物は叀いが店内は枅掃が行き届いおいるようだった。
    建物もテヌブルも叀い時代のものだずわかるが、䞁寧に手入れされお䜿われおきたこずが、 玠人目にもすぐにわかる。

    たぶん  。
    俺は壁に䞊べられおいる貞しキュヌを手に取った。
    なぜか、䞊べられおいる貞しキュヌはデザむンがバラバラだ。キュヌのこずなどよくわからないが、たぶんメヌカヌが違うんだろう。
    それは遞んでいるだけで楜しかった。

    この店は映画で芋たような汚くお雑な店ではない。
    黎明期のビリダヌドの先人たちの情熱がただ残っおいる気がした。

    俺はテヌブルに玉をばらたいた。
    カラフルなボヌルが転がり広がっおいく。
    少しだけ、俺の新しい䞖界が広がっおいくように芋えた。

    癜い手玉に向かっお映画の芋様芋真䌌の構えで、簡単そうな玉を狙っおみる。
    意倖ず入るな  。
    女孊生たちのぎこちない玉撞きを芋たせいか、自分が䞊手く感じられるのだろう。
    あの日、芋おいた幎配の人たちの真剣な戊いのおかげかもしれない。

    カシャ

    キュヌ先が手球に匟かれた。
    手球は明埌日の方ぞ飛んで行った。

    「アンタ、初めおの割には筋がいいね」

    背埌にオヌナヌが立っおいた。

    「あっ、分かりたすか、今日、初めおなんです  」

    少しだけ栌奜を぀けおいた自分が恥ずかしい。

    「うん、チョヌク付けなきゃ、どんな名人だっお撞けないよ」

    オヌナヌはサむドテヌブルにきちんず眮かれたたたたのビリダヌドチョヌクを取り、俺に塗り方を教える。

    「少し䞀緒にやろうか」

    「あっ、お願いしたす」

    映画で芋たうろ芚えのナむンボヌルを始める。

    「今はみんなこのゲヌムばっかりさ、半分しか玉を䜿わねえ」

    蚀われお気づいたが、なんで十五個もあるのか分からなかった。
    オヌナヌは撞きながら解説し、俺が撞いた埌にアドバむスをする。
    オヌナヌの解説が面癜くお、俺はたくさん質問をした。

    「いくら䞀所懞呜に狙ったっお、狙ったずこに玉が行かなきゃ意味がねえ。 入れる粟確さず出す粟確さのバランスが倧事なんだ  」

    蚀っおる意味の半分もわからなかった。
    だけど、奥深く難しいゲヌムずいうこずはよくわかった。

    「ふヌん、アンタ、ちょっず珍しい才胜もっおるね、たた来なよ」

    その意味は分からなかった、だけど――。
    愛想のないその耒め蚀葉が䜕より嬉しかった。
    壁に食られた名人たちが、少し埮笑んだような気がした。

    〈第四話に続く〉

     
     

    waki

     
     
    50代。 新聞販売店勀務を経お、䜓調䞍良から圚宅ワヌクを暡玢䞭。 AIにノセられ、webラむタヌや創䜜に挑戊しおいたす。 ChatGPTず盞談しながら、人生を少し立お盎し䞭。 このnoteでは、50代の日垞、AIずの付き合い方、働き方の䞍安や挑戊を、静かに曞いおいたす。

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